投資家として20年、個人事業主として20年、大家として20年のキャリアを歩みながら、4人の子どもを育てるシングルファーザーとして資産形成に取り組んできました。投資家人生の大半は株式中心のポートフォリオで組み立ててきましたが、あるタイミングから債券投資を意識的にポートフォリオへ組み込むようになりました。今回は、この方針転換に至った理由と、実際にどのように債券を組み入れているかについて振り返ってみたいと思います。
- 株式一辺倒だった時代の投資方針
- 方針転換のきっかけとなった出来事
- 債券投資を組み込むことで得られる効果
- どのような債券をどの程度組み入れているか
- 資金の使う時期に応じた資産配分の考え方
- 大家業との相乗効果をどう捉えているか
- 今後の方針転換の可能性について
- 債券の中でも何を選んでいるか、具体的な商品選定基準
- 金利上昇局面で感じた債券投資の難しさ
- 個人事業主の退職金代わりとしての債券の位置づけ
- 為替ヘッジありなしの商品選択で悩んだこと
- 債券比率を家族に説明するときに使っている例え
- 債券比率を引き上げるタイミングをどう判断しているか
- 大家業の資金と債券投資の役割の違いを整理する
- 債券投資を始めてから意識するようになった金利のニュースの見方
- 債券投資を組み込んでからのポートフォリオ全体の実感
- まとめ
- 免責事項
株式一辺倒だった時代の投資方針
投資を始めた当初から長らく、私のポートフォリオは株式が大部分を占めていました。個別株、投資信託、インデックスファンドと形は変わりながらも、基本的には「株式は長期的に成長する」という前提のもとに、資産の大半を株式に振り向けるという方針を貫いてきました。若い頃は投資期間を長く取れるという理由もあり、値動きの大きさをリスクとしてよりも成長機会として捉える傾向が強かったように思います。
大家業を通じて不動産という「株式とは異なる値動きをする資産」を保有していたこともあり、それが分散の役割を一定程度果たしてくれているという安心感もありました。この安心感が、投資資産全体を株式に集中させることへの抵抗感を薄めていた面もあったと思います。
方針転換のきっかけとなった出来事
株式一辺倒の方針を見直すきっかけになったのは、複数回の相場下落局面を経験する中で、資産全体の値動きの大きさに精神的な負担を感じるようになったことでした。関連記事の「暴落局面での投資判断、リーマンショック以降の学び」でも触れているように、下落局面では株式資産の評価額が短期間で大きく目減りすることを繰り返し経験してきました。
4人の子どもを育てるシングルファーザーという立場では、資産形成の失敗が家族全体の生活に直結するというプレッシャーがあります。若い頃であれば下落局面を「待てば回復する」という前提で乗り切ることもできましたが、教育資金や生活費の準備という具体的な資金需要が見えてくるにつれて、値動きの大きさそのものをコントロールする必要性を強く感じるようになりました。
債券投資を組み込むことで得られる効果
債券投資をポートフォリオに組み込む最大の目的は、資産全体の値動きの大きさを緩和することです。一般的に債券は株式と比べて価格変動が小さく、株式市場が下落する局面でも比較的値動きが安定している、あるいは逆の値動きをする傾向があるとされています。ただし、この相関関係は常に一定というわけではなく、金利動向など他の要因によって変化することもあるため、過信は禁物だと考えています。
実際にポートフォリオの一部を国内外の債券に振り向けたことで、相場全体が大きく下落した局面でも、資産全体の評価額の下落幅がそれまでよりも緩やかになったという実感があります。これは精神的な安定という意味でも大きな効果があり、下落局面で冷静な判断を保ちやすくなったと感じています。
どのような債券をどの程度組み入れているか
具体的には、個別の債券を直接購入するのではなく、国内外の債券に分散投資できる投資信託やETFを活用しています。個別債券は最低投資金額が大きくなりがちで、かつ流動性の面でも個人投資家には扱いにくい側面があるため、分散された商品を通じて間接的に債券市場へ投資する形を取っています。
組み入れの比率については、資産全体のうち1〜2割程度を目安としており、年齢やライフステージの変化に応じて徐々に比率を引き上げていく方針を考えています。この比率はあくまで自分自身のリスク許容度に基づいた目安であり、万人に当てはまる正解ではない点には留意が必要です。
資金の使う時期に応じた資産配分の考え方
債券を組み込む判断には、資金の使う時期に応じて資産配分を変えるという考え方も強く影響しています。教育資金として近い将来に使う予定のある資金は、値動きの大きい株式ではなく、より安定的な債券や預金で管理するようにしています。関連記事の「ジュニアNISA終了後、子ども名義の資産をどう引き継ぐ設計にしたか」でも触れているように、資金の性質に応じて運用方法を分けることは、資産形成全体の安定性を高める上で重要な考え方だと感じています。
一方、老後資金のように使う時期がまだ遠い資金については、引き続き株式中心の運用を維持し、長期的な成長を狙う方針を取っています。すべての資産を一律に債券化するのではなく、資金の性質ごとに配分を使い分けることが、私なりのバランスの取り方です。
大家業との相乗効果をどう捉えているか
大家業からの家賃収入という、株式とも債券とも異なる性質のキャッシュフローを持っていることも、資産全体の設計を考える上で重要な要素です。家賃収入は株式の配当ほど市場の影響を受けにくい一方、空室リスクや修繕費といった不動産特有のリスクを抱えています。
こうした複数の資産クラスを組み合わせることで、それぞれのリスクが同時に顕在化する可能性を下げ、資産全体としての安定性を高めることを意識してきました。株式、債券、不動産という異なる値動きをする資産を組み合わせる発想は、投資家としての経験を積み重ねる中で少しずつ身についてきた考え方です。
今後の方針転換の可能性について
現在の債券組み入れ比率は、あくまで今の自分のライフステージにおける判断であり、今後さらに見直していく可能性があります。子どもたちが成長し、教育資金の必要時期がより具体的になってくれば、債券の比率をさらに引き上げることも検討しています。逆に、金利環境や市場の状況によっては、比率を柔軟に調整する必要も出てくるかもしれません。
投資方針は一度決めたら固定するものではなく、自分自身の状況と市場環境の両方を見ながら、継続的に見直していくものだと考えています。
債券の中でも何を選んでいるか、具体的な商品選定基準
債券投資を組み込むと決めてから最初に悩んだのが、具体的にどの商品を選ぶかという点でした。国内債券、先進国債券、新興国債券とひとくちに債券といっても値動きの性質やリスクの水準は大きく異なります。特に新興国債券は利回りが高い一方で、為替変動や信用リスクが相対的に大きいため、資産全体の値動きを緩和するという当初の目的からは外れてしまうと考え、組み入れの中心からは外しました。
現在は、信託報酬(運用管理費用)が低く、幅広い国・地域の国債に分散投資できるインデックス型の債券ファンドを中心に据えています。個別の債券銘柄を選別するだけの専門知識や時間を十分に割けない以上、分散された商品を通じて債券市場全体の値動きを取り込む方が、自分の投資スタイルには合っていると判断しました。選定にあたっては、信託報酬の水準に加えて、投資対象となっている債券の平均残存期間(デュレーション)にも注意を払い、金利変動に対する感応度が過度に高くならないよう意識しています。
金利上昇局面で感じた債券投資の難しさ
債券投資を組み込んでから、必ずしも常に安定した値動きばかりだったわけではありません。市場金利が上昇する局面では、既発の債券価格は下落するという性質があり、実際に金利が上昇した時期には、保有している債券ファンドの評価額もそれなりに下落する場面を経験しました。
このとき改めて実感したのは、「債券は株式より安定している」という理解が、あらゆる局面で成り立つわけではないという当たり前の事実でした。金利上昇局面では株式・債券がともに下落するという場面も起こり得るため、債券を組み込んだからといって暴落局面を完全に避けられるわけではないという前提を、常に忘れないようにしています。それでも、株式ほど値動きが極端になりにくいという性質そのものは変わらず、資産全体の値動きを緩和する役割は一定程度果たしてくれていると感じています。
個人事業主の退職金代わりとしての債券の位置づけ
会社員であれば退職金や厚生年金といった老後の備えがある程度制度として用意されていますが、個人事業主にはそうした仕組みがありません。この点も、債券投資を組み込む判断に影響を与えた要素の一つです。小規模企業共済や国民年金基金といった制度も併用してはいるものの、それだけでは老後資金として十分とは言えないと感じており、株式による資産成長と、債券による安定的な資産保全を組み合わせることで、退職金がない働き方をカバーする設計を意識してきました。
老後資金として使う時期が近づくにつれて、債券をはじめとする安定資産の比率をさらに引き上げていく方針を考えていますが、具体的にどのタイミングでどの程度比率を引き上げるかについては、市場環境や自分自身の事業収入の状況を見ながら、柔軟に判断していきたいと考えています。
為替ヘッジありなしの商品選択で悩んだこと
海外の債券に投資する際、為替ヘッジあり・なしのどちらの商品を選ぶかという点も悩んだポイントでした。為替ヘッジありの商品は、為替変動の影響を抑えられる一方でヘッジコストがかかり、金利差が大きい局面ではこのコストが無視できない水準になることもあります。一方、為替ヘッジなしの商品は、為替変動の影響をそのまま受けるため、円高が進んだ局面では債券価格が安定していても円換算での評価額が下落することがあります。
最終的には、資産全体の値動きを緩和するという当初の目的に立ち返り、為替変動という追加のリスク要因をできるだけ抑えたいと考え、為替ヘッジありの商品を中心に組み入れる判断をしました。ヘッジコストが発生する分、期待リターンはやや下がる可能性がありますが、資産全体の安定性を優先するという方針には合っていると考えています。
債券比率を家族に説明するときに使っている例え
資産運用の話を子どもたちにする機会がある際、債券という言葉自体があまり馴染みがないためか、うまく伝わらないことがよくありました。そこで最近は、「株はチャレンジ枠、債券は守り枠」というような、シンプルな例えを使って説明するようにしています。
値動きが大きい分、大きく増える可能性もあるのが株式で、値動きは小さいけれど大きく減る可能性も低いのが債券だという、大まかなイメージだけでも伝わると、子どもたちなりに「なぜ複数の資産を組み合わせるのか」という考え方の入り口を理解してもらえるように感じています。難しい専門用語をそのまま説明するよりも、身近な例えに置き換えて伝えることの大切さは、投資家としての知識を家族に共有する上で、意外と重要なスキルだと感じるようになりました。
債券比率を引き上げるタイミングをどう判断しているか
現在、資産全体に占める債券の比率は1〜2割程度を目安としていますが、この比率を今後どのタイミングで引き上げていくかについても、自分なりの判断基準を持つようにしています。単純に年齢が上がったからという理由だけで機械的に比率を変えるのではなく、教育資金や老後資金として実際に資金が必要になる時期までの残り年数を基準に考えるようにしています。
具体的には、資金が必要になる時期までおおむね5年を切った段階で、その資金に対応する部分については株式から債券や預金へと段階的にシフトしていくという方針です。一括で切り替えるのではなく、複数回に分けて少しずつシフトすることで、切り替えのタイミングによる相場変動の影響を抑えることを意識しています。
この判断基準を持つようになったのは、資金が必要な時期の直前に暴落が起きてしまうと、株式のまま保有し続けていた場合に大きな痛手を受けるリスクがあるためです。時間を味方につけられる資金は株式で長期運用し、使う時期が迫っている資金は債券や預金で守るという、資金の性質に応じたメリハリのある管理を心がけています。
大家業の資金と債券投資の役割の違いを整理する
債券投資を組み込む中で、大家業からの家賃収入と債券から得られる利息収入の役割の違いについても、改めて整理するようになりました。家賃収入は不動産という実物資産から生まれるキャッシュフローであり、物件の維持管理や空室リスクといった手間とリスクを伴います。一方、債券からの利息収入は、投資信託やETFを通じて間接的に得られるものであり、大家業と比べると管理の手間は格段に少なく済みます。
この二つの収入源はどちらも「株式ほど値動きが激しくない」という共通点がありますが、性質はまったく異なるものだと捉えています。大家業は自分自身の手を動かして価値を生み出す側面がある一方、債券投資は市場に資金を委ねて対価を得るという、より受け身の性質を持つ資産です。両方をバランスよく組み合わせることで、能動的に関わる資産と、比較的手間をかけずに保有できる資産の両方を持つという、資産全体の管理のしやすさにもつながっていると感じています。
債券投資を始めてから意識するようになった金利のニュースの見方
債券投資を組み込む以前は、中央銀行の金融政策や金利動向に関するニュースを見ても、正直なところあまり自分ごととして捉えられていませんでした。株式投資が中心だった頃は、企業業績や個別の材料には敏感に反応していたものの、金利そのものの動きが自分の資産にどう影響するかという視点は、今思えば手薄だったと感じています。
債券をポートフォリオに組み込んでからは、政策金利の変更や長期金利の動向に関するニュースを見る際の解像度が明らかに上がりました。金利が上昇すれば保有している債券ファンドの評価額にどう影響するか、逆に金利が低下する局面ではどのような値動きが期待できるかを、以前よりも具体的にイメージできるようになったのです。
この変化は、単に債券投資のパフォーマンスを把握するためだけでなく、資産全体、そして大家業における不動産投資ローンの金利動向を考える上でも役立っています。株式、債券、不動産ローンという複数の資産・負債が、金利という共通の要因によってどう影響を受けるかを俯瞰的に理解できるようになったことは、債券投資を組み込んだことによる副次的だけれど大きな収穫だったと感じています。
債券投資を組み込んでからのポートフォリオ全体の実感
債券をポートフォリオに組み込んでから一定の期間が経ちましたが、株式一辺倒だった頃と比べて、資産全体のリターン自体はやや穏やかになったという実感があります。値上がり局面では株式ほどの伸びを享受できない一方、下落局面での目減りも緩やかであるため、資産全体としての振れ幅がひと回り小さくなったという体感です。
この実感を得てから改めて感じるのは、投資において「高いリターンを追求すること」と「精神的に無理なく資産形成を続けられること」は、必ずしも同じ方向を向くとは限らないという点です。シングルファーザーとして家族の生活を支えながら長期的に資産形成を続けていく上では、多少リターンを抑えてでも、無理なく継続できる値動きの水準に資産全体を整えておくことの価値を、債券投資を通じて実感しています。
債券投資という一つの資産クラスを組み込むという決断が、資産全体の設計、老後への備え、金利ニュースの見方、そして家族との対話の仕方にまで影響を及ぼしたことを振り返ると、投資方針の見直しは単なる数字の調整以上の意味を持つのだと改めて感じます。株式一辺倒だった頃の自分には見えていなかった視点を、この方針転換を通じて数多く得ることができました。今後も市場環境や家族の状況の変化に応じて、資産配分を柔軟に見直していく姿勢を大切にしていきたいと考えています。
まとめ
長らく株式一辺倒だった投資方針を見直し、債券投資をポートフォリオに組み込むようになった背景には、複数回の下落局面を経験する中で感じた精神的な負担と、教育資金という具体的な資金需要への意識がありました。株式、債券、不動産という異なる資産クラスを組み合わせることで、資産全体の安定性を高めるという考え方は、シングルファーザーとして家族の将来を見据えた資産形成に欠かせない視点になっています。
免責事項
本記事は筆者個人の投資経験に基づく一般的な情報共有を目的としたものであり、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。債券投資にも価格変動リスクや信用リスクが存在し、元本や利回りが保証されるものではありません。個別の投資判断については、ご自身の状況を踏まえた上で、金融商品取引業者やファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。


