自宅の保険更新のたびに、火災保険と地震保険がセットになった証券を見ながら「このうちどこまでが控除の対象になるんだったか」と毎回確認し直しています。個人事業主として自宅を事業の一部として使っていたり、賃貸用の不動産を保有していたりすると、加入している火災保険・地震保険の件数も増えてくるため、この確認作業は意外と侮れません。
地震保険料控除は、生命保険料控除と混同されやすい制度ですが、対象になる保険の種類も控除額の計算方法もまったく異なります。何より誤解しやすいのが、「火災保険料は控除の対象外で、地震保険部分の保険料だけが対象になる」という点です。この記事では、地震保険料控除の基本的な仕組み、上限額、そして経過措置として残っている旧長期損害保険契約の扱いまで整理していきます。
地震保険料控除とは|火災保険は対象外、地震保険部分だけが対象
地震保険料控除は、自己または生計を一にする配偶者・親族が所有する居住用家屋や、生活に通常必要な家財を保険目的とした地震保険契約の保険料を対象にした控除です。ここで重要なのが、「居住用」であることが要件になっている点と、「地震保険部分」の保険料だけが対象になるという点です。
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火災保険と地震保険は、実務上セットで加入することが一般的です。地震保険は単独では加入できず、必ず火災保険とセットで契約する仕組みになっているため、多くの人が1枚の保険証券に火災保険料と地震保険料の両方が記載された形で契約しています。ところが所得控除の対象になるのは、あくまで地震保険部分の保険料だけです。火災保険そのものの保険料は、地震保険料控除の対象には一切含まれません。
保険証券や控除証明書には、通常「地震等相当分保険料」といった形で地震保険部分の金額が明記されています。この金額だけを確定申告書に記入する必要があり、証券に記載された保険料の総額(火災保険+地震保険)をそのまま記入してしまうと、過大な控除を申告してしまうことになるため注意が必要です。
事業用の物件については、原則として地震保険料控除の対象外です。あくまで「居住用家屋・生活に通常必要な家財」が対象であるため、賃貸経営をしている個人事業主が入居者のために掛けている物件の地震保険は、事業の必要経費として計上する扱いになり、地震保険料控除の対象にはなりません。自宅兼事務所のように、一部を事業用として使っている場合は、家事按分の考え方に近い形で居住部分にあたる保険料相当額のみが控除の対象になると考えられます。
地震保険料控除の上限額
地震保険料控除の上限額は、所得税で最大5万円です。年間の地震保険料(地震保険部分のみ)の全額が5万円以下であれば、その全額が控除の対象になります。年間の地震保険料が5万円を超える場合でも、控除額は5万円が上限となり、それ以上は増えません。
住民税における地震保険料控除の上限額は、所得税とは異なり最大2万5,000円です。住民税の控除額は、年間の地震保険料(地震保険部分のみ)の2分の1相当額(上限2万5,000円)という計算になります。所得税と住民税で上限額も計算方法も異なるため、両方をそれぞれ正しく計算する必要があります。
生命保険料控除のように区分ごとに細かい計算式があるわけではなく、地震保険料控除はシンプルに「地震保険部分の年間支払保険料」に基づいて計算されるため、控除証明書に記載された金額をそのまま確認すれば計算自体は難しくありません。
経過措置|旧長期損害保険契約の特例
地震保険料控除には、経過措置として「旧長期損害保険契約」に関する特例が残っています。これは2006年12月31日までに契約した、保険期間が10年以上で満期返戻金のある損害保険契約について、2007年以降も引き続き控除の対象として扱う制度です。
旧長期損害保険契約に該当する場合、年間支払保険料が1万円以下であれば全額、1万円超2万円以下であれば支払保険料の2分の1に5,000円を加えた金額、2万円を超える場合は一律1万5,000円が、所得税における控除額の上限になります。住民税では、年間支払保険料が5,000円以下であれば全額、5,000円超1万5,000円以下であれば支払保険料の2分の1に2,500円を加えた金額、1万5,000円を超える場合は一律1万円が上限です。
同一の契約について、地震保険料控除(本則)と旧長期損害保険契約の特例の両方の要件を満たす場合は、どちらか一方を選択して適用することになります。1つの証券に地震保険と旧長期損害保険の両方の要素が含まれているケースもあり、控除証明書にはどちらに該当するかが記載されていることが多いので、まずは証明書の表示を確認するのが確実です。
複数の契約がある場合、地震保険契約分と旧長期損害保険契約分をそれぞれ計算した上で合算しますが、合算後の所得税における控除額の上限は、やはり5万円です。
個人事業主が気をつけたいケース|自宅兼事務所・賃貸併用住宅
個人事業主の場合、自宅の一部を事務所として使っていたり、自宅と賃貸部分が一体になった賃貸併用住宅を保有していたりするケースがあります。こうした物件で地震保険に加入している場合、保険料の全額をそのまま地震保険料控除として申告してよいかどうかは、物件の使用実態によって変わってきます。
自宅の大部分を居住用として使い、一室だけを事務所として使っているような一般的なケースでは、実務上、保険料の全額を地震保険料控除として申告し、別途、事業割合に応じた保険料相当額を必要経費として計上する、という取り扱いがなされることもあります。ただし、事業用スペースの割合が大きい場合や、賃貸併用住宅で賃貸部分の床面積が居住部分を上回るような場合は、按分計算が必要になることがあります。物件の使用状況によって判断が分かれる部分でもあるため、按分の考え方に迷う場合は税理士に確認することをおすすめします。
賃貸物件を保有して大家業を行っている個人事業主の場合、入居者のために掛けている賃貸物件の地震保険料は、地震保険料控除の対象ではなく不動産所得の必要経費として計上します。自宅用の地震保険(控除対象)と賃貸物件用の地震保険(必要経費)を混同しないよう、保険証券ごとに整理しておくとよいでしょう。
控除証明書の確認方法と申告時の注意点
地震保険料控除証明書は、通常、年末調整・確定申告シーズンに合わせて損害保険会社から10月頃に送付されます。証明書には「地震等相当分」として地震保険部分の年間支払保険料が明記されているほか、旧長期損害保険契約に該当する場合はその旨と該当区分も記載されています。
確定申告書には、地震保険料控除として証明書に記載された金額をそのまま転記し、証明書自体を添付(e-Taxの場合は添付省略が可能なケースもあります)します。火災保険と地震保険がセットになった証券しか手元になく、地震保険部分の金額が分からない場合は、保険会社に問い合わせて控除証明書の再発行を依頼するとよいでしょう。
まとめ
地震保険料控除は、居住用家屋や生活に必要な家財を対象とした地震保険契約の保険料のうち、地震保険部分のみが対象になる控除で、火災保険料そのものは対象外です。所得税の上限額は5万円、住民税の上限額は2万5,000円で、生命保険料控除と比べるとシンプルな計算式になっています。2006年以前に契約した旧長期損害保険契約には経過措置として別の計算式が残っており、地震保険料控除との選択適用になる点にも注意が必要です。自宅兼事務所や賃貸併用住宅を持つ個人事業主は、居住用部分と事業用・賃貸用部分で控除対象と必要経費の扱いが分かれる点を意識しておきましょう。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、2026年時点で把握している税制の内容に基づいて記載しています。地震保険料控除の金額や制度は税制改正により変更される可能性があります。個別の税務判断については、税理士など専門家にご相談ください。


