投資を20年ほど続けていると、相場が急落する場面に何度も遭遇します。ニュースで「〇〇ショック」と報じられるような下落局面では、保有資産の評価額が数日で1割、2割と減っていくこともあり、頭では「長期投資だから大丈夫」と分かっていても、感情が揺さぶられるのは正直なところです。
4人の子どもを育てるシングルファーザーとして、教育費や生活費の管理を一人で担っている立場からすると、暴落局面で冷静さを失うことは、家計全体への影響という意味でも避けたいところです。この記事では、暴落時に感情ではなく指標をもとに判断するための、具体的なチェックリストを整理していきます。
なぜ暴落時に「感情」で動くと失敗しやすいのか
行動経済学の分野でよく知られているように、人は利益より損失に対して強く反応する傾向があります(プロスペクト理論と呼ばれる考え方です)。評価額が下がると、実際にはまだ確定していない「含み損」であっても、強い不安や焦りを感じ、「これ以上損を広げたくない」という心理から、本来は長期保有すべき資産を底値付近で売ってしまう、という行動につながりやすくなります。
過去の大きな下落局面を振り返ると、暴落後に相場が回復するまでには数か月から数年かかることもありますが、長期的には回復し、その後さらに上昇していったケースが多く見られます(ただし、これは過去の傾向であり、将来の相場動向を保証するものではありません)。暴落の最中に感情で売却してしまうと、その後の回復局面の恩恵を受けられず、結果的に「高く買って安く売る」という、資産形成において最も避けたいパターンに陥りやすくなります。
チェックリスト1:自分の資産配分(アセットアロケーション)を確認する
暴落時にまず確認すべきは、個別銘柄の値動きではなく、自分の資産全体の配分です。株式・債券・現金・不動産など、資産クラスごとにどれくらいの比率で保有しているかを確認します。
暴落は多くの場合、株式市場を中心に起こります。株式の比率が資産全体の中でどれくらいを占めているか、当初決めていた配分から大きくずれていないかを確認することで、「本当に危機的な状況なのか、それとも想定内の値動きなのか」を客観的に判断しやすくなります。生活防衛資金(生活費の半年〜1年分程度が目安とされます)が現金や預金で別途確保できているかどうかも、このタイミングで再確認しておきたいポイントです。
チェックリスト2:VIX指数(恐怖指数)の水準を見る
VIX指数は、米国株式市場(S&P500)のオプション価格から算出される、投資家の「相場の変動に対する不安の大きさ」を示す指標で、一般に「恐怖指数」とも呼ばれます。平常時はおおむね15〜20程度で推移することが多いとされますが、大きな下落局面では30〜40、過去の危機的局面では80近くまで急騰したこともあります(あくまで過去の実績に基づく目安であり、将来もその水準で推移するとは限りません)。
VIX指数が急騰している局面は、市場全体が強い不安に包まれている状態です。この数値自体が「今が買い時」「今が売り時」を直接示すものではありませんが、自分の感情がどれくらい市場全体の不安と連動して揺さぶられているかを、客観的な数字で確認する材料になります。VIX指数が極端に高い水準にあるときほど、感情的な判断を避け、一呼吸置く習慣をつけることをおすすめします。
チェックリスト3:長期の移動平均線や過去の下落率と比較する
株価指数(日経平均やS&P500など)が、200日移動平均線からどれくらい下方に乖離しているかを確認するのも、感情ではなく数字で状況を捉える方法のひとつです。過去の暴落局面での下落率(たとえば過去の大きな金融危機では株価指数が高値から30〜50%程度下落した例があります)と、今回の下落率を比較することで、「歴史的に見て今回はどの程度の位置にあるのか」を相対的に把握できます。
こうした比較はあくまで過去のデータに基づく参考情報であり、今回の下落が過去と同じパターンをたどる保証はありません。ただし、「感覚では”人生で一番の暴落”のように感じるが、過去のデータと比べるとまだ中規模の調整に過ぎない」といったことに気づけるだけでも、冷静さを取り戻す助けになります。
チェックリスト4:自分の投資目的と時間軸を再確認する
暴落時に最も大切なのは、「そのお金をいつ使う予定なのか」という時間軸を再確認することです。教育費や住宅資金など、5年以内に使う予定が決まっている資金であれば、そもそも株式などの値動きの大きい資産で運用すべきではなく、暴落の影響を強く受ける配分になっていること自体を見直す必要があります。
一方、老後資金など10年、20年先に使う予定の資金であれば、目先の暴落は「長期の運用期間の中の一時的な下落」に過ぎない可能性が高く、慌てて売却する必要性は低いと考えられます。暴落のたびに「このお金はいつ使う予定だったか」を自分に問い直す習慣をつけておくと、感情に流された判断を減らせます。
チェックリスト5:積立投資を止めない・増やす選択肢を検討する
つみたてNISAやiDeCoなどで定期的に積立投資をしている場合、暴落時こそ積立を止めないことが重要だと言われます。定額を継続的に投資する「ドルコスト平均法」の考え方では、価格が下がっている局面ほど、同じ金額でより多くの口数を購入できるため、長期的な平均取得単価を引き下げる効果が期待できます。
もちろん、これは「暴落中に必ず得をする」という保証ではなく、その後の相場がどう動くかによって結果は変わります。ただし、暴落のたびに積立を止めてしまうと、この効果自体を放棄することになるため、あらかじめ「暴落時こそ淡々と積立を継続する」というルールを自分の中で決めておくことが、感情的な判断を防ぐ有効な手段になります。余裕資金がある場合、非課税枠の範囲内で買い増しを検討するのも一案ですが、これは生活防衛資金を確保したうえでの話であり、無理をする必要はありません。
チェックリスト6:情報源との付き合い方を見直す
暴落時ほど、ニュースやSNSでは刺激的な見出しや不安を煽る発信が増えます。「暴落は序章に過ぎない」「まだまだ下がる」といった強い言葉に触れる頻度が増えると、実際の下落率以上に不安が増幅されやすくなります。
対策として有効なのは、暴落時にニュースやSNSをチェックする頻度をあえて減らすことです。日中に何度も株価アプリを開いて評価額を確認する習慣がある人ほど、価格の上下に一喜一憂しやすくなります。あらかじめ「相場を確認するのは1日1回、決まった時間だけ」といったルールを決めておくと、余計な情報に振り回されにくくなります。また、発信者が誰なのか(金融機関の公式情報なのか、個人の予想なのか)を意識して情報を取捨選択することも、感情的な判断を減らすうえで役立ちます。
実は、暴落時のチェックリストの中で最も重要なのは、暴落が起きる「前」に準備しておくことです。暴落が実際に起きてから資産配分や生活防衛資金を見直そうとしても、その時点ではすでに評価額が下がり、冷静な判断がしにくくなっています。
平常時のうちに、生活防衛資金の目安額を確保しておくこと、自分にとって無理のない株式比率を決めておくこと、そして「暴落時にはこう行動する」というルールを紙やメモに書き出しておくことが、実際に暴落が来たときの拠り所になります。個人的には、過去の暴落局面を経験するたびに、このルールを見直し、次の暴落に備えてアップデートするようにしています。ルールは一度決めたら終わりではなく、経験を重ねるごとに磨いていくものだと感じています。
また、暴落が落ち着き、相場が回復してきた頃には、その暴落局面での自分の行動を振り返る時間を取るようにしています。事前に決めたチェックリストどおりに行動できたか、感情に流されて余計な売買をしてしまわなかったか、生活防衛資金は十分だったかを確認します。
この振り返りを重ねることで、次の暴落が来たときに、より落ち着いて対応できるようになっていきます。暴落は投資を続けている限り何度も訪れるものです。1回1回の暴落を「乗り越えて終わり」にするのではなく、次に活かす経験として捉えることが、長期的に資産形成を続けていくうえで大切だと考えています。
我が家の暴落時のルール
シングルファーザーとして家計を一人で管理していると、暴落時に「今すぐ売って現金化すべきか」という不安が頭をよぎることは正直あります。そこで我が家では、暴落が起きたときに慌てて判断しないよう、あらかじめ「暴落時に確認する項目」をメモにまとめ、感情ではなくそのメモに沿って行動する、というルールを決めています。
具体的には、生活防衛資金が確保できているかの確認、資産配分が当初の計画からどれだけずれているかの確認、そして積立設定を止めずに継続する、という3点を最優先で確認するようにしています。以前このブログで書いた「暴騰相場で買い増しすべきか待つべきか」の記事とも通じる部分がありますが、相場が大きく動くときほど、事前に決めたルールに従って淡々と行動することの重要性を感じています。「シングルファーザーの緊急予備資金」の記事で触れた生活防衛資金の考え方も、暴落時に冷静でいるための土台になっています。
まとめ
投資の暴落局面では、感情に任せて売却すると、その後の回復局面の恩恵を受けられず、資産形成にとって不利な結果になりやすいことが知られています。感情に流されないためには、資産配分の確認、VIX指数などの客観的な指標のチェック、過去の下落局面との比較、自分の投資目的・時間軸の再確認、そして積立投資を止めないというルールを、あらかじめチェックリストとして用意しておくことが有効です。暴落は誰にとっても不安なものですが、事前に決めたルールに沿って行動することで、感情的な判断を減らすことができます。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資判断や売買のタイミングを推奨するものではありません。記載した指標や過去の下落率はあくまで過去の実績に基づく参考情報であり、将来の相場動向を保証するものではありません。投資は自己判断・自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。


