遺族年金だけで4人を育てられるか|受給額の試算と不足分の埋め方

暮らしと家計の整理 ひとり親の家計

こんにちは、シンパパ資産設計士です。

ひとり親が生命保険の必要保障額を考えるとき、土台になるのが「自分に万一のことがあったら、公的な遺族年金でいくら入ってくるのか」です。ここを正確に押さえないと、保険をかけすぎて家計を圧迫するか、逆に足りずに家族を危険にさらすことになります。私は4人の子を育てていて、この遺族年金の試算を、保険の見直しのたびにやり直してきました。この記事では、遺族年金の受給の範囲と金額の目安(制度の詳しい解説は遺族年金でひとり親世帯はいくら受け取れるかにあります)を前提に、「その金額で4人の子を育てられるか」を収支シミュレーションで検証し、足りない分をどう埋めるかを整理します。制度は改正されることがあり、金額も毎年変わるため、実際の判断は年金事務所で最新の情報を確認してください。

遺族年金の全体像をざっくり掴む

公的な遺族年金には、大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。遺族基礎年金は、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れます。金額は、基本額に子の数に応じた加算が付く形で、子が多いほど手厚くなります。受給できるのは、子が18歳に達した年度末(一定の障害がある子は20歳未満)までです。

遺族厚生年金は、亡くなった人に厚生年金の加入期間があった場合に、その報酬比例部分のおよそ4分の3が支給されます。会社員として働いた期間が長いほど金額は大きくなります。加入期間が短くても、一定の要件を満たせば「300月加入したものとみなして」計算される仕組みがあるため、若くして亡くなった場合でも一定の金額は確保されます。逆に、個人事業主・フリーランスとして国民年金にしか加入していない期間は、この遺族厚生年金の対象になりません。会社を辞めて個人事業主になった人は、厚生年金を脱退した時点で「その後に亡くなっても遺族厚生年金は出ない」可能性が高くなる、という点は認識しておく必要があります(退職後5年以内など一定の条件下で対象になる場合もあります)。

国民年金には、遺族基礎年金のほかに「寡婦年金」「死亡一時金」という制度もあります。寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納めた夫が亡くなったとき、婚姻期間などの要件を満たす妻に60歳から65歳まで支給されるものです。死亡一時金は、遺族基礎年金を受け取れない遺族に、納付月数に応じた一時金が支払われる制度です。自分のケースでどれが使えるかは、家族構成や納付状況で変わるので、年金事務所で確認します。

つまり、ずっと会社員だった人と、長く個人事業主だった人とでは、遺族年金の総額が大きく変わります。ここが、ひとり親の保険設計でいちばん個人差の出るところです。自分の年金記録(ねんきん定期便やねんきんネット)を見て、厚生年金の加入期間がどれくらいあるかを確認することから始めます。

もう一つ押さえておきたいのが、遺族年金は「タイミングによって受給の姿が変わる」ことです。子どもが全員18歳を超えていれば遺族基礎年金は支給されません。会社員期間があれば遺族厚生年金は出ますが、子のない配偶者への支給には年齢などの条件があり、金額も変わります。子どもが小さい時期にもしものことがあった場合と、子どもが大きくなってからでは、遺族年金でカバーされる範囲がまったく違うということです。だからこそ「今の時点で万一のことがあったら」を、子どもの年齢構成に合わせて試算する必要があります。

また、遺族年金の支給には保険料の納付要件があります。国民年金保険料や厚生年金保険料に一定以上の未納があると、遺族年金そのものが支給されないことがあります。免除の手続きをせずに未納のまま放置していると、いざというときに家族が遺族年金を受け取れない、という最悪の事態になりかねません。収入が厳しい時期こそ、未納のままにせず、免除・猶予の手続きをしておくことが、家族を守る土台になります。

ケース別の受給額の目安

金額は制度改正や物価スライドで毎年変わりますが、規模感を掴むために、子が4人いるひとり親世帯のイメージを示します。数字はあくまで概算のイメージで、実際は年金事務所で試算してもらってください。

亡くなった親の働き方 遺族基礎年金(子4人分の加算込み) 遺族厚生年金 合計の月額イメージ
長く会社員(厚生年金の期間が長い) 子の数に応じた加算あり 報酬比例部分の4分の3 比較的手厚い
会社員と個人事業主が半々 同上 会社員期間分のみ 中程度
ずっと個人事業主(国民年金のみ) 子の数に応じた加算あり なし 遺族基礎年金のみ。子が18歳到達年度末を過ぎると打ち切り

特に注意したいのが、いちばん下の「ずっと個人事業主」のケースです。遺族厚生年金がないため、遺族年金は遺族基礎年金だけ。しかもそれは末子が18歳に達した年度末で終わります。子が全員独立すれば遺族年金はゼロになり、遺された配偶者(ひとり親家庭では、さらに次の世代の養育者)はその後、自分の老齢年金まで無年金の期間を過ごすことになります。個人事業主のひとり親ほど、公的年金の外側で備えを厚くしておく必要があります。

収支シミュレーション:遺族年金で足りるか

遺族年金の金額が把握できたら、それで子ども4人の生活が回るかを収支表で検証します。手順はシンプルで、「遺された家族の毎月の支出」から「遺族年金+その他の収入」を引き、不足額を出します。

遺された家族の支出を見積もる

親が一人減った世帯の生活費は、いまの生活費そのままではなく、7割程度で見積もります。ここに、子ども4人分の教育費(進学期の重なりを含む)、住居費、社会保険料などを加えます。持ち家で団体信用生命保険付きの住宅ローンなら、万一のときにローンが完済されるため住居費は大きく下がります。賃貸なら家賃がそのまま残ります。

私の家計をもとにしたイメージでは、親が一人になった4人世帯の生活費は、教育費のピーク期を含む年で年450万〜550万円、落ち着いた年で年350万〜400万円といったところです。ここに、養育を担う人が働いて得る収入や、子どもの成長でかかる特別費のぶれを織り込みます。

この見積もりで見落としやすいのが、「子どもを引き受ける側の世帯の固定費増加」です。子ども4人が別の家庭に移れば、その家の住居費・光熱費・食費が増えます。手狭になれば引っ越しや増築も必要になるかもしれません。単純に「うちの生活費の7割」で計算すると、受け入れ側の家計の実態と合わないことがあります。私は、養育を担ってもらう可能性のある親族の生活も想像しながら、少し多めに見積もるようにしています。

教育費は特に、進学期の重なりを正確に反映させます。4人分の受験料・入学金・授業料・通学費が、どの年にいくら発生するかを一覧にし、それを支出の見積もりに足します。教育費のピークを平準化する考え方は別記事で扱っていますが、遺族年金の試算では「ならす前の、実際に発生する年ごとの金額」で見ておくほうが安全です。ピーク年に現金が不足しないだけの保障を用意しておく、という発想です。

不足額を出し、保険でカバーすべき金額を決める

「支出の総額(子が独立するまでの累計)」から「遺族年金の累計+預貯金・投資資産+学資保険の満期金+養育者の収入」を引いた差額が、生命保険でカバーすべき金額です。個人事業主で遺族厚生年金がなく、子が4人いて教育費のピークが控えているなら、この差額は2,000万円を超えることも珍しくありません。会社員で遺族厚生年金が手厚く、住宅ローンが団信付きなら、差額は数百万円程度にとどまることもあります。

この差額を、掛け捨ての定期保険や収入保障保険でカバーします。収入保障保険は「毎月◯万円を子が独立するまで支給」という形で、必要保障額の時間による逓減に合っているため、ひとり親の保障として使いやすい商品です。保険を子どもの独立に合わせて減らしていく手順は、別記事で扱っています。

具体的な考え方の例を挙げます。遺された家族に毎月30万円が必要で、遺族年金と養育者の収入で月18万円入るとすると、不足は月12万円。これを末子が独立するまで(仮に15年)カバーする収入保障保険に入る、という設計です。収入保障保険は、時間の経過とともに受取総額が減っていくぶん、同じ当初保障額の定期保険より保険料が安くなります。子どもの独立が進むごとに、この「毎月◯万円」の部分を減額していけば、保険料はさらに下がっていきます。

逆に、まとまった一時金が必要になる場面——住居の確保、当面の生活の立て直し、葬儀費用——には、定期保険で数百万円のカバーを別に用意しておくと安心です。「毎月の生活費は収入保障保険」「まとまった初期費用は定期保険」と役割を分けると、必要な保障をムダなく組めます。

不足分を埋める4つの手段

1. 生命保険(最優先で、差額の全額をカバー)

遺族年金と資産で埋まらない差額は、まず生命保険で確実にカバーします。ここをケチると、万一のときに子どもの進学や生活が直接おびやかされます。保険料を抑えたいなら、貯蓄性のない掛け捨ての定期保険や収入保障保険を選び、必要保障額ちょうどをカバーします。子どもの成長に応じて減額していく前提なら、当初の保険料もそれほど重くなりません。

2. 遺された家族が使える公的支援

遺族年金以外にも、ひとり親家庭には児童扶養手当(所得に応じて)、ひとり親家庭等医療費助成、就学援助、高校の授業料支援、大学の給付型奨学金・授業料減免などの支援があります。これらは万一のときに家計を大きく支えます。「遺族年金+保険」だけで全額をまかなおうとせず、公的支援でカバーされる部分を差し引いて、保険の額を現実的に設定します。

ただし注意したいのは、これらの支援は「養育する人の所得」で判定されるものが多いことです。子どもを引き受ける親族に一定以上の収入があると、児童扶養手当などが受けられないこともあります。誰が養育するかによって使える支援が変わるので、後見人・養育者を決めるときに、その人の世帯でどの支援が使えるかもあわせて確認しておくと、保険で埋めるべき金額の精度が上がります。

3. 預貯金・投資資産

すでにある資産は、そのまま遺族の生活費・教育費の原資になります。資産形成が進んでいるほど、必要な保険金額は小さくて済みます。逆に言えば、若くて資産がまだ薄い時期ほど、保険で厚くカバーする必要があります。資産が増えるにつれて保険を減らしていく、という考え方の土台になります。

4. 養育を担う人の収入と、生活の立て直し

ひとり親家庭で親に万一のことがあると、養育は次の担い手(親族や後見人)に移ります。その人が働いて得る収入も、収支の一部です。ただし、子ども4人を新たに引き受けると、その人の働き方も変わらざるを得ないため、収入を過大に見積もらないようにします。あくまで「保険と遺族年金と資産で生活の土台は確保し、養育者の収入は上乗せ」と位置づけます。

生活防衛資金は別枠で温存する

遺族年金や保険の設計を考えるとき、生活防衛資金は「万一のときに使うお金」とは分けて考えます。生活防衛資金は、病気・失業・事業の不調といった、生きている自分に起こる危機に備えるお金です。死亡に備える保険とは目的が違うため、混同すると両方が中途半端になります。ひとり親が生活防衛資金を厚めに持つ理由は生活防衛資金はいくら必要かと生活防衛資金を人一倍厚くしている理由で詳しく書いています。死亡保障は死亡保障、生活防衛資金は生活防衛資金、と箱を分けるのが原則です。

定期的に試算し直す

遺族年金の受給額は、自分の働き方(厚生年金の加入期間)が変われば変わります。会社員から個人事業主に転じた、あるいはその逆、といった変化があったら、遺族年金の試算をやり直し、それに応じて保険の額を調整します。また、子どもが一人独立するたびに、遺族基礎年金の加算が減り、同時に必要保障額も下がるため、保険を減額するタイミングになります。私は、年に1回、確定申告の時期に、遺族年金の試算・必要保障額・保険の額をセットで見直しています。

資産形成が進んでいけば、必要保障額はさらに下がります。若い頃に月12万円の収入保障が必要だったのが、資産が2,000万円貯まった時点では月8万円で足りる、というように、貯蓄・投資の残高が増えるぶん、保険で埋める差額は縮んでいきます。「資産が増えたら保険を減らす」を毎年少しずつ実行することで、保険料の総額を大きく圧縮できます。保険は入りっぱなしにせず、家計の状況に合わせて毎年チューニングするもの、と考えるのがひとり親の保障設計の基本です。

まとめ

  • 遺族年金は「遺族基礎年金(子の加算あり・末子18歳到達年度末まで)」と「遺族厚生年金(厚生年金の加入期間分・報酬比例の4分の3)」の2階建て。ずっと個人事業主だと遺族基礎年金だけで、しかも子の独立で終わる
  • 収支シミュレーションは「遺された家族の支出の累計」−「遺族年金の累計+資産+学資保険+養育者収入」。この差額が生命保険でカバーすべき金額
  • 個人事業主で子4人・教育費ピーク前なら差額は2,000万円超もありうる。会社員で団信付き住宅ローンなら数百万円のことも
  • 不足分は、掛け捨ての定期・収入保障保険で差額を確実にカバーしつつ、公的支援(児童扶養手当・医療費助成・就学支援・給付型奨学金)でカバーされる分を差し引いて現実的に設定。生活防衛資金は別枠

「遺族年金だけで足りるか」は、自分の年金記録と家計簿があれば、1時間ほどで試算できます。足りない分を保険で埋め、公的支援を織り込み、資産が増えたら保険を減らす。この循環を年1回まわすのが、ひとり親の保障設計です。次回は、災害で家に住めなくなったときの家計を扱います。

よくある質問

Q. 個人事業主だと遺族年金はどうなりますか?

A. 国民年金にしか加入していない期間は遺族厚生年金の対象外なので、遺族年金は遺族基礎年金だけになります。遺族基礎年金は子の数に応じた加算がありますが、末子が18歳に達した年度末で打ち切られます。会社員より公的な備えが薄いため、生命保険や資産で厚くカバーする必要があります。

Q. 遺族年金の金額はどこで分かりますか?

A. 年金事務所で、自分の年金記録をもとに「万一の場合の遺族年金の見込み額」を試算してもらえます。ねんきんネットでも、ある程度の目安は確認できます。金額は制度改正や物価スライドで毎年変わるため、保険を見直すタイミングで最新の数字を取り直すことをおすすめします。

Q. 遺族年金と保険があれば、生活防衛資金は少なくていいですか?

A. いいえ。遺族年金と死亡保険は「親が亡くなったとき」の備えで、生活防衛資金は「生きている自分が病気・失業・事業不振に陥ったとき」の備えです。目的が違うので、片方でもう片方を兼ねることはできません。ひとり親は収入の綱が1本なので、生活防衛資金はむしろ厚めに、死亡保障とは別枠で持ちます。

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シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年


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投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。

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この記事を書いた人:シンパパ資産設計士

シングルファーザー × 個人事業主 × 20年投資家。4人の子どもを育てながら、資産運用・節税・保険・不動産を自分で実践中。「等身大の失敗談」と「リアルな数字」を武器に、シンパパの家計設計を発信しています。

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