不動産と金融資産、資産クラスの分散比率をどう決めたか

不動産と金融資産、資産クラスの分散比率をどう決めたか 投資・資産運用

個人事業主として20年、投資家として20年、そして大家として20年と、複数の顔を並行して持ちながら資産形成を続けてきた中で、常に頭を悩ませてきたのが「不動産と金融資産、どちらにどれだけの資金を配分するか」という問題です。それぞれの資産クラスに独自の魅力とリスクがあるからこそ、簡単には答えの出ないテーマだと感じ続けてきました。株式や投資信託のようにボタンひとつで売買できる金融資産と、購入や売却に長い時間も手間もかかる不動産とでは、そもそもの性質が大きく異なります。この二つをどうバランスさせるかについて、明確な唯一の正解があるわけではありませんが、私なりに試行錯誤しながらたどり着いた考え方があります。今回は、資産クラスとしての不動産と金融資産の分散比率を、どのような視点で決めてきたかを、できるだけ具体的に整理してみたいと思います。

不動産投資を始めた頃の資産配分

不動産投資を始めた当初は、手元にある資金の多くを頭金や諸費用に投じることになり、必然的に金融資産への投資余力は限られていました。当時は「まずは不動産という実物資産を持つこと」を優先し、金融資産への投資は少額から始めるという配分になっていました。不動産は融資を活用してレバレッジをかけられる点が金融資産とは大きく異なる特徴で、自己資金の何倍もの規模の資産を保有できるという魅力があります。一方で、その分、借入というリスクも同時に背負うことになるため、当時の私はこのバランス感覚を掴むのに苦労しました。

金融資産への配分を増やしていった経緯

不動産経営がある程度軌道に乗り、家賃収入が安定してくると、余剰資金を金融資産に振り向ける余力が生まれてきました。不動産だけに資産を集中させることのリスクを意識するようになったのも、この時期です。不動産は地震や火災といった物理的なリスクに加えて、空室や家賃下落といった市場リスク、流動性の低さといった特有のリスクを抱えています。すべての資産を不動産に集中させていると、まとまった現金が必要になった際にすぐに換金できないという弱点が顕在化しかねません。そこで、家賃収入の一部を継続的に金融資産の積立に回すという運用を始め、徐々に資産クラスとしての分散を意識するようになりました。

不動産と金融資産、それぞれの役割の違い

私は不動産と金融資産に、それぞれ異なる役割を持たせて資産全体を設計しています。不動産は、毎月の家賃収入という形で比較的安定したキャッシュフローを生み出してくれる資産と位置づけています。個人事業主として事業所得が変動しやすい中で、不動産からの家賃収入は生活の土台を支える安定収入源としての役割が大きいと感じています。一方、金融資産は、長期的な資産成長を狙う役割として位置づけています。株式や投資信託は不動産に比べて流動性が高く、必要な時に比較的すぐ現金化できるという特徴もあり、緊急時の備えとしての側面も併せ持たせています。この役割分担を意識することで、それぞれの資産クラスに何を期待するのかが明確になり、配分を考える際の軸がぶれにくくなったと感じています。

分散比率を数値で管理するようになった理由

以前は感覚的に「不動産も金融資産もそれぞれある程度持っている」という漠然とした認識で満足していましたが、ある時期から、資産全体に占める不動産の評価額と金融資産の評価額の比率を、具体的な数字で把握するようにしました。不動産の評価額は市場価格を厳密に算出するのが難しい面もあるため、固定資産税評価額や近隣の取引事例などを参考に、大まかな時価を年に一度見直すようにしています。金融資産についても証券口座の評価額を定期的に確認し、資産全体に占める不動産と金融資産のおおよその比率を把握するようにしてから、資金をどちらに振り向けるべきかの判断がしやすくなりました。感覚だけに頼らず数字で管理することの重要性を、この作業を通じて実感しています。

融資を活用した不動産投資のリスク管理

不動産投資は融資を活用できる点が金融資産との大きな違いですが、その分、借入金の返済という固定的な支出を抱え続けることになります。私は不動産投資の借入残高と、金融資産や現預金といった流動性の高い資産の比率にも注意を払うようにしています。借入が資産全体に占める割合が過度に大きくなっていないか、万が一空室が長期化した場合でも返済に支障が出ないだけの流動性資産を確保できているかを、毎年の資金計画の中で確認しています。不動産の含み益がどれだけ大きくても、現金が回らなければ事業も家計も立ち行かなくなるため、この確認作業は資産配分を考えるうえで欠かせないものになっています。

子育て世帯としての資金の使いどころ

4人の子を育てる立場から言うと、教育費というまとまった支出が発生するタイミングを見越して、資産配分を考える必要もあります。不動産は簡単には現金化できない資産である一方、金融資産は必要なときに比較的柔軟に取り崩せます。この特性の違いを踏まえ、教育費が本格的にかかる時期が近づいてきたら、金融資産の一部を安全性の高い資産に振り分けたり、取り崩しやすい形で保有したりするといった調整を検討しています。不動産の家賃収入は生活の土台として維持しつつ、教育費のようなライフイベントに対応する資金は金融資産側で柔軟に用意しておくという役割分担が、子育て世帯としての資産設計において重要だと感じています。

今の私がたどり着いている分散の考え方

現在の私は、不動産をやや厚めに、金融資産をそれに次ぐ規模で保有するという配分にたどり着いています。この比率が絶対的に正しいとは考えていませんが、家賃収入という安定したキャッシュフローを土台にしながら、金融資産で流動性と成長性を補うという組み合わせが、個人事業主として収入の波を抱える自分にとって、精神的にも実務的にも無理のないバランスだと感じています。以前書いた「資産形成のロードマップ、20年前に立てた計画との答え合わせ」でも触れましたが、資産配分は一度決めたら終わりではなく、ライフステージや事業の状況に応じて継続的に見直していくものだと考えています。

資産評価額を可視化する仕組みづくり

不動産と金融資産の分散比率を数字で管理するためには、それぞれの資産の評価額を定期的に把握できる仕組みが欠かせません。金融資産については証券口座の評価額を確認すればすぐに把握できますが、不動産の評価額は市場価格を正確に算出するのが難しく、把握の仕方に工夫が必要でした。私は固定資産税評価額をベースにしつつ、近隣の類似物件の取引事例や、賃貸経営の実績から算出した収益還元的な評価も加味して、年に一度、大まかな時価を見積もるようにしています。この評価額を金融資産の評価額と並べて一覧表にまとめることで、資産全体に占める不動産と金融資産の比率を、感覚ではなく数字で確認できるようにしています。

この一覧表は、確定申告が終わった時期に合わせて毎年更新するようにしており、数年分を並べて見返すと、資産全体がどのように成長してきたか、資産クラスごとの比率がどう変化してきたかを一目で把握できます。不動産の評価額は年によって大きく動くものではありませんが、金融資産は相場の変動によって評価額が大きく上下することがあるため、この一覧表を見返すことで、比率が想定よりも大きく偏っていないかを定期的に確認する習慣がついています。

借入金を含めた資産全体のバランスシート思考

不動産投資では融資を活用することが多いため、資産の分散比率を考える際には、借入金の存在を無視できません。私は不動産の評価額だけでなく、借入金の残高も含めた形で、資産全体をバランスシートのように捉えるように意識しています。具体的には、不動産の評価額から借入金残高を差し引いた「純資産としての不動産価値」を算出し、これを金融資産の評価額と比較するという方法で、より実態に近い分散比率を把握するようにしています。単純に不動産の評価額だけを見て「不動産の比率が高い」と判断してしまうと、借入金の負担を見落としたまま資産配分を考えてしまうというリスクがあります。

この考え方を取り入れるようになったのは、事業の財務諸表を見る中で、資産と負債を対で捉えるバランスシートの発想に触れたことがきっかけでした。家計や個人の資産形成においても、資産の総額だけでなく、負債とセットで純資産を把握することが、より正確な資産状況の理解につながると実感しています。不動産投資を行う立場だからこそ、この借入金を含めた視点を持ち続けることが、分散比率を考えるうえで欠かせない要素になっています。

相場や不動産市況の変動にどう向き合うか

不動産市況も金融市場も、常に一定の値動きを続けているわけではなく、時に大きく変動する局面があります。私はこれまで、不動産価格が上昇した時期も下落した時期も、株式市場が好調だった時期も低迷した時期も経験してきました。こうした変動のたびに感じるのは、どちらか一方の資産クラスが常に絶好調であり続けることはないということです。不動産市況が軟調な時期には、金融資産が資産全体を下支えしてくれる場面があり、逆に金融市場が荒れた時期には、家賃収入という安定したキャッシュフローが精神的な支えになってくれる場面もありました。

このように、値動きの性質が異なる資産クラスを組み合わせておくことで、どちらか一方の市況が悪化しても、資産全体が同時に大きく毀損するリスクを抑えられると実感しています。分散投資という考え方は、株式の銘柄を分散させるだけでなく、不動産と金融資産という異なる資産クラス同士を組み合わせることでも実現できるのだと、実際に相場の変動を経験しながら理解を深めてきました。

事業の状況に応じた資金の振り向け先の判断

個人事業主として、その年の事業の状況によって、余剰資金を不動産と金融資産のどちらに振り向けるかを毎年判断しています。良い物件情報が出てきたタイミングと、事業の資金繰りに余裕がある年が必ずしも一致するとは限らないため、資金をどちらに振り向けるかは、単純なルールだけでは割り切れない判断が求められます。私は、良い投資機会が見つかった場合でも、事業の運転資金や生活防衛資金を犠牲にしてまで無理に資金を投じることはしないと決めており、機会を逃すことになったとしても、資金繰りの安全性を優先するという方針を崩さないようにしています。

一方で、余剰資金がありながら特に良い投資機会が見当たらない年は、無理に不動産を探したり、投資を増やしたりするのではなく、いったん現預金として保有しておくという判断も選択肢に入れています。すべての余剰資金を常にどちらかの資産クラスに投じなければならないという思い込みを持たず、機会が整うまで待つという判断も、資産配分を考えるうえで重要な選択肢のひとつだと考えています。

生活防衛資金という土台があってこその分散投資

不動産と金融資産の分散比率を考える以前に、私が常に確保するようにしているのが、生活防衛資金です。何か月分の生活費に相当する現預金を、投資対象とは切り離して確保しておくことで、不動産市況や金融市場がどれだけ荒れても、日々の生活が揺らぐことのない土台を作っています。この生活防衛資金があるからこそ、不動産や金融資産の評価額が一時的に下落しても、慌てて売却するような判断をせずに済んでいると感じています。分散投資というと、投資対象をどう分散させるかという話に意識が向きがちですが、その前提として、投資に回さない資金をどれだけ確保しておくかという判断も、同じくらい重要だと考えています。

生活防衛資金の水準は、子どもの人数や年齢構成、事業の安定度によって変わってくるものだと考えており、私は定期的にこの水準が今の家族構成や事業状況に見合っているかを見直すようにしています。子どもが増えたタイミングや、大きな支出が控えているタイミングでは、生活防衛資金の水準を厚めに設定し、その分、投資に回す資金の割合を一時的に抑えるという調整も行ってきました。

資産配分の見直しを習慣化する仕組み

不動産と金融資産の分散比率は、一度決めたら固定するものではなく、継続的に見直していく必要があると考えています。私はこの見直しを、単なる思いつきで行うのではなく、確定申告が終わった後の一定期間に必ず行うという形で、年間のスケジュールに組み込んでいます。この時期に、資産全体の評価額の一覧表を更新し、不動産と金融資産の比率、借入金の状況、生活防衛資金の水準を一通り確認したうえで、翌年の資金の使い方について大まかな方針を立てるようにしています。

この習慣を続けてきたことで、資産配分について場当たり的な判断をすることが減り、長期的な視点で一貫した資産形成を続けられるようになったと感じています。忙しい日々の中で、こうした振り返りの時間を確保すること自体が簡単ではありませんが、年に一度でもきちんと立ち止まって資産全体を俯瞰する時間を持つことが、20年間資産形成を続けてこられた大きな要因のひとつだと実感しています。

子どもたちに伝えたい資産分散の考え方

4人の子を育てる中で、いずれ彼らが自分自身の資産形成を考える時期が来ることを意識しています。私は、不動産と金融資産という二つの異なる資産クラスを組み合わせてきた経験を通じて、「ひとつの資産に頼りすぎないこと」の大切さを実感してきました。この考え方は、特別な知識がなくても理解できるシンプルな原則であり、子どもたちにもいずれ伝えていきたいと思っています。難しい専門用語よりも、家賃収入という安定した柱と、値動きはあるが成長も期待できる金融資産という柱を、両方持っておくことの安心感を、実体験として共有できればと考えています。

不動産投資は誰にでもすぐに始められるものではなく、まとまった資金や融資といったハードルがありますが、金融資産への投資は少額からでも始められます。子どもたちが将来、自分の状況に応じてどのような資産クラスに資金を振り向けるかを考える際、私がこれまで試行錯誤してきた分散の考え方が、判断のひとつの参考になればという思いを持って、日々の資産管理に向き合っています。

まとめ

不動産と金融資産の分散比率は、それぞれの資産クラスが持つ役割の違いを理解したうえで、自分の事業や家庭の状況に合わせて設計していくべきものだと、20年間の試行錯誤を通じて実感してきました。資産評価額の可視化、借入金を含めたバランスシート思考、生活防衛資金という土台、そして定期的な見直しの習慣まで、比率そのものを決める以前の土台づくりにも、長い時間をかけて向き合ってきました。安定したキャッシュフローを生む不動産と、流動性と成長性を兼ね備えた金融資産、それぞれの強みを生かしながらバランスを取ることが、個人事業主として収入の波を抱える私にとって、資産全体を安定させるための大切な考え方になっています。

免責事項

本記事は、個人事業主・投資家・大家としての一般的な体験や考え方を情報提供の目的で執筆したものであり、特定の資産配分や投資手法を推奨するものではありません。ここで紹介した分散比率や考え方は、あくまで一個人の20年間の経験に基づくものであり、収入状況や家族構成によって適した配分は異なります。不動産投資や資産運用にはリスクが伴い、具体的な判断はご自身の状況を踏まえて、必要に応じて専門家にご相談のうえ行ってください。

タイトルとURLをコピーしました