子ども医療保険は必要か|公的医療費助成との重複を整理する

子ども医療保険は必要か|公的医療費助成との重複を整理する 保険・教育費

先日、自宅に一件の保険提案が届きました。担当していたのは、以前から付き合いのある保険外交員の方です。「お子さんが4人もいらっしゃると、入院や手術のときの出費が心配になりませんか」という切り出しから始まり、子ども医療保険への加入を強く勧められました。提示されたプランは、入院日額5,000円、手術給付金10万円、先進医療特約付きで、4人分合計すると月額保険料は1万2,000円ほど。年間にすると14万円を超える金額です。

私は個人事業主として20年、投資家として20年、そして兼業で大家業を20年続けてきました。数字を見て損得を判断する習慣が体に染みついているため、その場で即答はせず、いったん持ち帰って自分で試算してみることにしました。加えて、私は一人で4人の子どもを育てています。ひとり親家庭にとって、毎月の固定費が増えるかどうかは家計に直結する重大な問題です。だからこそ、感情や不安だけで加入を決めるのではなく、まず「公的医療費助成で何がカバーされていて、民間保険でしか埋まらない穴はどこなのか」を整理する必要があると考えました。

この記事では、そのときに自分で行った試算と検証の過程を、実際の数字とともに公開します。子ども医療保険への加入を検討している方の判断材料になれば幸いです。

子ども医療費助成制度の基本構造とカバー範囲

まず前提として押さえておくべきなのが、日本には自治体ごとに運営されている子ども医療費助成制度があるという点です。多くの自治体では、未就学児から中学生、自治体によっては高校生まで、保険診療の自己負担分の全部または一部を助成してくれます。私が住んでいる自治体の場合、中学卒業までは通院・入院ともに自己負担がほぼゼロになる制度が整っています。

実際に、我が家の子どもたちが過去5年間で入院した際の医療費を振り返ると、次のような結果になりました。

受診内容 本来の医療費(3割負担時) 助成制度適用後の自己負担
子どもA 気管支炎による入院(4日間) 約48,000円 0円
子どもB 骨折による手術・入院(6日間) 約112,000円 0円
子どもC 発熱による救急外来 約9,500円 0円
子どもD 虫垂炎による手術・入院(5日間) 約95,000円 0円

合計すると本来であれば26万円以上かかっていた保険診療分の医療費が、すべて助成によってゼロ円になっています。これは非常に大きな安心材料であり、「子どもの医療費が心配だから民間保険に入る」という発想そのものを、一度立ち止まって見直す必要があることを示しています。公的助成がここまで手厚い自治体に住んでいる場合、保険診療の範囲内であれば、そもそも民間保険で埋めるべき穴自体が非常に小さいのです。

助成制度でカバーされないもの・自治体間の格差に注意する

ただし、助成制度には限界があります。ここを正確に理解していないと、民間保険の必要性を過大にも過小にも見誤ってしまいます。助成制度がカバーするのはあくまで「保険診療」の自己負担分です。つまり、以下のような費用は助成の対象外になります。

費目 助成制度の対象か 目安金額
差額ベッド代(個室・少人数室の希望入院) 対象外 1日あたり5,000円〜20,000円
先進医療の技術料 対象外 数十万円〜300万円超
入院時の食事療養費の一部 自治体により異なる 1食あたり数百円
付き添い家族の交通費・宿泊費 対象外 実費
保険診療外の検査・薬剤 対象外 ケースにより大きく変動

さらに注意したいのが、助成制度の内容は自治体によって大きく異なるという点です。対象年齢が中学卒業までの自治体もあれば、高校卒業まで拡充している自治体もあります。所得制限を設けている自治体もあり、世帯によっては満額の助成を受けられないケースもあります。また、一部負担金として通院1回あたり数百円の自己負担を設定している自治体も存在します。転居の予定がある家庭は、転居先の助成内容を事前に確認しておくことを強くおすすめします。私自身、大家業で複数の地域の物件を見てきた経験から、自治体ごとの制度差は想像以上に大きいと実感しています。

民間の子ども医療保険が実際にカバーする範囲

では、民間の子ども医療保険は具体的に何を保障してくれるのでしょうか。保険外交員から提示されたプランの保障内容を、助成制度でカバーされない項目と照らし合わせながら整理してみます。

保障項目 提示された保障内容 助成制度との重複
入院日額 5,000円/日 保険診療分は助成済みのため実質的に現金給付
手術給付金 入院日額の10倍〜20倍 保険診療分は助成済みのため実質的に現金給付
先進医療特約 技術料実費相当(通算2,000万円まで) 重複なし・助成対象外を直接カバー
差額ベッド代特約 1日あたり実費相当(上限あり) 重複なし・助成対象外を直接カバー
通院日額 3,000円/日 保険診療分は助成済みのため実質的に現金給付

この表を見て気づいたのは、保障項目の大半が「入院日額」「手術給付金」「通院日額」といった現金給付型であり、これらは医療費の実費を補填するというよりも、入院に伴う雑費や付き添いのための収入減少を補うための給付だという点です。つまり、公的助成で自己負担がゼロになっている以上、これらの給付は純粋な「現金プレゼント」に近い性質を持ちます。一方で、先進医療特約と差額ベッド代特約は、助成制度が対象外としている領域を直接カバーするため、重複のない領域だといえます。ただし、重複がないからといってそのまま加入する理由にはなりません。この後の試算で見ていくとおり、発生確率が極めて低い領域である以上、保険料を払い続けるよりも自分たちで備える方法を優先すべきだというのが私の考えです。

保険料と受取見込み額の期待値計算

次に、実際に提示されたプランについて、保険料と受取見込み額を期待値として試算してみました。保険は基本的に「支払う保険料の総額 > 受け取れる給付金の期待値」という構造になっていなければ、保険会社の事業として成立しません。この差額こそが、保険会社の運営コストと利益になります。

1人あたりの保険料が月額3,000円、加入期間を0歳から18歳までの18年間とすると、支払う保険料の総額は次のようになります。

項目 計算式 金額
月額保険料 3,000円 3,000円
年間保険料 3,000円×12ヶ月 36,000円
18年間の支払総額 36,000円×18年 648,000円

厚生労働省が公表している患者調査などのデータを参考にすると、15歳未満の子どもが入院する割合は年間でおおむね1%前後、平均入院日数は5〜7日程度とされています。仮に18年間のうち1回だけ7日間入院し、入院日額5,000円と手術給付金5万円を受け取れたと仮定すると、受取額は次のようになります。

給付内容 計算式 金額
入院給付金 5,000円×7日 35,000円
手術給付金 一時金 50,000円
合計受取額(想定シナリオ) 85,000円

支払総額64万8,000円に対して、受取見込み額はわずか8万5,000円程度です。差額の56万3,000円は、事故が起きなかった場合の「安心料」として保険会社に支払うコストになります。もちろん、より重い病気や事故で長期入院・複数回の手術が発生すれば受取額は増えますが、それでも支払総額を上回るケースは統計的にごく少数派にとどまります。この期待値のギャップを理解した上で、なお加入する価値があるかどうかを判断することが重要です。

学資保険の医療特約との重複問題

ここでもう一つ見落としてはいけないのが、学資保険に医療特約を付帯している家庭が少なくないという点です。我が家でも、上の子が生まれた際に学資保険に加入しており、そこに医療特約が自動的にセットされていました。この医療特約は、入院日額3,000円、手術給付金3万円という内容で、先ほど紹介した単体の子ども医療保険とほぼ同じ性質の保障です。

つまり、学資保険にすでに医療特約が付いている状態で、さらに単体の子ども医療保険に加入すると、入院・手術に対する現金給付が二重に積み上がることになります。改めて自宅にある保険証券をすべて確認したところ、4人の子どものうち3人分の学資保険に医療特約が付帯していることが判明しました。これに気づかずに新たな子ども医療保険へ加入していたら、実質的に同じリスクに対して二重の保険料を払い続けるところでした。

子ども 学資保険の医療特約 新規提案の子ども医療保険 重複状況
子どもA 入院日額3,000円 入院日額5,000円 重複あり
子どもB 付帯なし 入院日額5,000円 重複なし
子どもC 入院日額3,000円 入院日額5,000円 重複あり
子どもD 入院日額3,000円 入院日額5,000円 重複あり

学資保険の医療特約は、多くの場合、貯蓄性の高い主契約に自動的にセットされているため、加入時に十分な説明を受けずに付帯されているケースも珍しくありません。子ども医療保険への加入を検討する前に、まず自宅の保険証券をすべて洗い出し、既存の契約でどこまで保障されているかを確認する作業が欠かせません。この確認を怠ると、保険料だけが積み重なり、家計を圧迫する結果になります。

4人分加入した場合の総保険料試算

我が家のように子どもが4人いる場合、1人あたりの保険料が小さく見えても、合計すると家計への影響は決して小さくありません。仮に1人あたり月額3,000円のプランに4人全員が加入した場合の試算は次のとおりです。

期間 計算式 金額
月額合計(4人分) 3,000円×4人 12,000円
年間合計(4人分) 12,000円×12ヶ月 144,000円
18年間の総支払額(4人分) 144,000円×18年 2,592,000円

18年間で見ると、4人分の保険料総額はおよそ259万円にのぼります。これは決して小さな金額ではなく、投資に回した場合の機会損失も考慮する必要があります。仮にこの保険料を年利4%で運用できる資産形成に回していたとすると、18年間の複利効果によって最終的な資産額は単純な積立額よりも大きく膨らみます。私自身、投資家として20年間さまざまな金融商品と向き合ってきましたが、確率的に発生しにくいリスクに対して現金給付型の保険で備えるよりも、その分を貯蓄や新NISAでの資産形成に回し、いざというときに自己資金で対応できる体制を整えておくほうが、期待値の面でも合理的だと考えています。

もちろん、これは「保険に入っている人は間違っている」という話ではありません。家計に十分な余裕があり、保険料の支払いが生活を圧迫しないのであれば、精神的な安心を優先する考え方もあり得ます。ただ私自身は、期待値上は不利な商品であるという事実を理解した上で、我が家では加入しないという判断に至りました。

加入を判断するためのフローチャート

ここまでの整理を踏まえ、私は次のような判断の流れを自分なりに作りました。子ども医療保険への加入を検討している方は、以下の手順で確認してみることをおすすめします。

ステップ 確認内容 判断
1 お住まいの自治体の子ども医療費助成の対象年齢・所得制限を確認する 助成が手厚ければ保険診療分の必要性は低い
2 既存の学資保険・生命保険に医療特約が付帯していないか確認する 付帯している場合は重複加入を避ける
3 先進医療・差額ベッド代など助成対象外の費用がどの程度かを把握する 金額の大きさと発生確率を切り分けて考える
4 保険料が家計の何%を占めるかを試算する 手取り収入の1〜2%を超えるなら再検討
5 同額を貯蓄・投資に回した場合の期待値と比較する 期待値で劣後することを理解した上で最終判断

このフローチャートに沿って我が家のケースを検証した結果、私が出した結論は「単体の子ども医療保険には新規加入しない。共済のこども型を含め、入院日額・手術給付金のような現金給付型の保障は追加しない」というものでした。理由は明確で、助成制度と学資保険の医療特約によって入院日額・手術給付金の部分はすでに十分カバーされている一方、保険はそもそも「低確率・大損失」に備えて有事の際に生活が破綻するのを防ぐための仕組みであり、資産を増やすための金融商品ではないからです。発生確率が低いリスクに対して保険料を払い続けるより、その分を新NISAでの資産形成や貯蓄に回し、いざというときは自己資金で対応できる体制を整えておくほうが、長期的には合理的だと判断しました。

先進医療のリスクには保険でなく貯蓄で備える

先進医療特約は、単体で見ると月額保険料が数百円程度からと安く設定されている商品も多く、通算2,000万円といった大きな保障を謳う商品も存在します。発生確率は極めて低いものの、実際に技術料が数百万円単位になるケースもあるため、一見すると「安い保険料で大きな保障を買える、合理的な特約」に見えます。しかし、保険はどこまでいっても「支払う保険料の総額 > 受け取れる給付金の期待値」という構造の上に成り立っており、その差額は保険会社の運営コストと利益になります。発生確率が低い商品ほど、この差は開きやすいという点から目を逸らすべきではありません。我が家では、先進医療のような「めったに起きないが金額が大きい」リスクについても、特約や共済という形で保険料(掛金)を払い続けるのではなく、教育資金とは別枠で先進医療への備えとして新NISAでの積立を続け、必要になった際はそこから取り崩して対応するという方針に落ち着きました。低確率のリスクに毎月保険料を払い続けるのではなく、使わなければそのまま自分たちの資産として残る形でお金を積み上げていくほうが、納得感があると感じています。

保険外交員との付き合い方で意識していること

今回の一件を通じてもう一つ考えさせられたのは、保険提案を受けたときの向き合い方そのものです。保険外交員の方々は仕事として保険を勧めてくるわけですから、悪意があるわけではありません。しかし、提案されるプランはどうしても保険会社にとって利益率の高い商品が中心になりがちです。だからこそ、こちらが「公的制度で何がカバーされているか」「既存契約で何が重複しているか」という土台を先に持っておかないと、対等な検討ができないと感じています。

私が実践しているのは、その場で即答しないという単純なルールです。良さそうに聞こえる提案ほど、一度持ち帰って自分の数字で検証する時間を作るようにしています。今回のケースでも、その場で加入を決めていたら、学資保険の医療特約との重複に気づかないまま、二重の保険料を払い続けていたはずです。子ども4人分となると、こうした小さな見落としの積み重ねが、家計に与える影響は決して小さくありません。

また、保険証券は一度契約したら引き出しにしまって終わり、という状態になりがちです。私自身、今回の一件をきっかけに、年に一度は家族全員分の保険証券を並べて内容を棚卸しする時間を作るようにしました。子どもの成長とともに、公的助成の対象年齢が変わったり、既存の保険の保障内容が実情に合わなくなったりすることもあります。契約時点では合理的だった保障が、数年後には過不足のあるものに変わっているということは十分にあり得ます。

4人分の保険証券を棚卸しした際に見つかった他の重複

今回、子ども医療保険の検討をきっかけに保険証券を総点検したところ、医療特約以外にも見落としがあったことに気づきました。上の子の学資保険には育英年金特約(契約者に万一のことがあった場合、満期まで年金が支払われる特約)が付帯していましたが、これは別途加入していた収入保障保険(掛け捨ての生命保険の一種)と保障内容が一部重複していました。単体で見れば気づきにくい重複も、家族全員分の契約を一覧にして並べてみると、思いのほか浮かび上がってくるものです。

この棚卸し作業を通じて、我が家では次のような一覧表を作成し、毎年更新するようにしています。契約者・被保険者・保障内容・年間保険料を一行にまとめておくだけで、新しい保険の提案を受けた際にも、重複の有無をその場で確認できるようになりました。

確認項目 チェック内容
契約者・被保険者 誰が契約し、誰が保障の対象になっているか
主契約と特約の内容 主契約に何が付帯しているか、特約の保障範囲は何か
年間保険料 4人分・全契約分を合計した年間の支払総額
他契約との重複有無 入院日額・手術給付金・死亡保障などが他の契約と重なっていないか

この一覧表を作ってから、新しい保険の提案を受けても慌てずに済むようになりました。既存の保障内容が頭に入っていれば、営業トークに流されず「それはすでにこの契約でカバーされていますよね」と、その場で確認できるようになったのは大きな変化だったと感じています。

高額療養費制度との関係も確認しておく

子ども医療費助成制度の陰に隠れて見落とされがちなのが、高額療養費制度との関係です。高額療養費制度とは、同一月にかかった医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的制度で、所得区分に応じて上限額が決まります。子ども医療費助成が手厚い自治体に住んでいる場合、そもそも窓口負担がゼロになるため高額療養費制度を意識する場面はほとんどありません。しかし、これは「助成があるから関係ない」で終わらせてよい話ではありません。

注意すべきは次の2つのケースです。1つ目は、所得制限によって助成を満額受けられない世帯の場合。2つ目は、助成の対象年齢を超えた高校生以降の医療費です。このいずれかに該当する場合、高額療養費制度が実質的なセーフティネットとして機能します。一般的な所得区分での自己負担限度額の目安は以下のとおりです。

所得区分の目安 ひと月の自己負担限度額(概算) 多数回該当時(4回目以降)
住民税非課税世帯 35,400円 24,600円
年収約370万円〜約770万円 80,100円+医療費超過分の1% 44,400円
年収約770万円〜約1,160万円 167,400円+医療費超過分の1% 93,000円
年収約1,160万円以上 252,600円+医療費超過分の1% 140,100円

さらに、直近12ヶ月以内に3回以上高額療養費に該当した場合、4回目以降は「多数回該当」として上限がさらに引き下げられる仕組みもあります。この制度を理解しておくと、仮に助成対象外の年齢になったとしても、医療費が青天井で膨らむわけではないことが分かります。子ども医療保険を検討する際は、助成制度・高額療養費制度・自分たちの貯蓄の3層構造で考え、最後の層は民間保険ではなく自己資金で埋めるという位置づけが実務的だと感じています。

県民共済・都民共済の「こども型」との比較

保険外交員から提示された民間保険プランを検討する過程で、比較対象として県民共済・都民共済などの共済型商品も調べてみました。共済は保険会社の商品と異なり、掛け捨て型でありながら決算後に割戻金が戻ってくる仕組みを持つ点が特徴です。実際に資料を取り寄せて比較した結果は次のとおりです。

比較項目 民間保険(提示プラン) 共済のこども型(一般的な水準)
月額掛金 3,000円 1,000円〜2,000円程度
入院日額 5,000円 4,500円前後(共済により差あり)
手術給付金 入院日額の10〜20倍 入院日額の2〜20倍(手術の種類で変動)
先進医療特約 あり(通算2,000万円) 特約として別途付帯可能な場合が多い
割戻金 基本的になし 決算余剰に応じて掛金の一部が戻る場合あり
保障の一生涯継続 更新型が多い 年齢上限で自動終了するタイプが多い

単純な掛金だけで見ると共済のほうが割安に見えますが、割戻金は決算余剰次第で変動するため、毎年同じ金額が戻ってくる保証はありません。また、共済は多くの場合、一定年齢に達すると保障が終了する設計になっているため、加入時点でその後の保障の連続性まで確認しておく必要があります。我が家では最終的に、共済も含めて「入院日額・手術給付金のような現金給付型の保障には新規加入しない」という結論に落ち着きました。掛金の絶対水準が下がったとしても、発生確率の低いリスクに対して保険料(掛金)を払い続けるという構造そのものは変わらないためです。先進医療への備えについても、共済に加入するのではなく、貯蓄・新NISAでの資産形成という形で自分たちの手元に資産として残す方法を選びました。

先進医療の技術料は実際どの程度かかるのか

先進医療への備え方を判断するうえで欠かせないのが、実際の技術料の水準を具体的に知ることです。厚生労働省が公表している先進医療にかかる費用の実績報告を確認すると、技術によって金額に大きな幅があることが分かります。代表的な先進医療の技術料の目安は次のとおりです。

先進医療の種類 技術料の目安(1件あたり平均)
陽子線治療 約260万円〜280万円
重粒子線治療 約300万円〜320万円
歯科の金属床による総義歯補綴(参考・成人向け) 数万円〜十数万円
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(参考・成人向け) 数十万円

子どもの疾患で陽子線治療・重粒子線治療の対象になるケースは頻度としては高くありませんが、小児がんの一部の症例では選択肢に挙がることがあります。実際に発生した場合、技術料だけで年収の数倍規模の負担になり得る点を考えると、発生確率は低くても一度発生したときの家計へのインパクトが極めて大きい項目だといえます。ただし、金額が大きいからといって、それがそのまま「保険で備えるべき」という結論には直結しません。入院日額や手術給付金のような「よく起きるが金額は小さい」リスクも、先進医療のような「めったに起きないが金額が非常に大きい」リスクも、我が家では貯蓄・新NISAでの資産形成でまとめて備える対象と位置づけています。教育資金の積立と並行して先進医療分の備えも積み上げておき、まとまった支出が発生した際にはそこから取り崩して対応するという整理です。保険料という形で確実に目減りしていくお金より、使わなければ自分たちの資産として残るお金のほうが、期待値でも納得感でも上回ると考えています。

子ども医療保険でよくある3つの失敗パターン

今回の一件をきっかけに知人や周囲の家庭の話も聞いてみたところ、子ども医療保険の加入・見直しにおいて共通して起きがちな失敗パターンが見えてきました。自分自身の反省も含め、以下に整理します。

失敗パターン1:学資保険の付帯特約に気づかず二重加入する

学資保険は貯蓄性の高さに注目が集まりがちで、契約時に自動的にセットされている医療特約の存在を忘れてしまうケースが非常に多いです。今回、我が家でもまさにこのパターンに該当しており、保険証券を洗い出すまで重複に気づいていませんでした。加入から年数が経つほど、証券の中身を忘れてしまう傾向が強くなるため、定期的な棚卸しが欠かせません。

失敗パターン2:助成対象年齢の上限を把握せず、切れ目なく保障が続くと思い込む

子ども医療費助成は多くの自治体で中学卒業までを区切りとしており、高校進学のタイミングで自己負担割合が変わることがあります。この切り替わりを把握しないまま「助成があるから大丈夫」と思い込んでいると、進学と同時に想定外の自己負担が発生することになります。助成の対象年齢は自治体のウェブサイトや窓口で定期的に確認し、子どもの成長に合わせて保障の見直し時期をあらかじめカレンダーに組み込んでおくことをおすすめします。

失敗パターン3:最初に提示されたプランをそのまま契約してしまう

保険外交員やライフプランナーから提示されるプランは、あくまで数ある選択肢の1つに過ぎません。今回のケースのように、公的制度との重複や既存契約との重複を確認するプロセスを踏まないまま契約してしまうと、割高な保険料を払い続けることになりかねません。加入を急がず、まず自分の家計と既存契約を数字で洗い出す一手間が、長期的な家計の差につながります。

よくある質問(Q&A)

Q1. 高校生になったら子ども医療費助成はどうなりますか

A. 自治体によって対象年齢は大きく異なります。中学卒業までとしている自治体もあれば、高校卒業まで対象を拡充している自治体も増えてきています。進学のタイミングで自己負担割合が変わる可能性があるため、子どもが中学生になった時点で一度、お住まいの自治体の最新の助成対象年齢を確認しておくことをおすすめします。転居の予定がある場合は、転居先の制度もあわせて確認しておくと安心です。

Q2. 持病がある子どもは民間の医療保険に加入できますか

A. 保険会社ごとに告知内容や引受基準が異なるため一概にはいえませんが、既往症がある場合は加入自体が制限されたり、特定の疾患に関する保障が一定期間対象外になる「部位不担保」などの条件が付くことがあります。持病がある場合こそ、公的な高額療養費制度や自治体独自の医療費助成(小児慢性特定疾病医療費助成など)が使えないかを先に確認することが重要です。公的制度でカバーできる範囲を把握したうえで、残るリスクにどう備えるか(貯蓄・資産形成で対応するのか)を検討する順序は、持病の有無にかかわらず変わりません。

Q3. 兄弟姉妹をまとめて1つの契約に加入させることはできますか

A. 保険会社によっては、家族全員をまとめて契約できる「家族型」の医療保険や特約を用意している場合があります。一見手続きが簡単で割安に見えることもありますが、契約が1本にまとまっていると、内容の重複や過不足に気づきにくくなるという副作用もあります。我が家では、まとめて契約するかどうかよりも、まず一人ひとりの既存契約(学資保険の特約など)を確認し、重複がないかを個別にチェックする作業を優先しました。まとめて契約する場合でも、年に一度は個別の保障内容を書き出して確認する習慣を持つことをおすすめします。

Q4. 学資保険の医療特約だけを外すことはできますか

A. 契約している保険会社や商品によって対応は異なります。特約だけを解約できる商品もあれば、主契約とセットになっていて特約単体では解約できない商品もあります。特約を解約した場合、その分の保険料が下がるのか、あるいは主契約の保障内容にどう影響するのかは、契約している保険会社に直接確認する必要があります。解約前には、解約返戻金への影響や、再加入する際に告知が必要になる可能性も含めて、総合的に判断することをおすすめします。

まとめ

子ども医療保険が必要かどうかは、家庭ごとの状況によって答えが変わる問題です。しかし、少なくとも次の3点は、加入を検討する前に必ず確認すべきだと今回の試算を通じて改めて実感しました。第一に、お住まいの自治体の子ども医療費助成制度がどこまでカバーしているかを正確に把握すること。第二に、学資保険やその他の保険にすでに医療特約が付帯していないかを確認し、重複加入を避けること。第三に、保険料の総額と受取見込み額の期待値を数字で比較し、感情ではなく数字で判断することです。

私自身は一人で4人の子どもを育てる立場として、家計の固定費には人一倍敏感にならざるを得ません。だからこそ、保険外交員からの提案を鵜呑みにせず、公的制度と既存の契約内容を洗い出した上で、単体の子ども医療保険には新規加入せず、その分を新NISAでの資産形成や貯蓄に回すという判断に至りました。すべての家庭に同じ結論が当てはまるわけではありませんが、加入・非加入を決める前に、一度立ち止まって数字で検証するプロセスそのものは、どの家庭にとっても有益だと考えています。

※本記事は個人の経験と試算に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品への加入や解約を推奨するものではありません。医療費助成制度の内容は自治体や制度改正により変動するため、最新の情報は必ずお住まいの自治体窓口でご確認ください。保険への加入を検討される際は、ご自身の家計状況や既存契約の内容を踏まえ、必要に応じて専門家にご相談の上、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

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