外国税額控除、確定申告でどこまで取り戻せるか実例

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米国株や海外ETF、外国株式に投資する投資信託を保有していると、配当金や分配金から「現地の税金」が天引きされていることに気づく人は多いと思います。さらに日本国内でも約20%の税金が課される結果、同じ所得に対して二重に税金がかかってしまいます。これを調整するための制度が「外国税額控除」です。

個人事業主として20年、確定申告を自分でやってきた立場から言うと、外国税額控除は制度の存在自体を知らないまま何年も見過ごしてしまいやすい控除のひとつです。私自身、投資を始めてからしばらくの間はこの控除の存在を知らず、取り戻せたはずの税金を放置していた時期がありました。この記事では、外国税額控除の仕組みと、確定申告でどこまで取り戻せるのかを、具体的な数字を使って整理していきます。

外国税額控除とは何か、なぜ必要なのか

外国税額控除は、海外で得た所得に対して現地国で課税され、さらに日本でも課税される「二重課税」を調整するための制度です。所得税法上、居住者(日本国内に住所がある人)は原則として全世界所得に課税されますが、その所得がすでに海外で課税済みである場合、日本の所得税・住民税から一定額を差し引くことで、二重課税の負担を軽減する仕組みになっています。

代表的なケースが、米国株式や米国ETFの配当金です。米国では配当金に対して原則10%(租税条約適用後の税率、銘柄や条約の適用状況により異なります)の税金が現地で源泉徴収されます。その上で、日本国内でも配当金に対して約20.315%の税金がかかるため、何もしなければ配当金の実質的な税負担は合計で30%近くになってしまいます。外国税額控除を使えば、この現地課税分を日本の税額から差し引くことができ、税負担を本来あるべき水準に近づけられます。

外国株式・海外ETFにかかる二重課税の仕組み

具体的な流れを整理すると、米国株の配当金を受け取る場合、まず米国で現地の税金(源泉徴収)が差し引かれ、その残額が証券口座に入金されます。日本国内の証券会社を通じて保有している場合、この時点ですでに日本側の税金(約20.315%)も源泉徴収されているのが一般的です。つまり、配当金は「現地課税→日本課税」という二段階で税金が引かれた後の金額が、手取りとして入金されている状態です。

外国税額控除は、このうち現地で課税された分について、確定申告を行うことで日本の所得税・住民税から差し引く(控除する)ことができる制度です。ただし、無条件に全額が戻ってくるわけではなく、「控除限度額」という上限が設けられています。

外国税額控除の計算方法(控除限度額の考え方)

外国税額控除の控除限度額は、おおまかに次のような考え方で計算されます(実際の計算式はより細かく、国税庁の様式に従って算出する必要があります)。

所得税の控除限度額の目安 = その年の所得税額 ×(国外所得金額 ÷ 所得総額)

この式が示す通り、その年の所得税額や国外所得の割合によって控除できる上限が変わってきます。所得税で控除しきれなかった分は、一定の範囲で住民税からも控除できる仕組みがあります(住民税の控除限度額は、さらに所得税の控除限度額の一定割合として計算されます)。

個人事業主の場合、事業所得が多い年は所得税額自体が大きくなるため控除限度額も大きくなりやすい一方、赤字に近い年は所得税額が小さく、控除限度額も小さくなるため、外国税額控除を使い切れないことがあります。この点は、給与所得者と個人事業主とで所得の波が異なるため、意識しておく必要があります。

実例で試算:配当金でどこまで取り戻せるか

具体的な数字で試算してみます。年間の米国株配当金が10万円だったとします(あくまで説明のための仮の数字です)。

  • 米国での源泉徴収(現地課税、目安10%):約1万円
  • 手取り入金額:約9万円
  • 日本国内での源泉徴収(約20.315%、手取り9万円に対してではなく、税引前の配当金総額に対して課税されるのが原則):おおよそ2万円前後

この場合、確定申告(総合課税または申告分離課税を選択したうえで外国税額控除を申告)を行うことで、米国で課税された約1万円のうち、控除限度額の範囲内であれば全額または一部が所得税・住民税から差し引かれます。所得水準や他の所得との兼ね合いにもよりますが、控除限度額に余裕がある会社員や個人事業主であれば、現地課税分のほぼ全額を取り戻せるケースも珍しくありません。

保有している米国株・海外ETFの銘柄数が多く、配当金の合計額が大きくなるほど、確定申告をするかしないかで手元に残る金額の差は無視できない規模になっていきます。我が家の場合、複数の米国ETFを長期保有しているため、確定申告をする年としない年とで、年間数万円単位の差が出ることもあります。

NISA口座では外国税額控除が使えない、という注意点

ここで重要な注意点があります。NISA口座(新NISA)で保有している外国株式・海外ETFについては、日本国内の税金(約20.315%)は非課税になりますが、現地国での源泉徴収(米国株なら10%程度)は非課税になりません。そして、NISA口座は「そもそも日本で課税されていない所得」を対象とする制度のため、外国税額控除の対象にもなりません。

つまり、NISA口座で米国株の配当金を受け取ると、現地課税分の10%程度は取り戻す方法がなく、そのまま負担することになります。これはNISA口座で米国株・海外ETFに投資する際に見落とされがちなデメリットで、「NISAだから配当金も完全非課税」と思い込んでいると、実際には現地課税分だけ目減りしている、ということに気づきにくい点です。

この特性を踏まえると、配当金を多く出す米国株・海外ETFは課税口座で保有し、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う無配当・低配当の資産はNISA口座で保有する、という使い分けを検討する余地があります。もちろん非課税枠の使い方には他の考慮要素も多いため、一概にどちらが正解とは言えませんが、外国税額控除の観点からはこうした違いがある、ということは知っておいて損はありません。

確定申告の実務:必要書類と申告書の書き方のポイント

外国税額控除を確定申告で申請する際には、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」や「支払通知書」など、外国で源泉徴収された税額が確認できる書類が必要になります。ネット証券であれば、年間の取引報告書をオンラインでダウンロードでき、外国所得税額が記載されている項目を確認します。

確定申告書の「外国税額控除に関する明細書」に、国外所得の金額や外国で課された税額を記入し、控除限度額の計算を行います。この明細書の作成が、外国税額控除の手続きの中でいちばん手間のかかる部分です。慣れないうちは、国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内に沿って入力していけば、自動的に控除限度額を計算してくれる仕組みになっているため、そこまで身構える必要はありません。

個人事業主として20年、事業所得や不動産所得の確定申告に慣れている立場からすると、外国税額控除の明細書作成は、事業所得の帳簿作成に比べればずっと簡単な部類だと感じています。最初の1回さえ乗り越えれば、翌年以降は同じ流れで進められます。

控除しきれなかった分はどうなるか(繰越控除)

その年の所得税額や国外所得の割合の関係で、外国税額控除の限度額を超えてしまい、控除しきれない現地課税分が出ることもあります。この場合、控除しきれなかった外国所得税額や、逆に限度額に余裕があった年の余裕分は、一定の要件のもとで3年間繰り越すことができる仕組みがあります。

つまり、ある年に控除限度額を使い切れなかった場合、その余った枠を翌年以降の控除しきれない外国税額に充てる、あるいは逆に控除しきれなかった外国税額を、翌年以降に余裕が出た年の枠で消化する、という調整が可能です。単年度だけで判断せず、複数年にわたって記録を残しておくことが、この繰越の制度を活用するうえで重要になります。

総合課税と申告分離課税、どちらを選ぶべきか

配当所得の確定申告には「総合課税」「申告分離課税」「申告不要」の3つの選択肢があります。外国税額控除を受けるためには確定申告が必須ですが、その際に総合課税と申告分離課税のどちらを選ぶかによって、有利不利が変わってきます。

申告分離課税を選ぶと、税率は一律約20.315%のままですが、上場株式の譲渡損失との損益通算や繰越控除が可能になります。一方、総合課税を選ぶと、他の所得(事業所得や給与所得など)と合算されるため、所得水準によっては税率が上がる(累進課税のため)こともあれば、配当控除(国内株式の配当に適用される制度で、外国株式の配当は対象外です)が使える場合もあります。

個人事業主で事業所得がそれなりにある場合、総合課税を選ぶと合算後の税率が上がってしまい、かえって不利になることが多いため、私は基本的に申告分離課税を選んで外国税額控除だけを申請する形にしています。どちらを選ぶべきかは所得水準や他の所得の状況によって変わるため、シミュレーションをしたうえで判断することをおすすめします。

我が家の確定申告での工夫

4人の子どもを育てながら個人事業主として確定申告をしていると、正直なところ、外国税額控除の明細書作成にじっくり時間を割ける日はそう多くありません。そこで我が家では、年間を通じて証券口座の年間取引報告書や配当金の支払通知書をひとつのフォルダにまとめておき、確定申告シーズンに慌てて過去1年分を探し回らなくて済むようにしています。

また、事業所得の帳簿づけと同じタイミングで、四半期ごとに海外配当金と源泉徴収額を簡単な表にメモしておくようにしてから、確定申告書等作成コーナーへの入力がかなり楽になりました。以前このブログで書いた「e-Taxでの確定申告完全マニュアル」でも触れましたが、マイナンバーカード連携を済ませておけば、外国税額控除の明細書も含めてオンラインで完結できるため、税務署に出向く手間もかかりません。「消費税の簡易課税制度の事業区分」の記事とあわせて、確定申告関連の書類は年間を通じてこまめに整理しておくことを強くおすすめします。

まとめ

外国税額控除は、海外株式・海外ETFの配当金にかかる「現地課税+日本課税」の二重課税を調整するための制度で、確定申告をすることで現地課税分の一部または全部を取り戻せる可能性があります。控除限度額はその年の所得税額や国外所得の割合によって変わるため、所得の波がある個人事業主は特に、年ごとの控除限度額を意識しておく必要があります。NISA口座では現地課税分を取り戻せない点にも注意しつつ、証券会社の年間取引報告書を確認し、確定申告書等作成コーナーを活用しながら、毎年の申告に組み込んでいくことをおすすめします。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税額控除の適用可否や還付額を保証するものではありません。税率や控除限度額の計算方法、租税条約の適用状況は国や制度改正によって変わる可能性があります。実際の確定申告にあたっては、税理士または所轄の税務署にご相談のうえ、最新の制度を確認してください。

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