4人の子を育てていると、教育資金の準備は1つの正解に頼れません。私は子どもが生まれるたびに学資保険に加入し、気づけば4本の契約を抱えていました。しかし数年前、そのうち2本を解約し、残る2本だけを継続する決断をしました。
学資保険は「解約すると損」というイメージが強く、実際に途中解約は元本割れするケースが大半です。それでも私が2本を解約したのには明確な理由があり、逆に残した2本には「これは新規に何かを買い足す判断ではなく、既に加入している契約をどう扱うか」という、あくまで消極的な判断基準がありました。この記事では、投資家としての20年の経験も踏まえながら、学資保険をどう取捨選択したのか、その考え方を具体的に整理してみます。
4本の学資保険を抱えることになった経緯
子どもが生まれるたびに、当時の私は「教育資金は学資保険で準備するもの」という認識で加入を続けていました。最初の子が生まれた頃は投資の知識も今ほど深くなく、「万一のときの保障もついていて、満期には教育資金として戻ってくる」という学資保険の分かりやすさに安心感を覚えていたのです。
結果として、子ども4人分でそれぞれ別の保険会社・別の商品性の学資保険に加入することになりました。返戻率(払い込んだ保険料の総額に対して受け取れる満期金の割合)も商品ごとにばらつきがあり、105%程度のものから98%を切るものまで混在していました。返戻率が100%を下回るということは、保障機能を含めた保険料として払っている以上、単純な貯蓄としては目減りしているということです。
4本すべての保険証券を並べて、契約時期・返戻率・保障内容・満期時期を一覧化してみたのが、見直しの出発点でした。子どもが増えるにつれて家計への保険料負担も無視できない規模になっていたため、「本当にこの4本すべてを継続する必要があるのか」を検証する必要があったのです。一覧化してみて驚いたのは、保険会社ごとに満期金の受け取り方(一括受取か、進学年ごとの分割受取か)や、保険料払込期間の設定もばらばらだったことです。加入したタイミングごとに担当者の提案を個別に受け入れてきた結果、家計全体としての一貫性のない保険ポートフォリオになっていたことに、この棚卸し作業で初めて気づかされました。
2本を解約した理由
解約を決めた2本には、共通する3つの問題がありました。
1つ目は返戻率の低さです。解約した2本はいずれも返戻率が100%を下回っており、契約時に付帯した医療特約や育英年金特約の保険料が上乗せされていたことが主な原因でした。特約部分は「保障」であって「貯蓄」ではないため、教育資金づくりという目的からすると効率が悪い設計になっていたのです。特約の内訳を細かく確認してみると、医療特約の保障範囲自体もそれほど手厚いものではなく、正直なところ「なんとなく付けておいた方が安心」という当時の判断が、長期的にはコストとして重くのしかかっていたことが分かりました。
2つ目は、他の保障との重複です。私自身、掛け捨て型の定期保険で死亡保障をすでに確保していました。学資保険についていた育英年金特約は、契約者(親)が死亡した場合に一定額の年金が支払われる仕組みですが、私の場合はすでに掛け捨て型の定期保険でカバーしている保障額と重複していました。同じリスクに対して複数の保険で二重に備えるのは、保険料の払い過ぎにつながります。すべての保険証券を横に並べて、「どのリスクに対して、どの保険が、いくらカバーしているか」を一覧表にまとめる作業を行った際、この重複が視覚的にはっきりと浮かび上がってきました。
3つ目は、資金の流動性です。学資保険は途中解約すると元本割れするだけでなく、満期や進学のタイミングまで資金が固定されてしまいます。一方で当時のわが家は、住宅ローンの繰り上げ返済や不動産投資の頭金など、まとまった資金を柔軟に動かしたい局面がありました。学資保険という「動かせないお金」を4本分抱えていることが、家計全体の資金繰りの柔軟性を下げていると感じたのです。
実際に解約したところ、解約返戻金は払込保険料の総額よりも数万円〜十数万円程度少ない金額になりました。この「解約損」は正直に言えば痛手でしたが、その後の資金を新NISAのつみたて投資枠などで運用に回すことで、長期的にはこの解約損を上回るリターンを見込める可能性があると判断しました。ただし投資には元本割れのリスクがあり、学資保険のような確定した満期金とは性質が異なる点は強調しておきたいと思います。
残した2本の判断基準
一方で、残した2本の学資保険には「解約しない」と判断する基準がありました。ただし先にはっきりさせておきたいのは、これは「学資保険という商品が優れているから残した」という話ではなく、「既に加入してしまっている契約を、今このタイミングで解約する積極的な理由が見当たらなかった」という、あくまで消極的・実務的な判断だったということです。
まず、返戻率が105%前後と比較的高水準で、加入時期が早かったため、予定利率(保険会社が保険料を運用する際に約束している利率)も現在の新規契約商品より有利な条件になっていました。低金利環境が長く続いた影響で、学資保険の予定利率は年々下がっており、今から同じ返戻率の商品に入り直すことはほぼ不可能な水準です。つまりここで解約すると、単に「今後受け取れたはずの上乗せ分」という含み益を自ら手放すだけになる、と判断したのが実情です。
次に、満期時期が進学のタイミングと明確に一致していたことも、保有継続を後押しする理由になりました。ただしこれも「学資保険が優れた商品だから」というより、「既に加入してしまっている契約を今解約すると、同水準の確実性・利回りを他の手段で再現するのは難しく、単に損失を確定させるだけになる」という消極的な理由に近いものです。実際、もし今から教育資金づくりを一から始めるとしたら、同じ「確実性」を求める資金は学資保険ではなく、預貯金(定期預金など)で確保する、というのが今の私の結論です。
さらに、特約部分がシンプルで、余計な保障の重複がなかったことも継続の決め手でした。育英年金特約などが付いていない、純粋に貯蓄性に寄った商品設計だったため、他の保険との重複リスクが低かったのです。
つまり残す・解約するの判断基準をまとめると、「解約すると実質的な損失(含み益の放棄を含む)が生じるかどうか」「他の保障と重複していないか」「満期時期が資金の使い道と一致しているか」の3点に集約されます。この3つの基準は、それぞれ独立した判断軸ではなく、相互に関連しています。含み益が大きくても保障が重複していれば見直しの対象になり得ますし、満期時期が合っていても解約による損失がほとんどなければ、他の手段への乗り換えを検討する価値があります。私はこの3つの基準を、それぞれ点数化して比較検討する簡易的なチェックシートを作成し、以後の保険の見直しにも活用しています。
このチェックシートでは、それぞれの基準を5段階で評価し、合計点数が一定以下の契約については見直し候補として黄色信号を灯す、という運用にしています。数字だけで機械的に判断するのは危険な面もありますが、少なくとも「なんとなく続けている」という状態を防ぎ、見直しの検討テーブルに乗せるきっかけとしては非常に有効だと感じています。実際、このチェックシートを使い始めてから、学資保険以外の生命保険や損害保険についても、同じ枠組みで定期的に評価するようになりました。なお、誤解のないように付け加えておくと、この判断はあくまで「既に加入している契約をどう扱うか」という話であり、これから新たに学資保険に加入することを勧める趣旨ではまったくありません。新規に教育資金づくりを始めるのであれば、今の私は学資保険ではなく、預貯金と新NISAの組み合わせを選びます。
教育資金づくりを学資保険だけに頼らない考え方
学資保険を一部解約したことで見えてきたのは、教育資金づくりは1つの商品に頼るのではなく、複数の手段を組み合わせたほうが柔軟性が高まるということでした。
学資保険の特徴は「確実性」です。満期まで保有すれば、契約時に決まった金額が確実に戻ってきます。市場の値動きに左右されないという性質はありますが、同じ「確実性」は預貯金でも実現でき、しかも学資保険のように途中解約による元本割れのリスクを負う必要もありません。この違いに気づいてからは、これから新たに確保する「確実に必要な部分」については、学資保険ではなく預貯金を基本にするようにしています。
一方で、新NISAのつみたて投資枠のような投資による資産形成は、長期的には預貯金を上回るリターンが期待できる可能性がある一方、元本保証がありません。この違いを理解した上で、私は「確実に必要な部分は預貯金で、余裕を持って準備できる部分は投資で」という役割分担の考え方に落ち着きました。詳しくは別記事「学資保険とジュニアNISA、教育資金づくりの比較」でも整理していますが、既に加入している2本の契約は保有を続けつつ、新規の教育資金づくりは預貯金と新NISAを中心に据える、というのが今の方針です。
この役割分担の考え方にたどり着くまでには、実は何度も試行錯誤がありました。当初は「学資保険をすべて解約して、全額を投資に回したほうが期待リターンは高いはずだ」と考えた時期もあります。しかし実際にシミュレーションをしてみると、進学時期に市場が下落していた場合のダウンサイドリスクが無視できないことが分かり、確実性の高い資金と、リターンを狙う資金を分けて持つという、いわば「預貯金と投資のハイブリッド設計」に落ち着いた経緯があります。
解約のタイミングで気をつけたこと
学資保険を解約する際には、いくつか注意した点があります。
まず、解約返戻金には税金がかかる場合があります。一時所得として扱われ、払込保険料総額との差額(解約返戻金-払込保険料総額-特別控除50万円)がプラスになる場合は課税対象になります。私の場合は解約返戻金が払込保険料を下回っていたため課税は発生しませんでしたが、返戻率の高い契約を解約する場合は、この税金の計算を事前に確認しておく必要があります。
次に、解約するタイミングです。学資保険は契約年数が進むほど返戻率が改善していく設計が一般的なので、加入して間もないタイミングで解約するほど損失が大きくなります。わが家の場合、加入から一定期間が経過していたため、解約損はある程度抑えられましたが、それでも「もっと早く見直していれば」という思いは正直あります。教育資金の設計は、できるだけ早い段階で一度棚卸しをすることをおすすめします。
最後に、解約後の保障の空白です。育英年金特約を解約すると、その分の死亡保障がなくなります。解約前に、他の保険で必要な保障額をカバーできているかを必ず確認してから手続きを進めました。この点を確認せずに解約してしまうと、万一の際の保障が不足するリスクがあるため、慎重な確認が欠かせません。私が実際に行ったのは、解約する保険の育英年金部分の保障額を書き出し、定期保険の保障額にその金額を上乗せできるか、保障額の見直しでどの程度まかなえるかを試算した上で、解約手続きを進めるという順番でした。保障の空白期間を作らないよう、新しい保障の手続きが完了してから解約する、という順序も意識しています。
保険の棚卸しを定期的に行う重要性
今回の学資保険の見直しを通じて、私が改めて実感したのは、保険というものは「一度加入したら見直さなくていい」ものではなく、家族構成やライフステージの変化に応じて定期的に棚卸しをすべきものだということです。
子どもが生まれるたびに保険に加入するのは自然な流れですが、その都度、既存の保険との整合性を確認する作業を怠っていたことが、4本もの学資保険を抱える結果につながりました。今では、年に一度、すべての保険証券を並べて保障内容と保険料を確認する時間を設けるようにしています。この棚卸しの際には、返戻率や保障内容だけでなく、そもそも今の家計状況でその保険料を払い続けることが妥当かどうかも、あわせて確認するようにしています。
棚卸しの具体的なやり方としては、まず全契約の保険証券をスキャンしてデータ化し、契約者・被保険者・保険期間・払込方法・返戻率・特約内容を一覧の表にまとめています。表計算ソフトで一覧化しておくと、契約ごとの比較がしやすいだけでなく、次に見直すべきタイミング(払込満了時期や、返戻率が改善するタイミングなど)もひと目で把握できるようになります。この一覧表は、保険の見直しだけでなく、万一の際に家族が保険の全体像を把握するための資料としても役立つと考え、家族で共有できる場所に保管するようにしています。
また、保険会社から届く「契約内容のお知らせ」といった通知類も、以前は流し読みして終わっていましたが、今では棚卸しのタイミングで必ず内容を確認し、返戻率や特約の見直し案内がないかをチェックする習慣をつけました。保険会社側から積極的に有利な見直し案内が来ることは少ないため、こちらから定期的に確認しにいく姿勢が欠かせないと感じています。
学資保険を解約した後、その資金の受け皿として何を選ぶかも重要な検討事項でした。私が実際に比較検討した選択肢は、大きく分けて3つありました。
1つ目は、すでに触れた新NISAのつみたて投資枠です。長期・積立・分散投資による資産形成を、非課税枠を活用しながら進められる点が最大の魅力です。ただし、進学時期という明確な期限がある資金である以上、値動きのリスクをどこまで許容できるかを慎重に見極める必要があります。
2つ目は、単純な預貯金です。定期預金や、ネット銀行の金利がやや高めの普通預金などを活用し、元本割れのリスクを一切取らずに教育資金を積み立てる方法です。利率は低いものの、確実性という点では新たに学資保険に加入するよりもシンプルで分かりやすい選択肢です。私は、進学直前の1〜2年分の資金についても、この預貯金での確保を基本方針にしています。
3つ目は、外貨建てや変額の保険商品です。これらは為替や運用実績によって将来の受取額が変動する商品で、円建ての学資保険よりも高いリターンを狙える可能性がある一方、リスクも相応に高くなります。私自身はこの選択肢についてはリスクの大きさを考慮し、教育資金の主軸としては採用していません。
これらの選択肢を比較する際、私が重視したのは「その資金をいつ使う予定か」という時間軸でした。進学まで残り年数が長い資金ほど投資の比率を高め、残り年数が短い資金ほど確実性を優先する、という考え方を徹底することで、解約した学資保険の資金をどこに振り向けるべきかが自然と定まっていきました。
もう一点、意外と見落とされがちなのが、解約によって生まれた「毎月の保険料負担の軽減分」をどう扱うかという視点です。学資保険を解約すると、それまで保険料として引き落とされていた金額が、毎月の家計に「浮いたお金」として戻ってきます。私はこの浮いた分を、そのまま生活費に紛れ込ませるのではなく、機械的に投資用の口座へ自動振替する設定に変更しました。解約によって手元に得られた一時金だけでなく、その後の毎月のキャッシュフロー改善分まで含めて教育資金づくりに再投資する、という視点を持つことで、解約損を長期的に取り戻すスピードを早められると考えています。
まとめ
学資保険4本のうち2本を解約し、2本を残すという判断は、解約による実質的な損失・保障の重複・資金の使い道という3つの軸で数字を並べて検証した結果でした。学資保険は「入ったら満期まで持つもの」というイメージが強いですが、家計の状況や子どもの人数、他の保険との重複状況によっては、途中で見直す価値は十分にあると感じています。
なお、残した2本はあくまで「既に加入している契約を今解約すると損失が確定するため保有を続けている」というものであり、これから新たに学資保険に加入することを勧める内容ではありません。今から教育資金づくりを始めるのであれば、私自身は預貯金と新NISAの組み合わせを選びます。
4人分の教育資金という大きなテーマに対して、預貯金と投資をどう組み合わせるかは正解が1つではありません。大切なのは、それぞれの手段の強みと弱みを理解した上で、自分の家計とライフプランに合わせて定期的に棚卸しをすることだと思います。
保険の解約というのは、どうしても「もったいない」という感情が先に立ちがちなテーマです。しかし、感情ではなく数字で判断基準を明確にし、残すべきものと見直すべきものを切り分けることで、家計全体の効率は着実に改善していきます。4人の子を育てる中で、この学資保険の棚卸しは、教育資金づくり全体を見つめ直す大きなきっかけになったと感じています。
免責事項
本記事は筆者個人の経験に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品や解約・継続を推奨するものではありません。学資保険の返戻率や税務上の取り扱い、解約による損得は契約内容や個々の状況によって大きく異なります。保険の見直しや解約を検討される際は、必ず保険会社や税理士、ファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談のうえ、ご自身の判断で行ってください。


