こんにちは、シンパパ資産設計士です。
「家計管理のやり方」シリーズ全10回を通して、今の収支を正確に把握する方法をお伝えしてきました。今日から始めるのは、その続編にあたる「ライフプランの作り方」シリーズです。全10回を予定しており、今回はその第1回、「ライフプランを作らないと、お金の不安は消えない」というテーマからスタートします。
なぜ将来のお金が不安なのか
「老後が不安」「教育費が払えるか心配」「このまま働き続けて大丈夫だろうか」——多くの人が、将来のお金について漠然とした不安を抱えています。僕自身、4人の子どもを一人で育てることになった当初、この不安は人一倍大きなものでした。個人事業主として収入が不安定な中、4人分の教育費、住宅費、老後資金まで、すべてを一人で背負うという現実に向き合ったとき、正直かなり気持ちが沈んだ時期があります。
しかし、20年かけて分かったことがあります。お金の不安の正体は、ほとんどの場合「わからないこと」そのものだということです。将来いくら必要になるのか、今のペースでそれが用意できるのか、足りないとしたら何をどう変えればいいのか——これらが分からないまま「なんとなく不安」を抱え続けているケースが、実は非常に多いのです。
不安を感じたときに、僕が実際にとった行動
当時の僕は、不安を感じるたびに、なんとなくニュースやSNSで「老後資金」「教育費」といったキーワードを検索しては、他人の体験談や不安を煽るような情報に触れ、余計に気持ちが沈むという悪循環に陥っていました。この状態から抜け出せたきっかけは、感覚的な不安と決別し、紙とペン(後にスプレッドシート)を用意して、自分の家庭の数字と正面から向き合ったことでした。最初は現実を直視するのが怖い気持ちもありましたが、実際に数字にしてみると、「思っていたよりは対策の余地がある」という発見のほうが多く、むしろ気持ちが軽くなった経験があります。数字と向き合うことは、想像していたよりもずっと勇気づけられる作業でした。
不安の9割は「情報不足」から生まれる
投資家として20年、相場と向き合ってきた経験からも言えることですが、人は「わからないもの」に対して、実態以上に大きな不安を感じる傾向があります。相場の暴落局面でも、なぜ下がっているのか・過去にどう回復してきたのかを理解している人は、比較的冷静でいられます。逆に、仕組みを理解していない人ほど、恐怖に駆られて不利なタイミングで売却してしまいがちです。お金の将来設計も同じで、「仕組みを理解し、自分の数字を把握している人」ほど、不安に振り回されにくくなるという構造は共通しています。
「老後2,000万円問題」だけを考えても意味がない理由
数年前に大きな話題になった「老後2,000万円問題」を覚えている方も多いと思います。この数字は、ある調査における平均的な高齢夫婦無職世帯のモデルケースから算出されたものです。しかし、この「2,000万円」という数字を、そのまま自分の家庭に当てはめて考えることには、大きな落とし穴があります。
なぜなら、必要な老後資金の金額は、次のような要素によって大きく変わるからです。
- 何歳まで働くか(収入が続く期間)
- 公的年金をいくら受け取れるか(加入期間・収入によって個人差が大きい)
- 持ち家か賃貸か(住居費の有無)
- 子どもの人数と教育費のかけ方
- 退職後の生活水準(旅行・趣味にどれだけお金をかけたいか)
4人の子どもを育てるシングルファザーである僕の家庭と、子どものいない共働き夫婦の家庭とでは、必要な金額も、そこに至るまでの収支の波もまったく異なります。「みんなが2,000万円必要だから、自分も2,000万円用意すればいい」という発想は、そもそも成り立たないのです。
平均値という数字の危うさ
「老後2,000万円」に限らず、世の中には様々な「平均」「目安」の数字が溢れています。平均年収、平均貯蓄額、平均教育費——これらの数字は、あくまで統計上の中央的な値であり、実際の分布には大きなばらつきがあることを忘れてはいけません。平均を下回っているからといって不安になる必要はありませんし、平均を上回っているからといって安心できるわけでもありません。大事なのは、平均という「みんなの数字」ではなく、自分の家庭の「個別の数字」で判断することです。
「一般論」と「自分ごと」の違い
SNSやニュースで見かけるお金の話の多くは、不特定多数に向けた「一般論」です。一般論はあくまで参考情報であって、そのまま自分の答えにはなりません。自分の答えを出すためには、一般論を材料としながらも、最終的には自分の収入・支出・家族構成・価値観に基づいて、自分自身で計算し直すという作業が欠かせません。このシリーズが目指しているのは、まさにこの「自分ごと化」のプロセスです。
本当に必要なのは「自分の人生に合わせた計画」
老後2,000万円のような一般論の数字ではなく、本当に必要なのは「自分自身の人生に合わせて設計された、オーダーメイドの計画」です。これこそが、これから始める「ライフプラン」です。
ライフプランとは、簡単に言えば次の2つを組み合わせたものです。
ライフプラン=「人生の予定表」+「お金の予定表」
「人生の予定表」とは、子どもの進学、住宅の購入・修繕、車の買い替え、自分自身の働き方の変化、老後の生活といった、人生で起こりうる出来事を時系列に並べたものです。「お金の予定表」とは、その出来事1つ1つに、いつ・いくら必要になるかを紐づけた収支の見通しです。この2つを組み合わせることで、初めて「自分にとって本当に必要な備え」が見えてきます。
「人生の予定表」が先、「お金の予定表」が後
ライフプランを作る際によくある失敗が、いきなりお金の計算から入ってしまうことです。実際には、順番が逆です。まず「これからの人生で、何が起こりそうか」という出来事を洗い出すことが先で、お金の計算はその後に続きます。出来事が明確になっていない状態で金額だけを積み上げても、抜け漏れが発生しやすく、精度の低い見積もりになってしまいます。順番を間違えないことが、精度の高いライフプランを作る第一の鉄則です。次回・第2回で扱う「人生のイベントを整理する」というステップが、このシリーズの実質的なスタート地点になるのはこのためです。
「予定表」という言葉に込めた意味
あえて「計画」ではなく「予定表」という言葉を使っているのには理由があります。ライフプランは、一度作ったら二度と変えてはいけない「計画」ではありません。子どもの進路が変わる、収入が変化する、予期せぬ出来事が起きる——人生には想定外がつきものです。ライフプランは、状況の変化に合わせて何度でも書き換えていい「予定表」だと捉えることで、気負わずに作成・更新を続けられます。この柔軟さこそが、長く付き合っていくための一番のコツです。
我が家の将来を数字で見える化する
「家計管理のやり方」シリーズでは、家計簿アプリなどを使って「今」のお金の流れを可視化する方法をお伝えしました。ライフプランでは、この可視化の対象を「将来」にまで拡張します。
具体的には、次のような問いに、感覚ではなく数字で答えられるようにすることを目指します。
- 5年後、10年後、我が家の年間支出はどう変化しているか
- 子どもの教育費がピークを迎えるのは何歳のときか
- 今の収入とペースで、老後資金は何歳の時点でいくら貯まっているか
- もし収入が今より減った場合、どこまで耐えられるか
これらの問いに答えられるようになると、漠然とした不安の多くが、具体的な「課題」に変わります。課題になれば、対策を考えることができます。「わからないから不安」という状態から、「分かっているから対策できる」という状態への転換——これがライフプランを作る最大の意義です。
シングルファザーだからこそライフプランが重要な理由
共働き夫婦であれば、一方の収入が途絶えても、もう一方の収入でしばらく持ちこたえることができます。しかしシングルファザー・シングルマザー家庭には、この「もう一方」が存在しません。だからこそ、「今の収入がずっと続く前提」ではなく「収入が変動する可能性も織り込んだ前提」でライフプランを作ることが、他の家庭以上に重要になります。個人事業主として収入の波を長年経験してきた立場から言えば、悲観的になりすぎる必要はありませんが、楽観的な前提だけでプランを組むことも避けるべきです。楽観と悲観の間で、現実的な線をどこに引くかが、ライフプラン作成における最初の重要な判断になります。
子ども4人という規模がもたらす複雑さ
子どもが1人であれば、教育費のピークは1回だけ訪れます。しかし4人になると、進学のタイミングが重なる年、逆にどの子も落ち着いている年というように、支出の波が複雑に絡み合います。この複雑さを頭の中だけで管理するのは非常に困難です。だからこそ、次回以降で紹介する「表」という形に可視化することが、4人育児家庭にとって特に効果を発揮します。頭の中の記憶に頼るのではなく、目に見える形に落とし込むこと自体が、複雑さを乗り越える最大の武器になります。
ライフプランシリーズ全体の流れ
このシリーズは、全10回を予定しています。全体の流れは次のとおりです。
| 回 | テーマ |
|---|---|
| ① | ライフプランを作らないと、お金の不安は消えない(本記事) |
| ② | ライフプラン作成前に整理する「人生のイベント」 |
| ③ | ライフイベント表を作ってみよう |
| ④ | 教育費はいくら必要?子どもの人数から考える |
| ⑤ | 住宅費をライフプランに入れる |
| ⑥ | 車は一生でいくらかかる? |
| ⑦ | 収入を予測する|複数の収入源で考える |
| ⑧ | インフレ率を入れないライフプランは危険 |
| ⑨ | 老後資金はいくら必要?自分の場合で計算する |
| ⑩ | ライフプラン表を完成させる |
前作の「家計管理のやり方」シリーズで丁寧に作成した「年間生活費表」(家計管理シリーズ第7回参照)が、このシリーズ全体の出発点になります。まだ家計管理シリーズを読んでいない方は、先にそちらから読み進めることをおすすめします。土台がしっかり整っているほど、これから始まるライフプラン作成の作業もぐっとスムーズに、そして正確に進んでいきます。
各回のつながりを意識して読む
このシリーズは、1話完結の記事ではなく、10回すべてがつながった1つの流れとして設計しています。第2回で洗い出す人生のイベントは、第3回でイベント表という形にまとまり、第4回〜第6回でそれぞれの支出項目(教育費・住宅費・車両費)が具体化され、第7回で収入予測、第8回でインフレ率という補正が加わり、第9回で老後資金の計算につながって、第10回ですべてが1枚の「ライフプラン表」として完成する、という構成です。途中の回だけを読んでも部分的には役立ちますが、できれば順番に読み進めていただくことで、より効果を実感していただけるはずです。
難しく考えず、まずは読み進めてほしい
「ライフプラン」と聞くと、難しい専門知識やファイナンシャルプランナーのような資格が必要だと身構えてしまう方もいるかもしれません。しかし、このシリーズで紹介する方法は、特別なスキルを一切必要としません。必要なのは、電卓(またはスプレッドシート)と、自分の家庭の情報、そして少しの時間だけです。難しく考えず、まずは気軽に、リラックスして読み進めてみてください。完璧な理解を目指す必要もありません。一度さらっと読み流すだけでも十分で、次回以降の内容が自然とすっと頭の中に入ってくるはずです。
まとめ|不安を消すのは、気合いではなく数字
今回のポイントを整理します。
- お金の不安の正体は、多くの場合「わからないこと」そのもの
- 「老後2,000万円問題」のような一般論の数字を、そのまま自分に当てはめても意味がない
- 必要なのは「人生の予定表」+「お金の予定表」=ライフプランという、自分専用の設計図
- ライフプランを作ることで、漠然とした不安が具体的な「課題」に変わり、対策が立てられるようになる
次回は、ライフプランを作る最初のステップとして、「人生のイベント」をどう整理するかについて解説します。
ライフプランは「作って終わり」ではない
ここで一つ強調しておきたいのは、ライフプランは一度作って終わりにするものではなく、家計管理シリーズと同様に「継続的にアップデートしていくもの」だということです。子どもの進路が決まる、収入が変わる、家族構成が変わる——こうした変化のたびに、ライフプランの数字も見直す必要があります。
最初から完璧なライフプランを作ろうとすると、情報収集だけで疲れてしまい、結局挫折してしまうことがあります。大切なのは、「今分かっている範囲で、まず一度作ってみること」です。粗くてもいいので最初のバージョンを作り、半年〜1年に一度、実情に合わせてアップデートしていく——このシリーズ全体を通して、この「完璧を目指さず、まず作って、育てていく」という姿勢を大切にしていきます。
この考え方は、家計管理シリーズで繰り返しお伝えしてきた「続けられる仕組み作り」と、まったく同じ思想です。家計管理が「今」を対象にした仕組み作りだったのに対し、ライフプランは「将来」を対象にした仕組み作り——対象とする時間軸が違うだけで、根っこにある考え方は共通しています。焦らず、少しずつ育てていく気持ちで取り組んでいただければと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. ライフプランは何歳から作り始めるべきですか?
年齢に関わらず、思い立ったときが最適なタイミングです。20代であれば長期的な資産形成の計画が立てやすくなりますし、40代・50代であっても、今からの数十年を見通す計画を作る価値は十分にあります。「もう遅い」ということはありません。
Q2. ライフプランと家計管理、どちらを先に取り組むべきですか?
家計管理を先に取り組むことをおすすめします。今の収支が正確に把握できていない状態でライフプランを作っても、土台となる数字が不正確なままになってしまいます。前作の「家計管理のやり方」シリーズを参考に、まず今の家計を整理してから、このシリーズに進んでください。
Q3. ライフプランを作る際、専門家(FP)に相談すべきですか?
必ずしも必要ではありません。このシリーズで紹介する手順に沿えば、専門知識がなくても自分自身でライフプランを作ることができます。ただし、無料相談を謳うFP相談の多くは、特定の金融商品の販売を目的としている場合があるため、利用する際は注意が必要です(この点については別記事で詳しく解説しています)。
Q4. ライフプランはエクセルやスプレッドシート以外でも作れますか?
紙のノートや手帳でも十分に作成できます。ただし、シリーズ後半で扱う複数年にわたる数値計算や、条件を変えたシミュレーションを行う際には、スプレッドシートのほうが修正・再計算が容易です。このシリーズでは、Excel・Googleスプレッドシートいずれでも使える形で解説していく予定です。
関連記事
シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年
📝 noteでも毎日発信中
投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。


