新NISA制度がスタートしてから、家計相談やコメント欄でいちばん多く受ける質問のひとつが「成長投資枠、インデックスだけじゃもったいない気がするんですが、個別株も買うべきですか?」というものです。
私は個人事業主として20年、投資家として20年、そして大家として20年というキャリアを重ねてきました。その間、リーマンショックやコロナショックなど大きな下落局面も経験し、インデックス一本で淡々と積み立てる期間もあれば、個別株にかなりの比率を振った時期もあります。今回は、シングルファーザーとして4人の子どもを育てながら資産形成をしている立場から、「成長投資枠で個別株を買うべきかどうか」を家計目線・実体験ベースで整理していきます。
結論を先に言うと、「全員が個別株を買うべき」でも「全員がインデックスだけにすべき」でもありません。大事なのは、自分の家計における個別株の役割を明確にすることです。
新NISAの成長投資枠のおさらい
まず前提を整理しておきます。2024年から始まった新NISAは、つみたて投資枠(年間120万円まで)と成長投資枠(年間240万円まで)の2階建てになっており、生涯投資枠は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。非課税保有期間は無期限化され、売却すれば翌年以降に投資枠が復活する仕組みになりました。
つみたて投資枠は金融庁の基準を満たした投資信託・ETFに限定されていますが、成長投資枠は上場株式や幅広い投資信託が対象になります。つまり、成長投資枠を使えば個別株を非課税で保有できるというのが、この制度の大きな特徴のひとつです。
ここで注意したいのは、成長投資枠は「1,200万円という上限があるうえに、生涯投資枠1,800万円の内数である」という点です。つみたて投資枠だけで1,800万円を埋めることは可能ですが、成長投資枠だけで1,800万円を埋めることはできません。この設計を見ると、国としては「まずはインデックス投資信託を軸に、成長投資枠はサブ的に使ってほしい」という意図が透けて見えます。制度設計はあくまで参考情報であり、個々の投資判断を縛るものではありませんが、資産形成の王道がインデックスの長期積立にあることは、多くの実証研究や制度設計からも読み取れます。
個別株を組み込むメリットと現実的なリスク
とはいえ、個別株投資には個別株ならではの面白さと合理性があります。私自身、20年間投資を続けてきた中で、個別株投資には次のようなメリットを感じています。
1つ目は、応援したい企業に直接投資できるという納得感です。自分の仕事や生活に関わりのある業界、将来性を感じるビジネスモデルの企業に投資することで、経済ニュースへの理解が深まり、投資そのものへの興味が持続しやすくなります。
2つ目は、うまくいけばインデックスを大きく上回るリターンを狙える点です。もちろんこれは裏を返せば「大きく下回るリスク」でもあります。個別株は業績の変動、経営リスク、業界固有のリスクなど、インデックスでは分散されているはずのリスクをダイレクトに受けます。
3つ目は、配当や株主優待といった、インデックス投資信託の多くが再投資に回してしまう部分を、自分の判断で受け取れる点です。これは家計のキャッシュフロー管理という観点では、意外と軽視できないメリットだと感じています。
一方でリスクとして強調しておきたいのは、NISA口座内での個別株投資には「損失が出ても他の利益と損益通算できない」「損失を翌年以降に繰り越せない」という制約があることです。特定口座であれば含み損を抱えた銘柄を売却して損益通算・繰越控除を使うという選択肢がありますが、NISA口座ではその選択肢が使えません。個別株で大きく失敗した場合、その非課税枠を「損失の詰まった箱」として使い切ってしまうリスクがある、ということは強く意識しておく必要があります。
私が実践しているコア・サテライト戦略
私自身の運用方針は、いわゆる「コア・サテライト戦略」です。資産の大部分(家計や個人によって目安は異なりますが、一般的には7〜9割程度が語られることが多い水準)を全世界株式や米国株式のインデックス投資信託でコアとして固め、残りの1〜3割程度を個別株や特定テーマのアクティブファンドなどサテライト部分として組み込む、という考え方です。
この比率はあくまで一例であり、絶対的な正解ではありません。年齢、家族構成、リスク許容度、そして投資に割ける時間や興味によって適切な比率は変わってきます。特に私のようにシングルファーザーとして4人の子どもを育てていると、日々の家事・育児・仕事に追われる中で、個別株の決算やニュースを細かく追いかける時間を確保するのは正直簡単ではありません。だからこそ、コア部分をインデックスで固めておくことで、「たとえサテライト部分の個別株がゼロになっても、資産形成の土台は揺るがない」という安心感を持てるようにしています。
成長投資枠の使い方としては、まずつみたて投資枠でインデックス投資信託を淡々と積み立て、成長投資枠の一部でも同じインデックス投資信託を買い増ししつつ、残りの成長投資枠の中で個別株にチャレンジする、という組み方をしている方が多い印象です。成長投資枠だからといって「必ず個別株を買わなければならない」というルールはなく、成長投資枠でインデックス投資信託を買い続けるのも十分に合理的な選択肢です。
個別株を選ぶときに気をつけていること
個別株投資をサテライトとして取り入れる場合、私が意識しているポイントをいくつか挙げます。
まず、1銘柄への集中を避けることです。個別株はどれだけ調べて投資判断をしたとしても、想定外の業績悪化や不祥事といったリスクが常につきまといます。サテライト部分の中でも、特定の1〜2銘柄に偏らせず、業種を分散させて複数銘柄に分けることを心がけています。
次に、生活防衛資金と切り離して考えることです。個別株投資に回すお金は、あくまで「当面使う予定のない余剰資金」に限定し、生活費や教育費、住宅ローンの返済原資といった、家計の土台となる資金には絶対に手をつけないようにしています。子どもが4人いる家庭では、進学のタイミングなどでまとまった支出が重なることも珍しくありません。個別株での失敗が家計全体を揺るがすような投資の仕方は避けるべきだと考えています。
また、配当利回りの高さだけで銘柄を選ばないことも意識しています。高配当には理由があることが多く、業績の先行き不安や株価下落の結果として利回りが高く見えているケースも少なくありません。配当だけでなく、事業の成長性や財務の健全性もあわせて確認するようにしています。
インデックスと個別株、それぞれに向いている人
最後に、それぞれのスタイルがどんな人に向いているかを整理しておきます。
インデックス投資中心が向いているのは、投資に時間をかけられない人、値動きに一喜一憂したくない人、そして「資産形成の再現性」を重視する人です。忙しい共働き世帯やひとり親家庭など、日々のタスクが多い家庭ほど、シンプルな仕組みで淡々と続けられるインデックス投資の恩恵は大きいと感じます。
一方、個別株投資を組み込むのが向いているのは、企業分析や決算を読むことそのものが好きで苦にならない人、投資を通じて経済や社会の仕組みへの理解を深めたい人、そして万一の損失が出ても家計全体には影響しない範囲で投資できる人です。
私自身は、コア部分のインデックス投資信託があるからこそ、サテライト部分の個別株投資を「多少失敗しても学びとして受け止められる範囲」で楽しめていると感じています。逆に言えば、コア部分がなければ、個別株の値動きに家計そのものが振り回されてしまっていたかもしれません。
なお、以前の記事「NISAの非課税期間が無期限になった意味を家計目線で考える」や「投資信託の分配金再投資と受取りどちらが得か」でも、長期投資の考え方について触れています。あわせて読んでいただくと、今回の内容がより理解しやすくなるかと思います。
よくある疑問:成長投資枠の使い方Q&A
最後に、成長投資枠と個別株について、相談でよく聞かれる疑問をいくつか整理しておきます。
「成長投資枠を使い切らないともったいないのか」という疑問については、無理に使い切る必要はないと考えています。つみたて投資枠だけで生涯投資枠1,800万円のうち相当部分を埋めることも可能であり、成長投資枠は「使える枠がある」だけであって「使わなければならない枠」ではありません。余剰資金の範囲を超えてまで成長投資枠を埋めようとする必要はありません。
「個別株はいつ売るべきか」という疑問については、あらかじめ売却の基準(業績の大幅な下方修正があった場合、投資の前提が崩れた場合など)を購入前に決めておくことをおすすめしています。値上がりしたから売る、値下がりしたから売る、という感情的な判断ではなく、購入時に立てた前提が崩れたかどうかで判断すると、後悔の少ない意思決定がしやすくなります。
「子どもの将来のために個別株を持たせるのはどうか」という疑問もよく受けますが、未成年口座での投資教育という文脈では、個別株は値動きの理由が分かりやすく、経済への興味を引き出すきっかけとして悪くない選択肢だと感じています。ただし、この場合も金額はあくまで教育目的の少額にとどめ、家計の資産形成の本流はインデックス投資に置くという整理をしています。
まとめ
新NISAの成長投資枠で個別株を買うべきかどうかは、「買うべきか、買わざるべきか」という二択ではなく、「自分の家計の中でどんな役割を持たせるか」という設計の問題です。私自身は、コアをインデックス投資信託で固め、サテライトとして個別株を取り入れるコア・サテライト戦略を実践しています。特に子育て中で投資に割ける時間が限られている家庭ほど、まずはインデックスで土台を作り、その上で無理のない範囲で個別株にチャレンジする、という順番をおすすめしたいと思います。
NISA口座内の個別株は損益通算・繰越控除ができないという制約もふまえ、生活防衛資金とは切り離した余剰資金の範囲で、業種分散を意識しながら向き合っていくことが、長期的に資産形成を続けるコツだと感じています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。税制・制度は将来変更される可能性があります。個別の税務・投資・法律に関する判断については、税理士やファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。


