こんにちは、シンパパ資産設計士です。
今回は「もし自分が数ヶ月働けなくなったら、4人の子どもの生活をどう回すか」という、考えたくないけれど避けて通れないテーマを扱います。私は個人事業主として約20年、ひとり親としても家計を一人で背負ってきました。会社員のように傷病手当金でつないでもらえる立場ではありません。この記事では、収入が止まった月に家計から何が出ていくのかを洗い出し、使える公的制度を「申請できる順」に並べ、貯蓄で何ヶ月分をつなぐべきかを具体的な数字で設計します。読み終えたときに、明日から準備できる項目リストが手元に残る形にしました。
会社員と個人事業主で「働けない期間」の備えはどう違うか
まず前提を揃えます。同じ「病気やケガで数ヶ月働けない」という状況でも、会社員と個人事業主では受けられる保障がまったく違います。ここを誤解したまま備えを組むと、いざというときに想定していた入金がなく、家計が一気に傾きます。
傷病手当金は原則として使えない
会社員が加入する健康保険には、病気やケガで働けないとき、給与の約3分の2を最長1年6ヶ月受け取れる「傷病手当金」があります。ところが個人事業主が加入する国民健康保険には、この傷病手当金が原則としてありません。市区町村によっては任意給付の規定を置いている場合もありますが、実際に支給しているところはごくわずかです。つまり個人事業主にとって「働けない=収入ゼロ」が初期設定だと考えておく必要があります。
労災保険も原則は対象外
仕事中のケガや病気を補償する労災保険も、雇用されている人のための制度です。個人事業主は特別加入という枠で任意に入れる業種もありますが、加入していなければ補償はありません。私は「収入が止まったとき、外から自動的に振り込まれるお金はほぼゼロ」という前提で、貯蓄と保険と公的制度の申請を組み合わせて穴を埋める設計にしています。
頼れるのは「後から申請するお金」と「先に貯めたお金」
個人事業主のひとり親が働けなくなったときに家計を支えるのは、大きく分けて3つです。1つ目は事前に積み上げた生活防衛資金、2つ目は申請して初めて動く公的制度、3つ目は加入していれば給付される民間保険。このうち即効性があるのは1つ目だけで、2つ目と3つ目は申請・審査・振込までにタイムラグがあります。だからこそ最初の数ヶ月を現金でしのげるかどうかが生死を分けます。生活防衛資金の基本的な考え方は生活防衛資金はいくら必要か|家計の守りをつくる基本でも整理していますが、本記事ではひとり親・個人事業主という条件で必要額を積み増します。
収入が止まったときに家計から出ていくお金を洗い出す
備えの金額を決める前に、収入がゼロになっても止められない支出をリスト化します。ここを曖昧にしたまま「とりあえず100万円あれば」と考えると、月々の赤字幅が読めず、貯蓄が何ヶ月もつのか計算できません。
我が家をモデルに、収入が止まっても発生し続ける支出を月額で並べると、次のようになります。金額は家庭により幅があるので「例」として見てください。
| 費目 | 月額の例 | 収入ゼロ時に削れるか |
|---|---|---|
| 家賃・住宅ローン | 90,000円 | 削れない |
| 食費(6人分) | 90,000円 | 1〜2割は圧縮可 |
| 水道光熱費 | 28,000円 | ほぼ削れない |
| 通信費(家族分) | 18,000円 | プラン変更で圧縮可 |
| 国民健康保険料・国民年金 | 55,000円 | 減免申請で圧縮可 |
| 生命保険・医療保険 | 20,000円 | 基本は継続 |
| 子ども関連(給食費・教材費・部活動費等) | 35,000円 | 一部繰り延べ可 |
| 日用品・医療・交通費 | 25,000円 | 1〜2割は圧縮可 |
| 合計 | 約361,000円 | 努力後で約31万円前後 |
ポイントは、収入がゼロでも月30万円前後は出ていくという事実です。子どもの人数が多いほど食費と子ども関連費の絶対額が大きく、削れる比率も限られます。まずは自分の家計簿を開いて、この表を自分の数字で作り直してください。マネーフォワードMEなどで固定費を抽出すると10分で骨格ができます。手順はマネーフォワードMEで家計と資産の全体像を把握するにまとめています。
使える公的制度を「申請できる順」に並べる
収入が止まったとき、あるいは止まりそうなときに動かせる公的制度を、申請の優先順位が高い順に整理します。いずれも自動では始まりません。自分から窓口に連絡して初めて動きます。
すぐ連絡する(1週間以内)
- 国民健康保険料・国民年金保険料の減免/免除:所得が大きく下がる見込みがあれば、市区町村の国保窓口と年金事務所に相談します。国民年金は「保険料免除・納付猶予」、国保は「減免」や「分割」の対象になり得ます。合わせて月5万円前後の支出を一時的に止められる可能性があります。
- 住居確保給付金:離職・廃業や、休業などで収入が減り家賃の支払いが難しくなった人に、一定期間、家賃相当額を自治体が家主へ支給する制度です。原則3ヶ月(延長あり)。詳しくは住居確保給付金とは|家賃が払えなくなる前に知っておくで解説しています。
- 児童扶養手当の額改定:前年所得で決まる手当ですが、災害や病気で著しく所得が減った場合の取り扱いを自治体に確認します。翌年度の増額につながることがあります。
状態が長引きそうなら申請する(1ヶ月以内)
- 障害年金(障害基礎年金):国民年金加入者が一定の障害状態になったとき、子の加算を含めて受給できる場合があります。初診日や保険料納付要件の確認が必要で、審査にも時間がかかるため、長期化の兆しがあれば早めに年金事務所へ。
- 生活福祉資金貸付(緊急小口資金・総合支援資金):社会福祉協議会が窓口の低利・無利子の貸付です。当面の生活費を借りてつなぎ、回復後に返済する設計です。貸付なので慎重さは要りますが、闇雲に消費者金融へ走るより条件は良好です。
- 就学援助・高等学校等就学支援金の見直し:所得が下がれば、学校納付金の一部補助の対象になる場合があります。学校事務室と教育委員会に相談します。
最後のセーフティネット
- 生活保護:資産や親族の援助が期待できず、収入が最低生活費を下回るなら受給の権利があります。医療扶助で治療に専念でき、回復後に自立へ戻るための制度です。恥じる必要はありません。
| 制度 | 主な対象 | 受けられるものの例 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 国民年金の免除・猶予 | 所得が下がった人 | 保険料の全額〜一部免除 | 年金事務所・市区町村 |
| 国保料の減免 | 所得が大きく減少 | 保険料の減額・分割 | 市区町村の国保窓口 |
| 住居確保給付金 | 休業・廃業等で家賃困難 | 家賃相当額を原則3ヶ月 | 自立相談支援機関 |
| 障害基礎年金 | 一定の障害状態 | 年金+子の加算(概算で月十数万円規模) | 年金事務所 |
| 生活福祉資金貸付 | 一時的に生活費不足 | 無利子〜低利の貸付 | 社会福祉協議会 |
金額はいずれも家庭の状況で変わるため、ここでは「概算・例」として押さえ、実際の額は窓口で試算してもらってください。共通するのは、どれも申請主義で、動き出しが遅れるほど家計の傷が深くなるという点です。
保険料の免除・減免はどこまで下がるか
収入が止まったとき、最初に効くのが国民年金と国民健康保険の負担を一時的に軽くすることです。ここは申請すれば比較的早く結果が出るため、体調が許すかぎり初動で動く価値があります。
国民年金の免除は所得に応じて4段階
国民年金保険料の免除には、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4区分があり、前年所得(申請月によっては前々年所得)で判定されます。廃業や失業を理由とする場合は、本人の所得を除外して審査する特例があり、事業を大きく縮小した年でも全額免除に該当しやすくなります。免除期間は将来の年金額に一部しか反映されませんが、10年以内なら「追納」で後から埋め戻せます。まずは納付を止めて家計を守り、回復してから追納する、という順序で考えます。未納のまま放置すると障害年金や遺族年金の受給資格に影響するため、「未納」ではなく必ず「免除申請」にしておくことが重要です。
国民健康保険料の減免は自治体ごとに基準が違う
国保料の減免は、前年より所得が3割以上下がる見込みなど、自治体が定める基準に当てはまると申請できます。必要書類は、廃業・休業や収入減が分かる書類(帳簿の写し、取引先からの通知、医師の診断書など)と、直近の収入状況を示すメモが中心です。減免ではなく「分割納付」や「納期限の延長」だけでも、当座の資金繰りはかなり楽になります。どの窓口でも共通して聞かれるのは「いつから、どの程度、収入が落ちる見込みか」なので、答えられるように数字を用意してから相談に行くと話が早いです。
貯蓄でつなぐ期間の設計:何ヶ月分を現金で持つか
公的制度と保険が動き出すまでのタイムラグを、現金で埋める必要があります。ひとり親・個人事業主の場合、一般的に言われる「生活費の3〜6ヶ月分」では薄いと私は考えています。理由は、収入の再開が読めないこと、そして代わりに稼いでくれる人がいないことです。
月の必要支出を努力後で31万円とした場合の、つなぎ資金のシミュレーションです。
| 確保する期間 | 必要額の目安 | カバーできる状況 |
|---|---|---|
| 3ヶ月分 | 約93万円 | 短期の入院・療養。制度申請の初動をしのぐ最低ライン |
| 6ヶ月分 | 約186万円 | リハビリを含む回復期。障害年金の審査待ちに耐えられる |
| 12ヶ月分 | 約372万円 | 長期療養や事業のたて直しまで見込める。ひとり親の推奨ライン |
私自身は生活費の1年分に近い金額を、投資資産とは別の、普段使わないネット銀行口座に置いています。増やすための資金ではなく「そこにあること」に意味がある資金なので、金利はほとんど気にしていません。加えて、事業用の運転資金を家計の生活防衛資金とは別枠で確保しています。生活費に事業の穴埋めをさせると、家計と事業が同時に倒れるためです。
いきなり372万円と言われると気が遠くなるかもしれません。私も数年かけて積み上げました。まずは月1万円でも専用口座への自動振替を始め、賞与や還付金が入ったらまとめて移す。この「置き場所を先に作る」一歩が継続の鍵です。
貯蓄残高が何ヶ月でどう減るかを追う
「12ヶ月分あれば安心」と言われても、実際にどう目減りするかを見ないと動き方が決まりません。つなぎ資金200万円でスタートし、努力後の必要支出を月31万円、3ヶ月目から国保・年金の減免で月5万円圧縮、4ヶ月目から住居確保給付金で家賃9万円が入る、というモデルで残高を追うと次のようになります。数字は一例です。
| 経過 | その月の実質支出 | 入ってくる給付等 | 月末の貯蓄残高 |
|---|---|---|---|
| 開始時 | — | — | 2,000,000円 |
| 1ヶ月目 | 310,000円 | 0円 | 1,690,000円 |
| 2ヶ月目 | 310,000円 | 0円 | 1,380,000円 |
| 3ヶ月目 | 260,000円 | 0円 | 1,120,000円 |
| 4ヶ月目 | 260,000円 | 90,000円 | 950,000円 |
| 6ヶ月目 | 260,000円 | 90,000円 | 610,000円 |
| 8ヶ月目 | 260,000円 | 90,000円 | 270,000円 |
この試算で分かるのは、制度が動き出す3〜4ヶ月目までは毎月30万円前後がまるごと出ていくということ、そして減免と給付が効いても8ヶ月ほどで200万円を使い切るということです。障害年金や事業の再開が9ヶ月目以降になりそうなら、この時点で生活福祉資金貸付や資産の一部取り崩しを前倒しで検討します。残高が「あと3ヶ月分」を切ったら次の一手を打つ、という基準をあらかじめ決めておくと、判断が遅れません。
実際に数ヶ月休んだときの資金繰りの手順
備えがある前提で、実際に「当面働けない」と分かった日から何をするか、時系列で整理します。頭が回らない時期でも順番に潰せるよう、チェックリスト形式にしておきます。
最初の1週間でやること
- 当面の必要現金を、生活防衛資金の口座から生活口座へ3ヶ月分だけ移す(全額動かさない)
- 取引先へ状況連絡と、着手済み案件の引き継ぎ・納期調整
- 市区町村の国保窓口・年金事務所へ減免相談の電話を入れる
- 自立相談支援機関(住居確保給付金の窓口)に予約を取る
- 加入中の保険証券を集め、就業不能・所得補償・入院給付の請求可否を確認
1ヶ月以内にやること
- 削れる固定費の一時停止(サブスク、習い事の休会、通信プランの縮小)
- 子ども関連の学校納付金について、就学援助・分納の相談を学校へ
- 療養が長引く見込みなら、障害年金の初診日・納付要件を年金事務所で確認
- 家計簿を「収入ゼロ版」に組み替え、月次の赤字額を確定させる
2〜3ヶ月目の判断
ここで「いつ頃どの程度収入が戻るか」の見通しを立てます。戻りが見えないなら、生活福祉資金貸付や、資産の一部取り崩しを検討します。投資資産の売却は最終手段ですが、生活を守るためなら躊躇すべきではありません。順番としては、現金クッション→削れる支出→公的給付→貸付→資産の取り崩し、が基本です。就業不能保険の要否を含む民間保険の考え方はひとり親に就業不能保険は必要か|公的保障との重複を確認するで詳しく扱っています。
保険で埋めるべき穴はどこか
公的制度と貯蓄で土台を作ったうえで、残る穴を保険で埋めます。ひとり親・個人事業主が検討する価値があるのは次の3つです。
- 就業不能保険:病気やケガで長期間働けないとき、毎月一定額(例:月10万〜15万円)を受け取れる保険です。傷病手当金がない個人事業主にとって、会社員の傷病手当金の代わりに近い位置づけになります。支払対象になる状態の定義(在宅療養を含むか等)を必ず確認します。
- 所得補償保険:損害保険会社の商品で、就業不能保険より短期(1〜2年)の補償が中心です。フリーランス向けの団体加入で割安になることもあります。
- 医療保険の入院一時金・通院給付:入院の初期費用や、通院しながらの療養期のキャッシュに効きます。日額型より一時金型のほうが、短期入院が主流の今の医療事情には合います。
注意したいのは、保険は掛けすぎると平時の家計を圧迫することです。私の考え方は「公的保障で足りない期間と金額」を先に計算し、その差額だけを保険で買う、という順序です。児童扶養手当や各種手当を含めたひとり親家庭の収入の土台についてはひとり親家庭が受けられる手当・助成を一覧で確認するを合わせて読むと、必要な保障額の見当がつきます。
健康なうちにやっておく準備チェックリスト
「働けなくなってから」では、電話一本かける気力も出ません。だからこそ、動けるうちに次の項目を片づけておきます。年に一度、確定申告の時期にまとめて点検すると習慣にしやすいです。
- 生活防衛資金の専用口座を作り、毎月の自動振替を設定する(目標は生活費の12ヶ月分、まずは3ヶ月分)
- 収入ゼロでも出ていく固定費を一覧化し、「削れる・削れない・繰り延べ可」の3つに分けておく
- 加入中の保険証券を1か所にまとめ、就業不能・所得補償・入院一時金の支払条件と請求先を書き出す
- 住んでいる自治体の「自立相談支援機関」「国保の減免窓口」「年金事務所」の連絡先をメモしておく
- 取引先ごとに、急に連絡が取れなくなったとき誰に引き継ぐかを1行で決めておく
- 家族が家計を把握できるよう、口座・引き落とし・保険の一覧を紙かノートに残す
このリストは、万一のときだけでなく、平時の家計の見直しにもそのまま使えます。特に固定費の3分類は、収入が減る局面で「今月いくら赤字になるか」を即座に出せる土台になります。
まとめ
- 個人事業主に傷病手当金は原則なく、「働けない=収入ゼロ」が初期設定
- 収入が止まっても月30万円前後は出ていく。まず自分の数字で固定費表を作る
- 公的制度は申請主義。保険料減免・住居確保給付金・障害年金・生活福祉資金貸付を「申請できる順」で動かす
- つなぎ資金はひとり親なら生活費の12ヶ月分が目安。投資資産・事業資金とは別口座で持つ
- 順番は、現金→支出カット→公的給付→貸付→資産の取り崩し。保険は公的保障の差額だけ買う
次回は、遺族年金だけで4人を育てられるかを収支シミュレーションで検証します。「働けない」の先にある「万一のとき」まで、続けて備えていきましょう。
よくある質問
Q. 貯蓄がまだ3ヶ月分もありません。まず何をすべきですか。
A. 金額を貯めることより先に、生活防衛資金専用の口座を作り、給料や事業の入金から毎月定額を自動で移す仕組みを整えてください。並行して、今の固定費のうち収入が止まったら削れるものをリスト化しておくと、いざというときの赤字幅が読めます。まずは月1万円からで構いません。
Q. 国民健康保険料の減免は、どのくらい下がりますか。
A. 自治体の基準と所得の減少幅によって変わるため一律ではありません。前年より所得が大幅に下がる見込みであれば、減額や分割納付の対象になることがあります。金額は窓口で試算してもらえるので、「概算でいくらになるか」を早めに確認してください。断定的な額を前提に家計を組むのは避けます。
Q. 投資している分を取り崩すのはどのタイミングですか。
A. 現金クッション、削れる支出のカット、公的給付、低利の貸付を先に使い、それでも生活が回らないときの最終手段です。生活を守るためなら取り崩しは正しい判断ですが、順番を飛ばして最初に売ると、相場が悪いときに損を確定させたうえ、回復期の再投資も難しくなります。
シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年
📝 noteでも毎日発信中
投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。


