こんにちは、シンパパ資産設計士です。妻を病気で亡くしてから4人の子を一人で育てながら、20年間個人事業主として、20年間大家として、そして20年間投資家として歩んできました。今日からしばらく、私自身が長年「投資の前提」として子どもたちに伝えたいと思ってきたテーマ——「なぜアメリカは世界最大の経済大国になったのか」——について、全15話のシリーズとして書いていこうと思います。その第1話です。
この記事は投資助言ではなく、4児のシングルファーザーで個人投資家・大家でもある私の個人的な見解です。最終的な投資判断はご自身でお願いします。それでも、なぜ私が新NISAのつみたて枠でオルカン(全世界株式)やS&P500を選んでいるのか、その「土台」となる国家理解の話を、今回はじっくり書いてみます。
📚 この記事は連載の第1話です。アメリカから学ぶ資産形成シリーズ【全15話まとめ】で全体像を、歴史・地政学×資産形成 完全ガイドで5シリーズ横断の地図をご覧いただけます。
- 導入:私がオルカン・S&P500を買う前に「アメリカ」を学び直した理由
- 世界GDPランキングの推移:覇権はどう動いてきたか
- イギリスからアメリカへ:覇権はなぜ移動したのか
- 戦争と経済:本土無傷だったアメリカの圧倒的優位
- 移民国家であることの強み:人口・多様性・イノベーション
- 大陸国家のメリットとデメリット
- 日本との比較:島国・資源輸入依存・少子高齢化
- シェール革命とエネルギー自給:アメリカが「資源輸入国」から変わった日
- ドル基軸通貨の歴史的経緯:なぜ「ドル」が米国株の強さに効くのか
- 私が20年で経験した米国株の暴落と回復:4児を抱えて、どう乗り切ったか
- 日本人がドル資産を持つ意味:円安局面で家計をどう守ったか
- 結論:資源・人口・制度の三拍子が揃った国だった
- 4児パパ視点:子に「アメリカが強い理由」をどう伝えるか
- シリーズ第2話以降の予告:全15話で「アメリカの強さ」を分解する
- 資産形成への教訓:強い国を理解した上で選ぶ
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導入:私がオルカン・S&P500を買う前に「アメリカ」を学び直した理由
20代のころ、私は何の勉強もせずに日本株の個別銘柄を売買していました。利益も損も出しましたが、20年経って手元に残った確信は1つだけです。それは「銘柄を選ぶ前に、どの国に長期で資金を預けるかを選ぶほうがずっと大事だった」ということです。
私自身、20年間個人事業主をやってきて、景気の波がいかに自分の事業を揺らすかを肌で知っています。20年大家業をやってきて、家賃の上がり下がりや空室率がいかに国の景気と人口動態に左右されるかも知っています。だからこそ、株式投資においては「その国の構造そのものが強いかどうか」を見たいと思うようになりました。
今、新NISAのつみたて投資枠で人気を集めているのはオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)と、S&P500連動の投信です。オルカンの中身も、約6割はアメリカ株です。つまり私たちは知らず知らずのうちに「アメリカ」に多くを預けているのです。それなら、預け先の国を1度きちんと学んでから預けたい。これが、このシリーズを書く動機です。
4児の父として、子どもたちにも将来「なぜパパはオルカンを毎月積み立ててたの?」と聞かれたとき、「なんとなく流行っていたから」とは答えたくありません。「アメリカという国はこういう理由で強いんだよ」と、自分の言葉で説明できる父親でありたいのです。
世界GDPランキングの推移:覇権はどう動いてきたか
まず、ざっくりとした世界の経済大国の移り変わりを、私の理解の範囲で整理してみます。歴史学者ではないので細部はご容赦ください。あくまで投資家としての「ざっくり地図」です。
| 時代 | 世界の経済の中心 | 背景となる出来事(私の理解) |
|---|---|---|
| 17〜18世紀 | オランダ・イギリス | 東インド会社、海洋貿易、近代金融の原型 |
| 19世紀 | イギリス(大英帝国) | 産業革命、世界の工場、ポンド基軸通貨 |
| 20世紀前半 | アメリカが台頭 | 第一次・第二次世界大戦を経て本土無傷で生産力が突出 |
| 20世紀後半 | アメリカ独走、日本・西独が追走 | ブレトン・ウッズ体制、ドル基軸、冷戦勝利 |
| 21世紀 | アメリカ首位継続、中国が2位に | IT革命、巨大プラットフォーム企業の出現 |
名目GDPで見ると、20世紀初頭にアメリカはすでにイギリスを抜いて世界1位になっていました。第二次世界大戦直後、アメリカ1国で世界GDPの約40〜50%を占めていたとも言われています。1国でそこまで占めた国は、人類史でもそう多くないはずです。
その後、日本やドイツの戦後復興、中国の台頭でシェアは下がっていきますが、それでも2026年の今もアメリカは名目GDP世界1位を維持しています。2位の中国を追われる場面もありながら、なお首位に立ち続けている。これは個人投資家として軽視できない事実だと、私は感じています。
イギリスからアメリカへ:覇権はなぜ移動したのか
19世紀、世界の中心はイギリスでした。産業革命を世界で最初に実現し、蒸気機関、鉄道、繊維工業を背景に「世界の工場」と呼ばれました。ロンドンは世界金融の中心地で、ポンドが事実上の基軸通貨でした。
その地位がアメリカに移っていく決定的な引き金は、私の理解では2度の世界大戦だったと考えています。理由は単純で、戦場になった国は工場・住宅・インフラを破壊され、人口も大きく失います。一方、アメリカ本土はほぼ無傷でした。戦時中はむしろ欧州向けの物資供給で生産力が拡大し、戦後は世界中の復興需要を1国で受け止めることになります。
金融の中心も移った
1944年のブレトン・ウッズ会議で、世界の通貨体制は金 → ドル → 各国通貨という形に整理されました。事実上、ドルが世界の基準通貨になったのです。1971年のニクソン・ショックで金との交換は停止されましたが、ドル基軸の構造そのものは現在まで続いています。基軸通貨を持つ国の強さは、20年投資をしてきた私から見ても、想像以上に大きいものです。
覇権移動は短期では起こらない
大英帝国の最盛期は19世紀半ば、アメリカが完全に1位になったのは20世紀前半。覇権の移り変わりは、人間の寿命1回分くらいの時間軸で起きます。投資家としては「ここ5年でアメリカが終わる」というような短期論には、私は基本的に乗りません。
戦争と経済:本土無傷だったアメリカの圧倒的優位
不謹慎な書き方になりますが、純粋に経済構造の話として書きます。20世紀の2度の大戦で、ヨーロッパ・日本・ソ連は本土が戦場となり、生産設備と労働人口を大きく失いました。一方、アメリカは本土が戦場にならず、しかも戦時中に重化学工業・航空産業・自動車産業を一気に拡大させました。
結果として戦後のアメリカは、
- 世界中の復興需要を受注できる工業国
- 世界中の避難資金を受け入れられる金融国
- 核兵器と航空戦力を持つ軍事大国
- 大学・研究機関に欧州の優秀な人材が大量流入した知の集積地
これらを一度に手にしました。ここまで条件が揃った国は近代以降、他に思いつきません。私は子どもたちに歴史を話すとき、「戦争は人類にとってどれも悲劇だが、結果としてアメリカは産業構造の世代交代を一気に進めることになった」と説明するようにしています。
移民国家であることの強み:人口・多様性・イノベーション
アメリカのもう1つの強さは、移民国家であることです。建国以来、ヨーロッパ・アフリカ・アジア・中南米から人が流入し続けて今の3.3億人超の人口になっています。先進国としてはめずらしく人口がまだ増えている国です。
20年大家業をしてきた私から見ると、これは決定的に大きい要素です。家賃を払う人が増え続ける国と、減り続ける国では、不動産でも株でも基礎体力がまるで違います。
イノベーションを生むのも移民
シリコンバレーの主要企業の創業者・経営者には、移民1世・2世が驚くほど多いと言われます。グーグル、テスラ、エヌビディアなど、私たちが普段ETFを通じて株主になっている企業の中枢にも、世界中から集まった頭脳がいます。
「世界中で1番優秀な人がアメリカで起業しようと思う」という構造ができているうちは、アメリカの株式市場は強くあり続けるだろう、というのが私の長期見通しです。これは断定ではなく、20年投資をしてきた個人の感触に過ぎませんが。
多様性は摩擦も生むが、長期では力になる
もちろん、移民国家は分断や治安、政治的対立も抱えます。短期的にはそれが株価に響くこともあります。それでも長期で見れば、人口が増え、多様な人材が集まり続けることは、日本のように人口が縮む国にはない大きな強みだと私は考えています。
大陸国家のメリットとデメリット
アメリカは大陸国家です。これも経済構造に大きく効いています。
メリット
- 資源の自給:原油・天然ガス・小麦・トウモロコシ・大豆。エネルギーも食料もほぼ国内で賄える。シェール革命以降は事実上のエネルギー輸出国
- 巨大な国内市場:3.3億人を1つの言語・1つの通貨で抱える。輸出に頼らなくても巨大企業が育つ
- 多様な気候帯:農業・観光・産業立地の選択肢が広い
- 軍事的バッファ:両側が海。陸続きの大国は南北のみ
デメリット
- 広大な国境の管理コストが大きい(特に南側)
- 州ごとに法律・税制が違い、制度の統一が難しい場面がある
- 地域格差・人種格差が大きく、政治的対立が長期化しやすい
20年事業者・20年大家としての私の感覚で言うと、「国内市場が巨大」というのは想像以上に大きい武器です。日本の中小企業の多くが頭打ちになるのは、1.2億人の市場で勝負しているからでもあります。アメリカの企業が当たり前のように世界企業になれるのは、最初から国内市場が広いからです。
日本との比較:島国・資源輸入依存・少子高齢化
ここまで読まれて、「じゃあ日本は?」と気になる方も多いと思います。私自身、日本人として日本に住み、日本円で生活費を支払い、4人の子を日本の学校に通わせている1人です。日本が大事なのは大前提です。その上で、純粋に経済構造として比べると、次のような違いがあります。
| 項目 | アメリカ | 日本 |
|---|---|---|
| 地理 | 大陸国家・両側海 | 島国・周囲全部海 |
| 資源 | エネルギー・食料ほぼ自給 | エネルギー・食料の多くを輸入 |
| 人口 | 3.3億人超・なお増加傾向 | 1.2億人・減少局面 |
| 言語 | 英語(世界共通語) | 日本語(基本的に国内のみ) |
| 移民 | 建国以来の移民国家 | 受け入れに慎重 |
| 通貨 | 世界の基軸通貨ドル | 主要通貨だが基軸ではない |
こうして並べると、構造的にどちらが経済大国としての条件を満たしているかは、残念ながらかなりはっきりしてしまいます。これは「日本が悪い国」という話では一切なく、長期投資先として国を選ぶときの冷静な比較として、私は子どもたちに見せたいと思っています。
だからこそ、日本人として日本に住みながらも、投資先としては世界へ分散する。それが私が新NISAでオルカン・S&P500を選んでいる理由の根っこにあります。これも当然、個人の見解です。
シェール革命とエネルギー自給:アメリカが「資源輸入国」から変わった日
先ほど「アメリカは資源を自給できる」と書きましたが、これは実は2010年代に起きた大きな変化を抜きには語れません。私が投資を始めた20年前のアメリカは、むしろ世界最大級の原油「輸入」国でした。中東情勢が荒れるたびにガソリン価格が跳ね上がり、アメリカ経済そのものが石油価格に振り回されていた——というのが、当時のニュースの定番だったと記憶しています。
それを根本から変えたのが、私の理解ではシェール革命です。地中の硬い岩盤(シェール層)に閉じ込められた原油・天然ガスを、水平掘削と水圧破砕という技術で取り出せるようになった。この技術が2010年前後から本格的に商業化され、アメリカの原油・天然ガス生産量は数年で世界トップクラスに躍り出ました。
「エネルギーを輸入する国」から「輸出する国」へ
この変化が経済構造に与えた影響は、私のような個人投資家の目から見ても、とてつもなく大きいものでした。ざっくり整理すると、こういうことだと私は理解しています。
- 貿易赤字の構造改善:それまで巨額のドルを石油の輸入に支払っていたのが、逆に売り手側に回り始めた
- 国内産業の電力・燃料コスト低下:安い天然ガスが国内で大量に出るようになり、化学・製造業の競争力が上がった
- 地政学的な自由度の拡大:中東への依存度が下がり、外交・安全保障の選択肢が広がった
20年事業者をやってきた私の感覚で言うと、「燃料費を他国に握られている状態」と「自前で賄える状態」の差は、企業経営でも国家経営でも決定的です。仕入れの根っこを自分でコントロールできる事業者がどれだけ強いか、私は身をもって知っています。アメリカという国がエネルギーの仕入れを自前化できたことは、それと同じ強さを国家規模で手に入れたということだと、私は受け止めています。
もちろん、いいことばかりではない
断定は避けますが、シェール開発には環境負荷や採算ライン(原油価格が一定以下になると掘っても赤字になる)の問題も指摘されています。脱炭素の流れとどう折り合いをつけるかも、これからの大きな論点でしょう。それでも、「エネルギーを自給できる大国」という土台が一段強化されたという事実は、長期で株式を持つ私にとって、安心材料の1つになっているのは確かです。これも個人の見解にすぎません。
ドル基軸通貨の歴史的経緯:なぜ「ドル」が米国株の強さに効くのか
第8話と第14話で詳しく扱う予定のテーマですが、第1話の段階でも触れておきたいのがドルが世界の基軸通貨であることの意味です。これは米国株の強さを理解するうえで、避けて通れない話だと私は考えています。
ブレトン・ウッズ:ドルが世界の中心に座った日
先ほども触れましたが、1944年のブレトン・ウッズ会議で、世界の通貨は「金と交換できるドル」を中心に、各国通貨をドルに固定する仕組みになりました。当時アメリカは世界の金の大半を保有していたと言われ、「金の裏付けがあるドル」だからこそ、世界中が安心してドルを基準にできたわけです。
ニクソン・ショック:金との縁が切れても、ドルは中心であり続けた
ところが1971年、当時のニクソン大統領がドルと金の交換停止を宣言します。いわゆるニクソン・ショックです。これで理屈の上では「ドルの裏付け」は消えたはずでした。それでもドルは基軸通貨であり続けた。なぜか——ここが私には長年とても興味深い点でした。
ペトロダラー:石油がドルの新しい裏付けになった
私の理解では、その後アメリカは主要産油国との間で、「石油の取引はドルで決済する」という事実上の仕組みを作り上げていきます。これがいわゆるペトロダラーと呼ばれる構造です。世界中の国がエネルギーを買うためにドルを必要とする。だから各国はドルを貯め込む。貯め込んだドルは、しばしばアメリカ国債や米国株という形でアメリカに還流していく——。
世界が石油を買うためにドルを欲しがり、そのドルがまたアメリカの資産市場に戻ってくる。この「ドルが世界を一周してアメリカに帰ってくる」構造こそ、米国株の長期的な強さの隠れた土台ではないか、というのが私の個人的な見立てです。
基軸通貨を持つ国は、自国通貨で世界から資金を調達でき、危機のときには世界中の資金が「安全資産」としてドルに逃げ込んでくる。20年投資をしてきて、暴落時にドルと米国債が買われる場面を何度も見てきた私には、この「いざというときに世界中のお金が集まってくる」性質が、どれほど大きな強みかが実感としてわかります。
もちろん、ドル基軸がいつまで続くかは誰にもわかりません。これは第14話でじっくり考えたいテーマです。ここでは「ドルが基軸である限り、米国株には世界中の資金が集まりやすい構造がある」という、私なりの理解を書き留めておくにとどめます。断定ではありません。
私が20年で経験した米国株の暴落と回復:4児を抱えて、どう乗り切ったか
ここまで構造の話ばかり書いてきましたが、第1話の中でどうしても1度、私自身の生々しい体験を書いておきたいと思います。理屈をいくら並べても、実際に資産が半分近くまで減る恐怖の前では、人は簡単に折れてしまうからです。私自身、何度も折れかけました。
2008年・リーマンショック——一番つらかった暴落
2008年、私はまだ子どもが小さく、妻もまだ元気だったころでした。世界中の株価が連日のように崩れ、私の保有資産も大きく目減りしました。毎晩、寝かしつけのあとに証券口座を開いては、ため息をついていたのを今でも覚えています。「このまま全部なくなったら、子どもたちの将来はどうなるんだろう」——そんな考えが頭をぐるぐる回っていました。
あのとき私を踏みとどまらせたのは、高度な投資理論ではありませんでした。「アメリカという国の人口・資源・制度の土台は、この騒ぎで壊れたわけじゃない」という、ごく単純な確認だったのです。会社は潰れることがあっても、国そのものの構造はそう簡単には崩れない。そう自分に言い聞かせて、私は売らずに、むしろ少しずつ買い増しを続けました。結果として、その判断は私の資産形成のなかで最も大きなプラスになりました。
2020年・コロナショック——一番速かった暴落
2020年春のコロナショックは、下落のスピードが異常でした。数週間で大きく崩れ、世界が止まるかのような空気でした。このときはすでに妻を亡くしており、私は4人の子を1人で抱える立場でした。正直、「今度こそ生活防衛資金に手をつけるべきか」と本気で悩みました。
それでも、私は「生活費2年分の現金」だけは絶対に投資に回さないという自分のルールを、20年かけて作ってきていました。このルールがあったおかげで、暴落しても日々の生活と子どもの学費は守られている、という安心感を持てた。だから株式のほうは慌てて売らずに済んだのです。暴落を乗り切れるかどうかは、暴落が来てからの判断ではなく、暴落が来る前にどんな現金クッションを用意していたかで8割が決まる——これが20年で得た、私のいちばん実用的な教訓です。
2022年・じわじわ続いた下落——一番精神を削られた局面
2022年は、リーマンやコロナのような一発の暴落ではなく、長くじわじわと下げ続けるつらさがありました。金利が上がり、ハイテク株を中心に重い空気が続いた1年でした。一発で底を打つほうがまだ精神的に楽で、終わりの見えない下げのほうが人の心を削るのだと、このとき実感しました。
このときも私を支えたのは、やはり「なぜこの指数を持っているのか」という言語化された理由でした。資源・人口・制度。この3つが崩れていない以上、いまの下げは「価格の問題」であって「価値の問題」ではない。そう整理できたからこそ、私は積立の手を止めませんでした。これらはすべて結果論であり、未来を保証するものではありません。あくまで、4児を抱えた1人の親が実際に通ってきた道として読んでいただければと思います。
日本人がドル資産を持つ意味:円安局面で家計をどう守ったか
最後にもう1つ、日本に住む私たちにとって切実な話を書いておきます。それは「日本円だけで資産を持つことのリスク」です。これは投資のリターンというより、家計を守る通貨分散の話だと、私は捉えています。
円安で「何もしていないのに目減りする」体験
近年の円安局面で、多くの方が体感されたと思います。輸入品や燃料、食料品の値段が上がり、給料はそれほど増えないのに、生活コストだけがじわじわ重くなっていく。これは、円という1つの通貨だけで資産も収入も持っていると、その通貨が弱くなったときに家計全体が一緒に弱くなってしまうということです。20年大家をしてきた私の家賃収入も、20年事業をしてきた私の売上も、基本はすべて円建てです。つまり私の収入源は、放っておくと「円一点張り」になりやすい構造なのです。
オルカン・S&P500が「円安の保険」として効いた
ここで効いてきたのが、長年積み立ててきたオルカンとS&P500でした。これらは中身が米ドル建ての資産です。円安が進むと、ドル建て資産の円換算の評価額は上がります。つまり、円が弱くなって生活が苦しくなる局面で、私のドル資産のほうは円換算で増えてくれた。家計の片方が痛むときに、もう片方がそれを和らげてくれる——この「片方が下がれば片方が支える」関係こそ、私が通貨分散を続けてきた一番の理由です。
| 局面 | 円だけで持つ家計 | 円+ドル資産を持つ家計 |
|---|---|---|
| 円安・物価上昇 | 生活コスト増だけが重くのしかかる | ドル資産の円換算額が増え、負担を一部相殺 |
| 円高 | 輸入品が安くなり生活はやや楽に | ドル資産の評価額は下がるが、生活コストは軽くなる |
誤解のないように書いておくと、私は「円が危ないから全部ドルにしろ」と言っているのではありません。日本に住み、円で生活する以上、当面の生活費は円で持っておくのが当然です。私が言いたいのは、収入も資産も円一点張りにせず、ドル資産を「家計の保険」として一部持っておくという考え方です。新NISAのつみたて枠でオルカンやS&P500を持つことは、知らず知らずのうちにこの通貨分散を実現してくれている——そう捉えると、毎月の積立の意味がまた一段違って見えてくるのではないでしょうか。これもあくまで個人の見解であり、為替の先行きを予想するものではありません。
結論:資源・人口・制度の三拍子が揃った国だった
第1話の結論をいったんまとめます。アメリカが世界最大の経済大国になった理由は、私が見るかぎり次の3つに集約されます。
- 資源:エネルギー・食料を自給でき、戦時にも経済が止まらない
- 人口:移民を取り込みながら増え続け、国内市場が常に拡大する
- 制度:法治・株式市場・大学・特許制度が整い、起業とイノベーションを支える
この3つが揃っている国は、人類史を通じてもそう多くありません。私はこの構造が短期間で崩れるとは思っていません。だからこそ、長期積立の主役を「アメリカを含む先進国株式」に置くことに、自分なりの納得感を持っています。
4児パパ視点:子に「アメリカが強い理由」をどう伝えるか
4児の父として、私は子どもたちに「お金の話」だけを教えるつもりはありません。むしろ、その土台になる世界の見方を一緒に話すようにしています。
長男には、「アメリカが強いのは大統領が誰かという個人の問題じゃないんだよ。資源があって、人が増えて、ルールが整ってる国だからだよ」と話しました。次男には地図を広げて「ここがアメリカ、ここが日本、ここが中国」と国の大きさを比べさせました。下の子たちにはまだ難しいので、「大きい畑と、人がいっぱい来てくれる国はお金持ちになりやすいんだよ」と、家庭菜園を例えに使って話しています。
これらは私の家庭での例にすぎませんが、「なぜ」を子に説明できる親であることが、結果としていちばんの金融教育になると私は感じています。
シリーズ第2話以降の予告:全15話で「アメリカの強さ」を分解する
今回の第1話は「全体地図」でした。第2話以降では、テーマを絞ってもっと深掘りしていきます。あくまで予定なので、順番や題は前後する可能性があります。
- 第2話:実は短いアメリカの歴史(建国から250年弱の国)
- 第3話:独立戦争と憲法——なぜアメリカは「ルールの国」になれたか
- 第4話:南北戦争と統一市場——分裂しかけた国が1つに戻れた理由
- 第5話:移民の波——アイルランド・東欧・アジア・中南米
- 第6話:フロンティアと西部開拓——大陸を国土化していった200年
- 第7話:2度の世界大戦とアメリカの台頭
- 第8話:ブレトン・ウッズとドル基軸——金融の中心が動いた日
- 第9話:冷戦と宇宙開発——国家プロジェクトが生んだ民間技術
- 第10話:シリコンバレーはなぜアメリカから生まれたのか
- 第11話:GAFAM・エヌビディア——巨大プラットフォーマーの構造
- 第12話:シェール革命とエネルギー自給
- 第13話:移民・人口動態とこれからの労働力
- 第14話:ドル基軸通貨はいつまで続くのか
- 第15話:シンパパの結論——子に何を残し、何を任せるか
このシリーズを書き終えるころには、私自身の「なぜオルカンを買うのか」「なぜ4児の学費の一部を米国株インデックスに振り分けるのか」という判断軸を、もう一段クリアに言語化できるようになっているはずです。読んでくださる方の参考になれば、これ以上にうれしいことはありません。
資産形成への教訓:強い国を理解した上で選ぶ
第1話の最後に、20年投資家としての私なりの教訓を書いておきます。
「強そうだから買う」のではなく、「なぜ強いのかを自分の言葉で説明できる国・銘柄」を長期で持つ。それが、暴落時に売らずに済む唯一の方法だった。
2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック、2022年の急落。20年投資をしていれば、いやでも何度か大きな下落を味わいます。そのときに踏みとどまれた人と、底値で売ってしまった人を分けたのは、その国・その指数を選んだ理由を自分の言葉で持っていたかどうかだったと、私は強く感じています。
新NISAでオルカン・S&P500を積み立てている方は、ぜひ「なぜ自分はこのファンドを選んだのか」を1回、紙に書き出してみてください。書けたら、それはとても強い投資家です。書けなかったら、このシリーズが少しは役に立つかもしれません。これも個人の見解です。
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この記事と合わせて読んでいただけると、私の資産形成スタンス全体が立体的に見えてくるはずです。
シリーズ第2話:実は短いアメリカの歴史 へ続く。建国からまだ250年弱しか経っていないアメリカが、なぜこの短期間で世界1位の経済大国になれたのか。次回はそこから掘り下げます。引き続きお付き合いいただけたらうれしいです。
※本記事は4児シングルファーザーで個人事業主・大家・個人投資家でもある私の見解です。投資・税務・法律に関する最終的な判断はご自身の責任で行ってください。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。


