iDeCoの掛金上限|厚生年金がない個人事業主の老後設計の考え方

ひとり親の家計

個人事業主に「厚生年金がない」という現実にどう向き合うか

私は個人事業主として20年近く仕事をしながら、投資家としても20年、さらに兼業で大家業も20年続けてきました。そのかたわらで、シングルファーザーとして4人の子どもたちを育てています。仕事も家庭も自分ひとりで判断しなければならない立場だからこそ、「老後の年金がどれくらいになるのか」という問いには、若い頃から人一倍敏感でした。

会社員であれば厚生年金に加入し、給与から天引きされる形で将来の年金額がある程度積み上がっていきます。ところが個人事業主は国民年金第1号被保険者という扱いになり、厚生年金の上乗せ部分がありません。国民年金だけでは、老後に受け取れる金額はどうしても心もとない水準にとどまります。これは制度上の構造であって、努力でどうにかなる話ではありません。だからこそ「自分で老後の資産を作る」という発想への切り替えが、個人事業主には避けて通れないテーマになります。

私自身、独立した当初はこの事実をそこまで深刻に捉えていませんでした。しかし子どもたちの将来の教育費や、自分がひとりで家計全体を支え続けなければならない現実を意識するようになってから、iDeCo(個人型確定拠出年金)をはじめとする老後resource設計を本格的に見直すようになりました。この記事では、個人事業主にとってのiDeCoの掛金上限の考え方と、私が実際にどう向き合っているかをできるだけ具体的にお伝えします。

iDeCoの掛金上限はいくらか(第1号被保険者の場合)

iDeCoの掛金上限は、加入者の立場によって金額が異なります。会社員か公務員か、企業年金があるかどうかによっても細かく分かれていますが、個人事業主(国民年金第1号被保険者)の場合は、他の被保険者区分と比べて上限が高く設定されているのが特徴です。

具体的には、個人事業主の場合、月額上限は6万8,000円、年額に換算するとおよそ81万6,000円が上限の目安です。会社員の多くが月2万3,000円前後を上限としていることと比べると、個人事業主の枠はかなり広く用意されていることがわかります。これは、厚生年金という上乗せの仕組みがない分、自助努力の枠を大きく取れるようにという制度趣旨があるためだと理解しています。

ただし注意したいのは、この6万8,000円という枠は「iDeCo単独の上限」ではなく、国民年金基金や付加保険料と合算した上での上限だという点です。国民年金基金に加入している場合や、付加年金を納めている場合は、その掛金分を差し引いた残りがiDeCoの拠出可能額になります。ここを誤解していると、思っていたよりiDeCoに拠出できる余地が少なかった、ということが起こり得ます。

国民年金基金・付加年金との違いと使い分け

個人事業主が老後資産を積み立てる手段は、iDeCoだけではありません。国民年金基金や付加年金といった選択肢もあり、それぞれ性質が異なります。私自身、独立当初にこのあたりの違いを整理せずに動いてしまい、後から組み替えるのに手間がかかった経験があるので、早い段階で仕組みを理解しておくことをおすすめします。

  • iDeCo:掛金が全額所得控除の対象になり、運用益も非課税。将来の受取額は運用成績次第で変動する。自分で商品を選んで運用する必要がある。
  • 国民年金基金:掛金が全額所得控除の対象。将来受け取れる年金額があらかじめ決まっている(終身年金が基本)。運用の手間がかからない代わりに、途中でやめて掛金を引き出すことは基本的にできない。
  • 付加年金:月額わずかな掛金で、将来の年金額に定額が上乗せされる。掛金が少額で始めやすいが、上限額に対する影響は小さい。
  • 小規模企業共済:個人事業主の退職金づくりとして活用されることが多く、iDeCoとは別枠で掛けられる。iDeCoの上限を圧迫しないという点で組み合わせやすい。

私の場合は、iDeCoを中心にしながら小規模企業共済も併用しています。小規模企業共済はiDeCoの上限枠とは別に積み立てられるため、老後資産の「厚み」を作るうえで相性がよいと感じています。国民年金基金については、確定利回りの安心感がある一方で、途中で資産配分を柔軟に変えられない点がネックだと感じ、私自身は積極的には使っていません。このあたりは、どれだけ「先が読みにくい前提」で家計を組んでいるかによって、向き不向きが分かれる部分だと思います。

私が実際にどう組み立てているか

個人事業主として20年、投資家として20年、大家として20年という時間軸の中で、私の老後設計は少しずつ形を変えてきました。最初の数年は事業の運転資金を優先し、老後の積み立てにまで手が回らない時期もありました。事業が軌道に乗り、賃貸経営からの家賃収入が安定してきた段階で、ようやくiDeCoの掛金を上限に近づけていくことができるようになったというのが正直なところです。

今の私の老後設計は、大きく3つの柱で成り立っています。1つ目はiDeCoで、掛金の全額所得控除という税制メリットを活かしながら、長期の積立投資として運用しています。2つ目は小規模企業共済で、こちらは事業の廃業や引退のタイミングでまとまった資金を受け取れる仕組みとして位置づけています。3つ目は、大家業で得てきた賃貸収入そのものです。賃貸物件からの家賃収入は、年金のように毎月の現金収入として積み上がっていくため、公的年金の不足分を補う実質的な「私的年金」として機能しています。

この3本柱があることで、国民年金だけに頼らない老後設計ができていると感じています。逆に言えば、iDeCo1本だけに頼るのはやや心もとなく、事業収入や賃貸収入など複数の収入源を組み合わせることが、厚生年金のない個人事業主にとっては現実的な解になりやすいと思っています。

制度ごとの特徴を比較する

老後資産づくりの選択肢を並べて比較すると、それぞれの役割の違いがより見えやすくなります。私が実際に検討・利用してきた制度を中心に整理すると、次のようになります。

制度 掛金の柔軟性 税制優遇 受取の自由度 向いている人
iDeCo 年1回変更可 掛金全額控除+運用益非課税 原則60歳以降、受取方法は選択可 長期運用で資産を増やしたい人
国民年金基金 変更しにくい 掛金全額控除 終身年金など型が固定 受取額の確実性を重視する人
付加年金 ほぼ固定(少額) 掛金全額控除 老齢基礎年金に上乗せ 低コストで少し上乗せしたい人
小規模企業共済 掛金変更可 掛金全額控除 廃業・引退時にまとまった受取 事業の退職金を準備したい人

こうして並べてみると、iDeCoは「自分で運用してリターンを狙う枠」、国民年金基金や付加年金は「確定した上乗せを作る枠」、小規模企業共済は「事業の退職金枠」という、それぞれ異なる役割を担っていることがわかります。私自身は運用による資産成長を重視するタイプなので、確定給付型よりもiDeCoと小規模企業共済の組み合わせを選んでいますが、この判断は各家庭のリスク許容度によって変わってよい部分だと思います。

シングルファーザー×個人事業主特有の注意点

子育てをひとりで担いながら事業も続けていると、老後資金の積み立てと、目の前の教育費や生活費とのバランスをどう取るかが常に悩ましい問題になります。iDeCoは掛金が全額所得控除になる分、節税効果は大きいのですが、原則として60歳になるまで引き出せないという制約があります。これは老後資金としては心強い反面、教育費など「今すぐ使いたいお金」には回せないという意味でもあります。

私自身、子どもたちの進学のタイミングでまとまった支出が重なる時期には、iDeCoの掛金を一時的に減額したことがあります。掛金は年に1回変更できるので、無理に上限いっぱいまで拠出し続けるのではなく、その年の家計状況に応じて調整するという運用を心がけています。個人事業主は収入の波が会社員より大きくなりがちなので、この柔軟性はむしろ積極的に活用すべきだと感じています。

また、シングルで家計を支えている場合、万一のときに備えた保障の設計も同時に考えておく必要があります。iDeCoはあくまで老後資産づくりの制度であり、死亡保障の機能は基本的にありません(掛金相当額が遺族に給付される仕組みはありますが、生命保険のような保障性商品とは別物です)。老後の積み立てと、万一に備える保障は別の引き出しで考えるようにしています。

なお、知人から聞いた話ですが、収入が一定基準を下回る家庭では児童扶養手当のような公的な支援制度を利用しているケースもあるようです。個人事業主の所得は年による変動が大きいため、こうした制度の有無や基準についても、自分の状況に応じて一度確認しておく価値はあると思います。

掛金上限を使い切るべきか、余力を残すべきか

「上限の6万8,000円まで拠出すべきかどうか」は、よく聞かれる質問です。結論から言うと、私は「上限を使い切ることを目的化しない方がよい」と考えています。理由は2つあります。

1つ目は、事業収入の変動リスクです。個人事業主の所得は、会社員の給与のように毎月一定ではありません。繁忙期と閑散期で売上が大きく変わることも珍しくなく、上限いっぱいまで拠出してしまうと、収入が落ち込んだ年に事業資金や生活費を圧迫するおそれがあります。私は事業のキャッシュフローに余裕を持たせたうえで、無理のない範囲で拠出額を決めるようにしています。

2つ目は、資金の流動性です。iDeCoは老後資金としては優れた制度ですが、60歳まで引き出せないという制約があるため、教育費や住宅関連の支出など、将来必要になる資金は別の形(NISAや預金など)で確保しておく必要があります。老後資金と中期的な資金需要のバランスを取ることが、単純に「上限まで拠出する」こと以上に重要だと感じています。

一方で、所得税・住民税の負担が大きい年には、掛金を増やすことで節税効果を最大化できるというメリットもあります。個人事業主は所得控除の効果を実感しやすい立場にあるので、事業が好調な年に掛金を引き上げ、厳しい年には抑える、という柔軟な運用が現実的だと思います。

老後設計を考えるときの実務チェックリスト

私が毎年、確定申告のタイミングに合わせて見直している項目を挙げておきます。個人事業主として老後資産を設計するうえで、参考にしていただければと思います。

  • その年の事業所得の見込みと、iDeCoの掛金額が家計に無理を与えないかの確認
  • 国民年金基金や付加年金と合算した場合の、iDeCo拠出可能額の再確認
  • 小規模企業共済など、iDeCo以外の退職金準備の積立状況の確認
  • 賃貸収入など、老後の実質的な年金代わりになる収入源の状況確認
  • 教育費や生活防衛資金など、60歳より前に必要になる資金の確保状況
  • 万一の場合に備えた保障(生命保険など)が、老後資産づくりとは別に用意できているかの確認

これらを毎年一通り点検することで、「老後資産を積み立てているつもりが、目先の資金繰りを圧迫していた」といった事態を避けやすくなります。特に個人事業主は、事業・家計・老後資産の3つが密接に絡み合っているため、単年度だけでなく数年単位で見通しを立てることが大切だと感じています。

よくある質問

Q1. 個人事業主のiDeCo掛金上限は、会社員よりなぜ高いのですか。

会社員は厚生年金という上乗せの年金制度に加入しているのに対し、個人事業主は国民年金のみの加入となり、公的年金の給付水準が相対的に低くなります。その差を自助努力で補えるように、個人事業主の掛金上限は会社員より広く設定されています。

Q2. 国民年金基金とiDeCoは両方使えますか。

両方利用すること自体は可能ですが、掛金は合算した金額が上限内に収まるように調整する必要があります。国民年金基金の掛金が多いほど、iDeCoに拠出できる金額は少なくなる仕組みです。

Q3. 掛金を減額したり、一時的に停止したりできますか。

iDeCoの掛金額は年に1回変更が可能で、拠出を停止すること(運用指図者への切り替え)もできます。ただし一度積み立てた資産は原則60歳まで引き出せない点は変わりません。事業収入が不安定な年には、無理のない金額に見直すことをおすすめします。

Q4. 賃貸経営からの家賃収入は、老後資産としてiDeCoの代わりになりますか。

性質は異なりますが、毎月の現金収入という点では老後の生活を支える役割を果たせます。私自身は、iDeCoのような税制優遇のある積立制度と、賃貸収入のような継続的なキャッシュフローを組み合わせることで、公的年金の不足分を補う設計にしています。どちらか一方に偏らせず、複数の柱を持つことが安定につながると感じています。

タイトルとURLをコピーしました