積立投資の一時停止・再開を繰り返すとどれだけ損をするか|シミュレーションで検証

投資・資産運用

「今月だけ積立を止めようか」その一言が招く数字を計算してみた

個人事業主として20年、投資家として20年、そして兼業大家としても20年近くやってきた私だが、正直に言うと積立投資を「今月だけ止めよう」と思った瞬間は一度や二度ではない。売上が落ち込んだ月、大きな設備投資が重なった月、賃貸物件の給湯器が壊れて修繕費が飛んだ月。そのたびに証券会社のアプリを開き、積立設定の画面で「一時停止」のボタンに指をかけたことがある。

会社員のように毎月決まった給与が入る立場ではないので、この感覚はよくわかる。手元のキャッシュが薄くなると、真っ先に削りたくなるのが「今すぐ使わないお金」である積立投資だ。生活費は削れない、事業の仕入れも止められない、となると残るのは投資に回している分、というわけだ。

ただ、シングルファーザーとして4人の子どもを育てながら資産形成を続けてきた立場で振り返ると、この「一時停止」を安易に繰り返すことがどれだけ将来の資産額に響くのかを、感覚ではなく数字で理解しておく必要があると強く感じている。今回は、積立投資を一時停止し、再開することを繰り返した場合に、資産形成にどれくらいのインパクトが出るのかをシミュレーションベースで整理してみたい。

止めた経験があるからこそわかる「一時停止」のリアルな理由

私の場合、積立を止めたくなる理由はだいたい3パターンに集約される。1つ目は事業収入の波だ。個人事業主は毎月の売上が一定ではない。繁忙期の後にぽっかり谷が来ることも珍しくなく、その谷のタイミングで「今月の積立分を事業の運転資金に回したい」という誘惑が生まれる。

2つ目は不動産賃貸業でのイレギュラー出費だ。エアコンの故障、外壁の修繕、退去時の原状回復費用など、大家業は「まとまった金額が急に飛んでいく」場面が定期的にある。こうした出費が重なると、投資用のキャッシュフローに手をつけたくなる。

3つ目は、子育て特有の支出タイミングだ。4人の子それぞれの進学や部活動、行事のタイミングで支出が集中することがある。教育費というのは事前に見えていても、実際に請求が来ると想像以上にまとまった額になることが多い。

こうした事情はどれも「もっともらしい理由」であり、実際に一時的な資金繰りとしては合理的な判断であることも多い。問題は、この「一時停止」が1回で終わらず、思い出したように再開と停止を繰り返してしまうケースだ。ここに落とし穴がある。

シミュレーションの前提条件を整理する

ここからは、積立投資を継続した場合と、一時停止・再開を繰り返した場合とで、資産形成にどれくらいの差が出るのかを試算してみる。あくまで一つの仮定に基づく試算であり、実際の相場は右肩上がりに動き続けるわけではないという点は前提として押さえておきたい。

今回は次のような条件でシミュレーションを組んでみた。

  • 毎月の積立額:3万円
  • 積立期間:20年間(240ヶ月)
  • 想定利回り:年率5%(税引前・複利)
  • 比較対象:継続積立/1回だけ半年間停止/複数回(合計3回、各半年間)停止

この条件は、あくまで長期の平均的な期待値として一般的に語られる水準を仮置きしたものであり、将来の運用成果を保証するものではない。実際には相場の上下によって結果は大きく変わり得る点はご承知おきいただきたい。

一時停止1回でどれくらい差がつくのか

まずは、20年間のうち半年間(6ヶ月)だけ積立を停止し、その後は淡々と再開して継続したケースを比較する。停止期間中は当然、拠出も運用収益の積み上げも止まる。

ケース 拠出総額 停止期間 20年後の評価額(概算) 継続ケースとの差
ケースA:継続積立 720万円 なし 約1,233万円 基準
ケースB:1回停止(半年) 702万円 6ヶ月 約1,199万円 約▲34万円

拠出額の差は18万円しかないのに、20年後の評価額の差は約34万円になる。これは、停止期間中に本来積み立てられていたはずの元本が、その後20年近く複利で運用される機会を失っているためだ。つまり「止めた金額そのもの」よりも「止めたことで働かなくなった時間」の方が効いてくる。

停止・再開を繰り返すとダメージは加速度的に大きくなる

次に、20年間の中で半年間の停止を3回繰り返した場合(合計停止期間18ヶ月)を見てみる。事業の資金繰りが厳しくなるたびに止め、落ち着いたら再開する、という私自身の経験に近いパターンだ。

ケース 拠出総額 停止期間(合計) 20年後の評価額(概算) 継続ケースとの差
ケースA:継続積立 720万円 なし 約1,233万円 基準
ケースC:3回停止(計18ヶ月) 666万円 18ヶ月 約1,120万円 約▲113万円

拠出額の差は54万円なのに対し、最終的な評価額の差は113万円にまで拡大している。停止1回あたりのダメージが単純に3倍になるのではなく、それ以上に効いてくるのは、停止のタイミングが積立期間の早い時期に来るほど、その後の運用期間が長く失われるからだ。特に若いうちに積立を止めてしまうと、複利の効果が最も大きく働くはずだった期間をまるごと失うことになる。

私自身、事業を始めた当初の身軽なうちにこそ長期のインパクトが大きいと知っていれば、もう少し違う資金繰りの工夫をしていたかもしれないと感じることがある。

なぜ「止めて再開」がここまでダメージになるのか

この結果を見ると、単純に拠出額が減った分以上に評価額が落ち込んでいることに気づく。理由は主に3つある。

1つ目は複利の時間効果だ。積立投資の複利は、運用期間が長くなるほど後半に効いてくる。序盤に拠出した元本ほど、長い年月をかけて増えていく時間を持つ。逆に言えば、序盤の停止は「増える時間」を丸ごと削ることになる。

2つ目はドルコスト平均法の機会損失だ。積立投資の強みの一つは、価格が下がった局面でも淡々と買い続けることで平均取得単価を下げられる点にある。停止している間に相場が下落していれば、本来「安く買えたはずの局面」を逃してしまう。逆に停止している間に相場が上昇していれば買い損ねただけで済むが、いずれにせよ「機械的に買い続ける」という仕組みの恩恵を自ら手放していることになる。

3つ目は再開のタイミングのブレだ。人間の心理として、相場が下がっている時ほど再開をためらい、相場が過熱してから「そろそろ大丈夫だろう」と再開しがちだ。結果として、下落局面で買えず上昇局面で買い始めるという、本来のドルコスト平均法とは逆の動きになりやすい。事業のキャッシュフローに余裕ができるタイミングと、相場が落ち着いて見えるタイミングが重なりやすいことも一因だと感じている。

個人事業主・大家目線で「止めていい時」と「止めるべきでない時」の線引き

とはいえ、私は「何があっても積立を止めるな」と言いたいわけではない。事業のキャッシュフローが厳しい時に無理をして積立を継続し、事業そのものが立ち行かなくなっては本末転倒だ。大切なのは、止める前に「これは本当に止める以外の選択肢がないのか」を一度立ち止まって考えることだと思っている。

私が実務の中で使っている判断基準を整理すると次のようになる。

  • 生活防衛資金(生活費の6ヶ月〜1年分程度)がまだ十分に確保できていない段階なら、積立額を減らしてでも現金クッションの構築を優先する
  • 事業のキャッシュフローが一時的なもので、数ヶ月以内に回復の見込みが立っている場合は、積立額を最低限まで減額して「ゼロにしない」ことを優先する
  • 賃貸物件の修繕費など、単発の大きな出費が原因の場合は、家賃収入の中に修繕積立枠を別途持っておき、投資資金には手をつけない設計にする
  • 本当に事業存続に関わるレベルの資金不足であれば、迷わず積立を止める。ただし「いつ再開するか」を先に決めておく

特に重要だと感じているのは最後の「いつ再開するかを先に決める」という部分だ。「落ち着いたら再開する」という曖昧な決め方だと、再開のタイミングをずるずる先延ばしにしてしまいやすい。私自身、カレンダーに再開予定日を入れておくようにしてから、停止期間が長引くことがなくなった。

止めずに続けるための仕組み化 – 事業と家計を分けて考える

個人事業主で家族を養う立場だと、事業の資金繰りと家計、そして子どもたちの教育費までが一つの財布の中で混ざりやすい。この状態だと、少し資金が厳しくなるたびに積立投資が「調整弁」として真っ先に犠牲になってしまう。

私が実践している工夫は、事業用の口座と生活防衛資金の口座、そして積立投資用の口座を明確に分けることだ。積立投資の引き落とし口座には、常に半年分程度の積立予定額をあらかじめプールしておき、事業の資金繰りが一時的に厳しくなっても、その口座には手をつけないというルールを自分に課している。

また、賃貸経営の面では、家賃収入の一部を「修繕積立」として別建てで確保しておくことで、突発的な修繕費が発生しても投資資金に影響が出ない設計にしている。大家業を20年近く続けていると、給湯器やエアコンといった設備は必ずどこかで壊れるという前提で動いた方がいいと実感している。突発ではなく「いずれ来る予定の出費」として扱うことで、積立投資を止める理由がひとつ減る。

子どもの教育費についても同様で、進学のタイミングなどある程度予測できる支出は、積立投資とは別枠の教育費用口座で準備しておくことで、投資の継続を妨げないようにしている。4人それぞれの成長に合わせて必要になる時期は異なるが、事前に見積もりを立てておくことで、直前になって積立を止めるという事態を避けやすくなる。

それでも相場急落時に積立を止めたくなったら

資金繰りの問題とは別に、相場が大きく下落した局面で「これ以上損を膨らませたくない」と積立を止めたくなることもあるだろう。だが今回のシミュレーションが示す通り、積立投資の本来の強みは下落局面でこそ発揮される。下落時に買い続けることで平均取得単価が下がり、その後の回復局面でリターンが押し上げられるという仕組みだからだ。

相場が不安な時ほど、金額そのものよりも「続けているかどうか」が将来の評価額に効いてくる。私自身も相場が大きく崩れた局面で不安になった経験はあるが、積立額を減額してでもゼロにはしない、という方針を守ることで、結果的に長期の資産形成のペースを保てていると感じている。

よくある質問

Q1. 積立を1〜2ヶ月止めるだけなら、そこまで気にしなくても大丈夫ですか。

短期間・1回限りであれば、今回のシミュレーションで見た通り影響は限定的な範囲にとどまることが多い。ただし「1〜2ヶ月のつもりが結局半年になった」というケースは実務上よくあるので、止める際は再開日をあらかじめ決めておくことをおすすめする。

Q2. 積立額を減らすのと、一時停止するのとではどちらがましですか。

今回の試算からも読み取れる通り、拠出をゼロにするより、金額を減らしてでも継続する方が長期的な複利の恩恵を受けやすい。資金繰りが厳しい時ほど「全部止める」ではなく「最低額まで減らす」という選択肢を検討する価値がある。

Q3. 相場が下がっている時に積立を止めるのは合理的な判断ではないですか。

感覚的にはそう思えるが、積立投資の仕組み上は逆効果になりやすい。下落局面は口数を多く買える局面でもあるため、そこで停止すると本来得られたはずの安値での買い付け機会を逃すことになる。相場動向を理由にした停止・再開は、タイミングを読み違えるリスクが高い点に注意したい。

Q4. 個人事業主やフリーランスは会社員より積立を止めやすい環境だと思いますが、対策はありますか。

収入の波が大きい働き方だからこそ、積立投資用の資金を事業の運転資金と完全に分離しておくことが有効だと感じている。半年分程度の積立予定額を専用口座にプールしておくなど、資金繰りの波に投資の継続が左右されない仕組みを先に作っておくことが、長期的には最も効果的な対策になる。

タイトルとURLをコピーしました