円建て資産と外貨建て資産の比率|為替リスクを家計目線で考える

投資・資産運用

ここ数年、為替相場のニュースを見ない日はないというくらい、円安・円高の話題が家計にも身近になりました。「資産は円だけで持っていて大丈夫なのか」「外貨建て資産をどのくらい持つべきなのか」というご相談を受けることが増えています。

私は個人事業主として20年、投資家として20年、大家として20年というキャリアの中で、自宅・賃貸不動産という円建ての実物資産と、外国株式インデックスファンドなどの外貨建て資産の両方を保有してきました。4人の子どもを育てるシングルファーザーという立場から、「円建て資産と外貨建て資産の比率」について、家計目線で考えていきたいと思います。

そもそも円建て資産・外貨建て資産とは何か

まず整理しておくと、円建て資産とは、円の現金・預金、日本国内の不動産、日本株式、円建ての債券など、価値が円で決まる資産のことです。外貨建て資産とは、外貨預金、米国株式や全世界株式などの外国株式インデックスファンド、外貨建て債券など、価値がドルやユーロなど外国通貨で決まる資産のことを指します。

ここで注意したいのは、「投資信託の購入代金を円で払ったから円建て資産」ではないという点です。たとえば米国株式インデックスファンドは、購入時の決済は円で行いますが、ファンドの中身は米ドル建ての株式であり、為替の影響を受けます。基準価額には為替レートの変動が反映されるため、実質的には外貨建て資産に分類されます。

私たち日本に暮らす家庭にとって、日々の生活費、教育費、住宅ローンの返済など、支出のほとんどは円建てです。つまり、生活の基盤となるキャッシュフローは円建てである一方、資産形成の手段として外貨建て資産を持つことは、通貨の分散という意味で重要な意味を持ちます。

円だけで資産を持つことのリスク

「日本円は安全資産だから、資産は全部円で持っておけば安心」という考え方は、一昔前まではある程度合理的でした。しかし、ここ数年の物価上昇や為替変動を見ていると、円だけで資産を持つことにもリスクがあることが改めて意識されるようになっています。

1つ目は、インフレによる実質的な資産の目減りです。銀行預金の金利がわずかであっても物価上昇率を下回れば、額面上の金額は変わらなくても、実質的な購買力は目減りしていきます。

2つ目は、円安局面における輸入物価の上昇です。エネルギーや食料品など、輸入に頼る部分が多い品目は、円安が進むと国内価格に転嫁されやすくなります。家計の支出が円建てである以上、円安による物価上昇は家計を直接圧迫します。このとき、資産の一部を外貨建てで持っていれば、円換算での資産評価額が上昇し、物価上昇によるダメージをある程度相殺する効果が期待できます。

3つ目は、日本経済そのものの将来的な成長率への不確実性です。少子高齢化が進む中で、日本一国の経済成長にすべてを賭けることにはリスクがあるという考え方から、世界経済全体に分散して投資するという発想が広がっています。

外貨建て資産に偏りすぎることのリスク

一方で、外貨建て資産に偏りすぎることにもリスクがあります。

まず、為替差損のリスクです。外貨建て資産は、投資先の価格が上昇していても、円高が進めば円換算での評価額が下がることがあります。逆に投資先の価格が下落していても円安が進めばプラスに見えることもあり、値動きの要因が「投資対象の価格変動」と「為替の変動」の2つに増えることで、値動きが読みにくくなる面があります。

また、生活防衛資金や近い将来に使う予定のあるお金(教育費、住宅ローンの頭金など)を外貨建て資産で持ってしまうと、実際にお金が必要になったタイミングでたまたま円高になっていた場合、想定より少ない金額しか用意できないという事態が起こり得ます。近い将来に使う予定のあるお金は、為替変動の影響を受けにくい円建ての預貯金で確保しておくのが基本です。

私が実践している比率の考え方

私自身の資産配分を大まかに説明すると、大家業として保有している賃貸不動産は円建ての実物資産であり、これがポートフォリオの中で一定の比重を占めています。不動産は流動性が低い分、日々の価格変動に一喜一憂しなくて済むという安定感があります。

そのうえで、金融資産(現預金・投資信託・個別株など)の中では、生活防衛資金として半年〜1年分程度の生活費を円建ての預貯金で確保し、それを超える余剰資金については、全世界株式や米国株式のインデックス投資信託を中心とした外貨建て資産の比率を高めに設定しています。これは、不動産という円建ての実物資産をすでに一定量持っているからこそ、金融資産の部分では意図的に外貨への分散を厚めにしている、というバランス感覚です。

つまり、「金融資産だけを見て円と外貨の比率を決める」のではなく、不動産などの実物資産も含めた資産全体を俯瞰したうえで、通貨の分散を考えることが大切だと感じています。持ち家がある家庭、賃貸物件を保有している家庭は、それだけですでに円建て資産の比重が高くなっていることが多いため、金融資産の部分では外貨建てをやや厚めにする、という考え方が一つの目安になります。

家計のフェーズによって変えるべき比率

比率は一度決めたら終わりではなく、ライフステージによって見直すことも必要です。

子どもの教育費がピークを迎える時期が近づいてきたら、その支払いに必要な金額分は、為替変動の影響を受けない円建ての預貯金に段階的に移していくという考え方があります。数年後に使うことが確定しているお金を、値動きのある外貨建て資産のまま置いておくのはリスクが高いためです。

逆に、資産形成の初期段階で、当面使う予定のない資金であれば、長期的な視点でインフレや円安に対応できる外貨建て資産の比率を高めに取っておく、という考え方も合理的です。

私自身、4人の子どもの教育費という大きな支出イベントを見据えながら、必要な時期が近づいてきた資金から順番に、円建ての安全資産へとシフトさせていく「バケット戦略」的な考え方を取り入れています。すべての資産を一律の比率で管理するのではなく、使う時期ごとに資産を仕分けし、それぞれに適した通貨・資産クラスを割り当てる、というイメージです。

為替ヘッジありとヘッジなし、どちらを選ぶか

外貨建て資産を投資信託で保有する場合、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」を選べる商品があります。為替ヘッジありは、為替変動の影響を抑えて投資対象そのものの価格変動だけを取りにいく商品性であるのに対し、為替ヘッジなしは、投資対象の価格変動に加えて為替変動の影響もそのまま受けます。

通貨の分散という目的で外貨建て資産を持つのであれば、基本的には為替ヘッジなしを選ぶほうが、本来の目的に合致します。為替ヘッジをかけてしまうと、値動きの要因から為替変動を切り離してしまうため、円安局面でのメリットを享受しにくくなります。ただし、ヘッジコストがかかる分、為替ヘッジありのほうが信託報酬や実質コストが高くなる傾向がある点も理解しておく必要があります。

なお、以前の記事「積立投資の出口戦略|取り崩し方で手取りはどう変わるか」や「不動産投資と金融資産投資、リスクの質の違いを整理する」でも、資産全体のバランスについて触れていますので、あわせて参考にしていただければと思います。

まとめ

円建て資産と外貨建て資産の比率に、万人共通の正解はありません。大切なのは、生活の基盤である支出が円建てであることを踏まえたうえで、不動産などの実物資産も含めた資産全体を俯瞰し、生活防衛資金と近い将来に使う予定のあるお金は円建てで確保し、それを超える余剰資金の部分で通貨の分散を図る、というバランス感覚です。

私自身は、不動産という円建ての実物資産を土台に持ちながら、金融資産の部分では外貨建て資産の比率を高めに設定し、教育費など将来の支出が近づくにつれて円建ての安全資産へと段階的にシフトさせる方針を取っています。ご自身の家計のフェーズに合わせて、無理のない比率を見つけていただければと思います。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や為替の見通しを保証するものではありません。為替相場や制度は将来変動・変更される可能性があります。個別の税務・投資・法律に関する判断については、税理士やファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。

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