子どもの教育費をどう準備するか。この問いに対して、かつては「学資保険に入っておけば安心」というのが一種の定番でした。しかし2024年に新NISAが始まり、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円、生涯投資枠1,800万円、しかも非課税保有期間が無期限という制度に生まれ変わったことで、状況は大きく変わっています。
私は4人の子を育てながら、個人事業主として20年、不動産投資家として20年、そして株式投資家としても長年資産形成をしてきました。教育費という「使う時期がほぼ決まっている支出」をどう資産形成の中に組み込むかは、我が家にとってもずっと向き合ってきたテーマです。
この記事では、学資保険の仕組みとメリット・デメリットを整理したうえで、新NISAを軸にした教育費準備の考え方を、実体験を交えながら再検証していきます。結論を先取りすると、2026年時点の制度を前提にすれば、学資保険は基本的に不要というのが私の結論です。新NISAでの積立と、契約者に必要な保障は掛け捨ての生命保険で別に確保する方が、コストの面でも柔軟性の面でも合理的だと考えています。
教育費準備というテーマは、当ブログでもこれまで何度か取り上げてきましたが、多くの記事は「学資保険はもう古い」「NISA一択」という単純化された結論に流れがちです。しかし実際に4人分の教育費と向き合ってきた立場から言うと、話はそれほど単純ではありません。制度の中身を正確に理解したうえで、なぜ学資保険という商品を選ばなくてよいのかを、できるだけフェアな視点で整理し、最終的な判断材料を提供することを目指します。
学資保険とは何か、今どういう位置づけにあるのか
学資保険は、子どもの進学時期に合わせて祝い金や満期保険金を受け取れる貯蓄型の保険です。契約者である親に万が一のことがあった場合、以後の保険料払込が免除されても満期金は予定通り受け取れる「保障」がセットになっているのが最大の特徴です。
かつては返戻率(払い込んだ保険料の総額に対して受け取れる金額の割合)が110%を超える商品も珍しくありませんでした。しかし低金利環境が長く続いたことで、現在主流の学資保険の返戻率は100%台前半〜105%程度が目安になっています。中には保障を手厚くした結果、返戻率が100%を割り込む「元本割れ型」の商品すらあります。
さらに近年の物価上昇(インフレ)や円安傾向を踏まえると、「名目上は増えているが、実質的な購買力ではほとんど増えていない、あるいは目減りしている」という状態になりやすいのが学資保険の弱点です。たとえば返戻率105%の学資保険で15年間積み立てたとしても、その間に物価が15%上昇していれば、実質的な価値はほぼ横ばいということになります。
一方で学資保険には「強制的に積み立てる仕組み」としての価値があります。口座から自動的に保険料が引き落とされ、途中で引き出しにくい設計になっているため、「気づいたら使ってしまっていた」という事態を防ぎやすいのです。ただし、この「行動経済学的な強さ」は、証券口座の自動積立設定でも十分に再現できるという点は押さえておきたいところです。
また、学資保険の契約時には健康状態の告知が必要になる商品が一般的です。これは裏を返せば、契約者である親に万が一のことがあった場合の保障機能が、生命保険としての実質的な価値を持っているということでもあります。教育費の準備と、契約者に万一のことがあった場合のリスクヘッジを、ひとつの商品で同時に処理できる点は、一見すると管理の手間を減らせる魅力に見えます。ただし、この保障機能のコストは保険料に上乗せされて返戻率を押し下げているため、実質的には「割高な保険料を払って、掛け捨ての生命保険に自動的に加入させられている」のと変わりません。契約者に万一のことがあった場合の保障は、別途、掛け捨ての生命保険で必要な金額だけ確保し、教育資金の積立は積立で分けて管理する方が、トータルのコストは低く抑えられるというのが私の考えです。
つまり学資保険は「貯蓄性商品」と「保障性商品」がセットになった複合商品であり、貯蓄性だけを取り出して他の金融商品と単純比較することには、そもそも限界があるという点は理解しておく必要があります。保障と貯蓄をひとつの商品で兼ねようとすると、多くの場合どちらも中途半端なコストの高い設計になりがちです。
新NISAの基本構造と教育費準備における位置づけ
2024年からスタートした新NISAは、旧NISA・つみたてNISAと比べて別次元の制度になりました。制度の骨格を改めて整理します。
- つみたて投資枠:年間120万円まで、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象
- 成長投資枠:年間240万円まで、個別株やより幅広い投資信託が対象
- 併用可能で年間最大360万円まで投資可能
- 生涯投資枠は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円が上限)
- 非課税保有期間は無期限
- 売却すれば翌年以降に投資枠が復活する(簿価ベース)
この制度の教育費準備における最大の利点は「非課税で運用できる期間に事実上の制限がない」ことです。旧NISAは非課税期間が有限だったため「いつまでに使い切るか、ロールオーバーするか」という設計が必要でしたが、新NISAではその制約がなくなりました。子どもが生まれてから大学入学まで18年前後という時間軸を、非課税のまま丸ごと運用に充てられるのは非常に大きな変化です。
もちろんNISAは投資である以上、元本保証はありません。相場が下落しているタイミングで資金が必要になれば、払い込んだ額を下回って引き出さざるを得ないリスクは常にあります。この「元本保証がないこと」こそが学資保険との最大の違いであり、判断の分かれ目になります。
また、新NISAには「いつでも売却して現金化できる」という流動性の高さもあります。学資保険が原則として満期や解約という決まった出口しか持たないのに対し、新NISAで積み立てた投資信託は、必要なタイミングで必要な分だけ部分的に売却することが可能です。たとえば教育費が想定より多くかかる年と少なく済む年がある場合、その都度必要な金額だけを取り崩せるという柔軟性は、学資保険にはない実務上の使いやすさだと感じています。
一方で、この「いつでも引き出せる」という手軽さは、裏を返せば「使ってしまいやすい」というリスクでもあります。教育費用として積み立てていたはずの資金が、家計の他の支出に流用されてしまうケースは実際に少なくありません。この点については、証券口座を教育費専用に分けておく、あるいは家計簿アプリなどで資金使途にタグ付けをしておくといった、自分なりのルール作りが重要になります。
ジュニアNISA廃止後、教育費準備の選択肢はどう変わったか
新NISAの陰でやや忘れられがちですが、子ども名義で非課税投資ができた「ジュニアNISA」は2023年で新規口座開設が終了し、制度としては役割を終えました。廃止前は「払い出し制限」がネックとされていましたが、廃止決定後は18歳未満でも払い出し制限なく引き出せるようになり、駆け込みで活用した家庭も多かったはずです。
しかし2024年以降、子ども名義での新規の非課税投資枠は基本的に存在しません。現在、子どもの教育費を非課税制度で準備しようとすると、選択肢は実質的に「親名義の新NISA」に一本化されたと言ってよい状況です。
この変化は一長一短です。子ども名義の資産として明確に分離できないというデメリットがある一方、親の生涯投資枠(1,800万円)の中で教育費用の資金と老後資金・生活防衛資金を一体として管理できるというメリットもあります。私自身は、子ども別に口座を分けるよりも、親の資産全体の中で「教育費として使う予定の部分」を管理表で色分けして把握する方が、結果的に無駄が少ないと感じています。以前「教育費の管理表をどう作るか」というテーマで書いた記事でも触れましたが、資金使途ごとにExcelやスプレッドシートで仕訳しておくと、口座を分けなくても十分に管理は可能です。
4人の子がいる家庭の場合、それぞれの進学時期がずれているのが通常なので、生涯投資枠1,800万円という上限は決して余裕のある数字ではありません。教育費だけでなく、老後資金や住宅ローンの繰り上げ返済、事業資金など、家庭によって非課税枠を使いたい用途は複数あるはずです。そのため「教育費にいくら、老後資金にいくら」と厳密に枠を色分けするというよりは、家計全体のバランスシートを俯瞰したうえで、必要なタイミングで必要な分を取り崩すという発想の方が、実務的には機能しやすいというのが私の実感です。
なお、配偶者がいる家庭であれば、夫婦それぞれが新NISA口座を持つことで非課税枠は合計3,600万円まで拡大します。ひとり親家庭の場合はこの枠が使えないという構造的な違いがあるため、限られた非課税枠をどう配分するかという計画性が、より一層重要になってくると感じています。
低解約返戻金型終身保険という選択肢との比較
学資保険と並んで教育費準備の手段として語られることが多いのが、低解約返戻金型終身保険です。これは保険料払込期間中の解約返戻金を低く抑える代わりに保険料を割安にし、払込満了後は解約返戻率が上昇する仕組みの終身保険です。
学資保険との違いは「満期がなく、一生涯の死亡保障として持ち続けられる」点にあります。教育資金として使わなかった場合は、そのまま老後資金や相続対策に転用できる柔軟性があります。返戻率も学資保険より高めに設計されている商品が多く、払込期間を教育資金が必要になる時期より前に終える設計にすれば、進学時に解約して資金化することも可能です。
ただし、これも学資保険と同様に「予定利率」がベースになっている商品である以上、インフレに対する耐性は基本的に高くありません。また保険という商品の性質上、中途解約すると大きく元本割れするタイミングがあるため、資金計画に柔軟性を持たせにくいという弱点は共通しています。
私の考えでは、低解約返戻金型終身保険は「教育費準備」というより「保障と貯蓄のハイブリッド」として語られる商品ですが、純粋に教育費を増やすことを目的にするなら、新NISAとの比較で優位性を語るのは難しいというのが率直な感想です。終身保険は解約返戻金の設計上、短期解約では大きく元本割れする「手数料の高い金融商品」という性格が強く、教育費準備の手段としては選択肢から外して良いというのが私の考えです。
さらに比較対象として、財形貯蓄や個人向け国債、定期預金といった元本保証型の貯蓄手段も選択肢に入れて考える家庭もあります。これらは学資保険のような保障機能こそありませんが、途中解約時のペナルティが小さい、あるいはほぼないという点で、学資保険より流動性が高いのが特徴です。特に個人向け国債(変動10年)は、金利上昇局面ではその恩恵を受けやすく、かつ最低金利保証(年0.05%が目安)もあるため、「増やす」というより「守る」ための資金の置き場所として、教育費が必要になる直前の1〜2年分を置いておく先としては十分に検討に値します。
このように教育費準備の手段は学資保険と新NISAの二択ではなく、実際には新NISA・預金・個人向け国債・掛け捨ての生命保険といったいくつもの選択肢の中から、家庭の状況に応じて組み合わせていくものだと捉えるのが実態に近いと思います。
学資保険が向いていそうに見えるケース、実は貯蓄・新NISAで代替できる理由
ここまで新NISAの優位性を中心に書いてきましたが、「それでも学資保険を選びたくなる理由」も一通り検討したうえで、それぞれ学資保険でなくても対応できると考えるに至った経緯を整理しておきます。
「学資保険が向いている」とよく言われる理由と、その代替策
- 自分で投資判断をすることに強いストレスを感じる、あるいは相場の値動きを見ると不安で夜も眠れなくなる → 進学までの期間が長い部分は新NISAの積立、直前の1〜2年分は預金や個人向け国債など元本保証型に置き換えることで、値動きへの不安自体を大きく減らせる
- 貯蓄が苦手で「強制的に引き落とされる仕組み」がないと続けられない → 新NISAも証券口座の自動積立設定を使えば、学資保険と同じように毎月自動的に引き落とされる仕組みを作れる
- 契約者に万が一のことがあった場合の保障を確保しておきたい → これは教育資金の積立とは別に、掛け捨ての定期保険で必要な金額だけ確保すれば十分で、割高な学資保険に払込免除特約という形でセットにする必要はない
- 元本割れの可能性を一切許容できない → 進学直前の資金は預金や個人向け国債に置いておけば、学資保険と同程度以上に元本割れのリスクを避けられる
私自身は「保障と貯蓄は分離すべき」という考え方の投資家なので、教育費については新NISAでの積立と預金・個人向け国債の組み合わせを軸にしており、学資保険は契約していません。契約者に万一のことがあった場合の保障は、別途、掛け捨ての生命保険で必要保障額を計算したうえで確保しています。振り返ってみると、「学資保険が向いている」とされる理由の多くは、学資保険という商品でなければ実現できないものではなく、新NISA・預金・掛け捨て保険を組み合わせることで同じ、あるいはそれ以上の安心感をより低いコストで実現できると感じています。
判断に迷う場合は、実際に自分のリスク許容度を試してみるという方法もあります。たとえば、いきなり教育費全額を投資に回すのではなく、まずは少額から新NISAの積立を数ヶ月〜1年ほど続けてみて、相場が下落した局面で自分がどう感じるかを観察してみるのです。含み損を見ても「そのうち戻るだろう」と落ち着いていられるのか、それとも夜も眠れなくなるほど不安になるのか。この体感は、頭で考えているだけでは分からないことが多く、実際にお金を投じてみて初めて分かるという側面があります。もし強い不安を感じるようであれば、投資に回す比率を下げて預金や個人向け国債の比率を高めるだけで十分に対応でき、そのために割高な学資保険を選ぶ必要はないというのが私の考えです。
4人の子の教育費を新NISAで準備してきた実体験
ここからは実体験の話です。個人事業主として20年、不動産投資と株式投資を並行しながら4人の子を育てる中で、教育費についてはいくつかの試行錯誤がありました。
まず前提として、大家業からの家賃収入という「毎月安定したキャッシュフロー」があったことは、投資中心の教育費準備を選びやすくした大きな要因です。会社員のように毎月決まった給与が入るわけではない個人事業主にとって、家賃収入のような複数の収入の柱を持っておくことは、相場が下落した局面でも積立を止めずに続けられる精神的な余裕につながりました。この点は、給与収入が中心の家庭とは前提条件が異なる部分だと自覚しています。
教育費の準備で意識してきたのは「必要になる時期から逆算した資産配分」です。大学入学までまだ10年以上ある時期は、株式中心のインデックス投資信託にほぼ全額を振り向けていました。しかし進学時期が5年以内に迫ってきた段階からは、少しずつ値動きの穏やかな資産(現金や個人向け国債など)の比率を高め、直前の1〜2年分は原則として元本割れしない形で確保するようにしています。これは「ターゲットイヤー型」と呼ばれる考え方に近いもので、相場が悪いタイミングで強制的に売却しなければならない事態を避けるための工夫です。
具体的な金額感で言うと、大学の入学金・授業料・生活費を合わせて、国公立で4年間総額500万円前後、私立文系で700万円前後、私立理系や医歯薬系ではさらに大きくなるというのが一般的な目安とされています(学部や地域による差が大きいため、あくまで目安として捉えてください)。4人分となると、時期が重なる年には家計への負担が一気に大きくなります。だからこそ、子どもが生まれた時点、あるいは早い段階から「いつ・いくら必要になりそうか」を大まかにでも一覧化しておくことが重要だと痛感してきました。以前書いた「教育費の総額を子どもの年齢別に見える化する方法」という記事でも取り上げましたが、この見える化ができているかどうかで、日々の資金繰りの安心感がまったく違います。
積立を始めた当初は、正直なところ「本当にこのやり方で足りるのか」という不安が常につきまとっていました。特にリーマンショック級の下落局面や、直近では新型コロナ禍における相場の急落を経験すると、含み損を抱えた資産評価額を見るたびに「今すぐ元本保証の商品に切り替えるべきではないか」という迷いが頭をよぎったのは事実です。それでも積立を継続できた理由は、進学までまだ時間的な余裕がある子どもの分については慌てて売却する必要がないと自分に言い聞かせられたこと、そして生活防衛資金を別途確保していたことで、目先の生活には影響がないという安心感があったことの二つが大きかったと振り返っています。
また、教育費の準備を一つの金融商品だけに頼るのではなく、不動産からの家賃収入、事業収入、株式投資の配当・分配金という複数の収入源を組み合わせてきたことも、精神的な余裕につながりました。仮に株式市場が大きく下落しても、家賃収入は比較的安定して入ってくるため、教育費が必要になるタイミングで無理に投資資産を取り崩さずに済むケースが多かったのです。この「収入源の分散」こそが、投資中心の教育費準備を継続できた最大の理由だったと、今振り返って強く感じています。
途中解約リスクについても触れておきます。学資保険は途中で解約すると多くの場合元本割れしますが、新NISAでの積立投資も「相場が下落しているタイミングで急に資金が必要になった場合」には、同様に元本を下回るリスクがあります。この点では両者とも「途中で崩すと不利になりやすい」という共通の弱点を持っています。だからこそ、進学の1〜2年前からは値動きのある資産の比率を下げていく、という時間軸に応じた調整が重要になるわけです。
生活防衛資金とのバランスをどう取るか
教育費準備を考えるうえで、新NISAでの積立以前に確保しておくべきなのが生活防衛資金です。これは病気や失業、収入の急減など不測の事態に備えて、生活費の6ヶ月〜1年分程度を現金や預金など、すぐに引き出せる形で確保しておく資金を指します。
個人事業主や自営業者の場合、会社員と比べて収入の変動が大きく、傷病手当金のような制度も基本的に利用できないため、この生活防衛資金の重要性は一段と高くなります。私自身、事業が波のある業種であることもあり、生活防衛資金は会社員の家庭よりも厚めに、生活費の1年分程度を目安に確保するようにしてきました。
生活防衛資金を確保せずに手元資金のすべてを新NISAに投じてしまうと、相場が下落しているタイミングで急にお金が必要になった際、含み損を抱えたまま売却せざるを得なくなります。これは教育費準備における最大の落とし穴の一つです。順番としては「生活防衛資金の確保」→「教育費を含めた中長期の積立」という優先順位を崩さないことが、結果的に新NISAでの運用を長く安定的に続けるコツだと感じています。
なお、生活防衛資金と教育費の直前資金(進学の1〜2年前に確保する現金部分)は役割が異なるため、家計簿や資産管理表の中で別枠として管理することをおすすめします。目的があいまいなまま「なんとなくの貯金」としてひとまとめにしてしまうと、いざという時にどちらの目的にどれだけ使ってよいのか判断がつかなくなりがちです。
個人事業主やフリーランスとして働く方にとっては、この生活防衛資金の重要性はさらに増します。会社員であれば傷病手当金や失業保険といったセーフティネットがある程度整っていますが、個人事業主の場合はそうした制度の恩恵を受けにくく、収入が途絶えるリスクを自分自身で吸収する必要があるからです。私自身、事業収入が落ち込んだ年もありましたが、生活防衛資金と複数の収入源を確保していたことで、教育費用の積立を止めずに継続できました。この「積立を止めない」という継続性こそが、長期投資においては最も重要な要素だと痛感しています。相場が悪い時にこそ淡々と買い増しを続けられるかどうかが、最終的なリターンを大きく左右するからです。
「最低限確保したい金額」をどう設計するか、家庭ごとの最適解の見つけ方
ここまで学資保険と新NISAを対比する形で書いてきましたが、実際には「投資だけに全振り」するのが不安な家庭も多いはずです。だからといって学資保険に頼る必要はなく、「元本保証で確保する部分」と「運用で増やす部分」を分けて設計すれば同じ安心感を得られます。
たとえば、必要教育費の一部(たとえば入学金相当分)は預金や個人向け国債といった元本保証の資産で確保しつつ、残りの部分は新NISAでの積立に回すという方法です。これにより「最低限、絶対に確保できる金額」を作りながら、時間を味方につけた運用でその上振れを狙うことができます。学資保険のように保険料の一部が保障コストとして差し引かれることもなく、預金や個人向け国債であればいつでも解約・現金化でき、しかも学資保険よりも流動性の高い形で「絶対に減らない部分」を用意できるというのが私の考えです。
判断のポイントを整理すると、次のような軸で考えるとよいでしょう。
- 相場下落時に積立を止めずに続けられる自信があるか(ないなら元本保証資産の比率を高める)
- 生活防衛資金は別途確保できているか(できていないなら、まずそちらを優先)
- 死亡保障は掛け捨て型の生命保険など、教育資金の積立とは別の手段で確保できているか
- 進学までの残り年数はどれくらいか(長いほど株式中心の運用がしやすい)
- 元本割れの可能性に対して、家族で合意できているか(配偶者や自分自身の心理的な許容度も重要)
この5つの軸を家庭ごとに当てはめてみると、自分たちにとっての最適解が見えてきやすくなります。以前公開した「新NISAのつみたて投資枠だけで教育費は本当に足りるのか検証してみた」という記事でも書きましたが、答えは家庭によって変わるという前提に立つことが、遠回りのようで一番の近道です。
もう一つ実務的なアドバイスとして、教育費の準備方法は一度決めたら固定するのではなく、子どもの成長や家計の状況変化に応じて定期的に見直すことをおすすめします。私自身、年に一度、家計全体の資産配分を棚卸しするタイミングを設けて、教育費として確保している資産の評価額や、進学までの残り年数、リスク資産の比率が想定通りかどうかを確認するようにしています。特に進学が近づいてきた子どもについては、当初の計画よりも前倒しでリスク資産の比率を下げるべきかどうかを毎年チェックすることが、想定外の相場変動から資産を守るうえで欠かせない習慣になっています。
こうした定期的な見直しの積み重ねが、結果として「学資保険にするか、新NISAにするか」という二択の議論よりもずっと大きな意味を持つと、実践してきた立場から強く感じています。制度や商品を選ぶこと自体はスタートラインに過ぎず、その後どう運用し、どう管理し続けるかの方が、教育費準備の成否を左右する本質的な部分だと思うのです。
まとめ
学資保険と新NISA、教育費準備の手段としてここまで比較してきましたが、私の結論は「学資保険は基本的に不要」というものです。学資保険は元本保証に近い安心感と、契約者に万が一のことがあった際の保障機能が魅力に見えますが、その保障コストが返戻率を押し下げており、インフレや円安が続く環境では実質的な資産の増え方はさらに弱くなります。契約者の保障は掛け捨ての生命保険で、元本保証で確保したい部分は預金や個人向け国債で、それぞれ単体で用意する方がコストは低く、柔軟性も高くなります。
私自身は4人の子の教育費を、家賃収入という安定したキャッシュフローを背景に、新NISAでの積立と預金・個人向け国債を軸に準備してきました。学資保険や低解約返戻金型終身保険には契約していません。貯蓄が苦手な方や元本割れへの不安が強い方であっても、証券口座の自動積立設定や、元本保証資産の比率を高めることで同様の安心感を再現できると考えています。
大切なのは、進学までの残り年数から逆算して資産配分を調整すること、生活防衛資金を教育費とは別に確保しておくこと、そして自分たち家族がどれだけのリスクなら安心して受け入れられるかを事前にすり合わせておくことです。学資保険という「商品」を選ぶかどうかより、この「自分たちの家庭にとっての最適な資産配分」を見極める視点こそが、教育費準備を成功させる一番の鍵だと感じています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・投資・法律判断は専門家にご相談ください。本記事で紹介した数値や制度内容は2026年時点の情報に基づく目安であり、税制や社会保険制度、金融商品の内容は今後変更される可能性があります。投資は元本を割り込むリスクを伴います。実際の学資保険や投資商品の選択にあたっては、最新の情報をご自身で確認のうえ、必要に応じてファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家にご相談のうえ、ご自身の判断と責任において行ってください。


