個人事業主の国民健康保険料、世帯構成を変えずにできる所得調整の工夫

暮らしと家計の整理 税金・確定申告

個人事業主として20年近く国民健康保険に加入し続けてきましたが、毎年6月頃に届く保険料の決定通知書を見るたびに、その金額の大きさに驚かされます。会社員時代の社会保険料とは違い、国民健康保険料は前年の所得に応じて計算され、しかも会社のような労使折半がないため、全額を自分で負担しなければなりません。個人事業主になって初めてこの負担の重さを実感したという人も多いのではないでしょうか。私自身も、会社員から独立してすぐの頃は、この保険料の高さに驚き、家計簿を見直すきっかけになったことをよく覚えています。世帯構成を変える、つまり扶養家族の人数を変えるといった大がかりな対応は現実的ではない中で、私は所得の計上方法や各種控除の活用によって、保険料の負担を少しでも抑える工夫を毎年続けてきました。この記事では、世帯構成を変えずにできる国民健康保険料の所得調整の工夫について、実体験を踏まえてお伝えします。事業だけでなく投資や不動産賃貸業も並行してきた立場から、複数の所得源を持つ個人事業主ならではの視点も交えてご紹介したいと思います。

国民健康保険料の仕組み——所得割・均等割・平等割

国民健康保険料は、多くの自治体で「所得割」「均等割」「平等割」(自治体によっては資産割も)という複数の要素を組み合わせて計算されます。所得割は前年の所得に応じて金額が変わる部分で、所得が高いほど保険料も高くなります。均等割は世帯の加入者1人あたりにかかる定額の部分で、家族の人数が多いほど負担が増えます。平等割は1世帯あたりにかかる定額部分です。子どもの人数が多い世帯ほど均等割の負担も大きくなりますが、自治体によっては子どもに関する均等割の軽減措置を設けているところもあり、こうした情報も毎年確認するようにしています。

このうち、個人事業主が自分でコントロールできる余地が最も大きいのが所得割の部分です。所得割は、事業所得や不動産所得、その他の所得を合算した「基準総所得金額」(各種控除後の金額)をもとに算定されるため、必要経費を適切に計上し、各種所得控除を漏れなく活用することが、保険料の負担軽減に直結します。

ここで注意したいのは、国民健康保険料の所得割の計算に使われる所得の範囲は、所得税の計算とは微妙に異なる部分があるという点です。たとえば、所得税の計算では配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除、医療費控除といった多くの所得控除が適用されますが、国民健康保険料の所得割の計算では、基本的に基礎控除(住民税の基礎控除額)のみが差し引かれ、それ以外の人的控除の多くは反映されません。つまり、所得税を大きく減らせる控除を使ったからといって、それがそのまま国民健康保険料の軽減にはつながらないケースがあるということです。一方で、青色申告特別控除や小規模企業共済等掛金控除、社会保険料控除といった、事業所得や所得金額そのものを圧縮する控除は、国民健康保険料の算定にもしっかり反映されます。この違いを理解しておくことが、効果的な対策を考える上での前提になります。

私が事業を始めた当初は、この仕組みをあまり理解しておらず、確定申告のたびに「今年はいくら儲かったか」だけを見て一喜一憂していました。しかし国民健康保険料の通知書を毎年受け取るうちに、所得税や住民税だけでなく、国民健康保険料も含めたトータルの負担を意識して確定申告に臨むことの重要性に気づくようになりました。

また、国民健康保険料には賦課限度額(年間の上限額)が定められており、所得がある一定水準を超えると、それ以上所得が増えても保険料は頭打ちになる仕組みになっています。この上限額は自治体や年度によって変わるため一概には言えませんが、事業が好調で所得が大きく伸びた年には、この上限額に近づいている可能性もあります。私は毎年、確定申告の試算をする際に、前年の保険料決定通知書と照らし合わせながら、自分の所得水準が上限にどの程度近いのかを確認するようにしています。上限に近い場合は、無理に所得を圧縮する対策を追加で講じる必要性は薄れる一方、上限から離れている場合は、控除の活用による軽減効果がそのまま保険料に反映されやすいため、対策の優先度を判断する材料にしています。

青色申告特別控除をフル活用する

国民健康保険料の所得割は、所得税の計算とは基準所得の範囲が一部異なりますが、青色申告特別控除(最大65万円)は国民健康保険料の算定基礎となる所得からも控除の対象になります。つまり、複式簿記による記帳とe-Taxでの申告(または電子帳簿保存)という要件を満たして65万円の青色申告特別控除を受けることは、所得税・住民税だけでなく、国民健康保険料の軽減にも直結します。

私は事業を始めた最初の数年は簡易な帳簿で白色申告をしており、青色申告特別控除の恩恵を受けられていませんでした。税理士に相談して青色申告に切り替え、複式簿記での記帳とe-Taxでの申告を行うようになってから、所得税だけでなく国民健康保険料の負担も目に見えて軽減されたことを実感しています。青色申告特別控除は、要件さえ満たせば誰でも活用できる制度でありながら、その効果は所得税・住民税・国民健康保険料の3方向に及ぶという点で、非常にコストパフォーマンスの高い制度だと感じています。

なお、青色申告特別控除には65万円のほかに、複式簿記による記帳のみでe-Taxや電子帳簿保存の要件を満たさない場合は55万円、簡易簿記の場合は10万円という段階があります。私は当初、紙の帳簿とクラウド会計ソフトを併用していたため55万円の控除にとどまっていましたが、e-Taxでの電子申告に完全移行したことで65万円控除の要件を満たせるようになりました。わずか10万円の差に見えるかもしれませんが、この10万円分の所得が圧縮されることで、所得税・住民税に加えて国民健康保険料の所得割も相応に軽減されるため、要件を満たせるのであれば必ず65万円控除を目指すべきだと考えています。

小規模企業共済・経営セーフティ共済による所得圧縮

小規模企業共済の掛金は、所得税の計算上「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除の対象になりますが、この控除は国民健康保険料の算定基礎となる所得からも控除されるため、掛金を積み立てることで保険料の負担も同時に抑えられます。

一方、経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金は、必要経費として事業所得そのものを圧縮する形になるため、こちらも結果的に国民健康保険料の算定基礎を下げる効果があります。私は以前、経営セーフティ共済についての記事でも触れましたが、これらの共済制度は、単なる節税ツールとしてだけでなく、国民健康保険料の負担軽減という観点からも活用する価値があると考えています。

ただし、これらの制度はあくまで所得を「将来に先送りする」性質のものであり、将来解約したり給付を受け取ったりする際には、その分の所得が計上され、その年の国民健康保険料にも影響が出る可能性があります。目先の保険料だけを見て掛金を積み立てるのではなく、将来受け取るタイミングでの負担も見据えて計画することが大切だと感じています。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金についても同様の効果があります。掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、国民健康保険料の算定基礎からも控除されます。私は事業所得が安定してきたタイミングでiDeCoの掛金を上限額まで拠出するようにしましたが、老後資金の準備をしながら、同時に毎年の保険料負担も軽減できるという点で、非常に効果を実感しやすい制度だと感じています。ただし、iDeCoは原則として60歳になるまで引き出せないという流動性の低さがあるため、事業用の運転資金とは切り離して考える必要があります。私は事業用の資金繰りに影響が出ない範囲で、毎年の掛金額を設定するようにしています。

これら小規模企業共済・経営セーフティ共済・iDeCoの3つの制度は、いずれも掛金の全額または一部が所得控除の対象になるという共通点がありますが、掛金の上限額、資金の流動性(途中でどの程度引き出しやすいか)、将来受け取る際の税制の扱いがそれぞれ異なります。私は事業の状況、手元資金の余裕度、そして将来のライフイベントの見通しを踏まえて、毎年これら3つの制度への配分を見直すようにしています。特に、賃貸経営で大規模修繕などまとまった資金が必要になる時期が見えている場合は、流動性の低いiDeCoよりも、比較的資金化しやすい経営セーフティ共済への配分を厚くするなど、資金使途の見込みとあわせて優先順位をつけるようにしています。

経費の計上漏れをなくす——地道な積み重ね

保険料の負担を抑える上で、特別な制度を使わなくても効果があるのが、日々の経費計上を漏れなく行うという地道な作業です。事業に関連する支出であるにもかかわらず、レシートを紛失したり、家事按分の対象になる支出を経費として計上し忘れたりすると、その分だけ事業所得が過大になり、結果として所得税・住民税に加えて国民健康保険料の負担も余計に増えてしまいます。

私は自宅の一部を事務所として使っているため、家賃や光熱費の一部を家事按分で経費計上しています。按分の割合を毎年見直し、実態に即した合理的な根拠を持てるようにしていますが、この地道な作業を怠らないことが、結果的に保険料の負担にも影響してくることを実感しています。また、事業用のクレジットカードを使い、明細を毎月確認する習慣をつけることで、経費の計上漏れを防ぐようにしています。

さらに、賃貸経営を行っている場合は、不動産所得の計算においても、修繕費と資本的支出の区分、減価償却費の計上、借入金利子の扱いなど、細かい論点が数多くあります。これらを正確に処理することは、所得税だけでなく国民健康保険料にも影響します。私は毎年、確定申告の前に前年の帳簿を見直し、経費として計上できるはずのものが漏れていないか、税理士とともにチェックする時間を設けています。特に、小規模な修繕であっても資本的支出として扱ってしまい、本来一括で経費にできるものを何年にもわたって減価償却してしまっているケースがないか、といった点は毎年確認するようにしています。地味な作業の積み重ねですが、こうした精緻な経費管理が、結果的に何年にもわたる保険料負担の差につながっていくと実感しています。

世帯構成を変えずにできる工夫の限界と考え方

冒頭で触れた通り、国民健康保険料は世帯単位で計算される部分(均等割・平等割)があるため、扶養家族の人数を変えれば保険料も変わりますが、これは家族の実態を伴わない形で行うべきものではありません。私自身、4人の子を育てる世帯として、世帯構成そのものを保険料対策のために動かすという発想は持っていません。あくまで、実態のある所得や控除の適用範囲の中で、合法的にコントロールできる部分に絞って工夫するというのが、私の一貫した考え方です。

この考え方に基づくと、実質的に取り組めるのは、青色申告特別控除の活用、各種共済制度による所得圧縮、経費の適正な計上、そして事業専従者給与の活用といった、所得税の節税とも重なる範囲の工夫が中心になります。国民健康保険料だけを単独で最適化しようとするのではなく、所得税・住民税・国民健康保険料をまとめて「事業所得に連動する負担」として捉え、確定申告全体を通じて最適化するという視点が重要だと感じています。

事業専従者給与を活用する場合も、事業所得を圧縮する効果があるため、国民健康保険料の負担軽減につながります。以前「事業専従者給与、家族に払う給与を経費にする際の実務ポイント」という記事でも触れましたが、専従者給与を導入すると、事業主本人の所得は圧縮される一方で、専従者自身が新たに国民健康保険や国民年金に加入する必要が生じる場合があり、世帯全体で見た社会保険料の負担がどう変化するかを総合的に試算する必要があります。単純に「事業主本人の保険料が下がるから得だ」と判断するのではなく、専従者側の負担増加分も含めて、世帯トータルでの損得を計算することが欠かせません。こうした複数の制度が絡み合う中で、どれか一つだけを見て判断するのではなく、事業所得・税金・社会保険料を一体として捉え、世帯全体でのキャッシュフローを毎年見直すことが、結果的に無理のない負担で事業を続けていくためのコツだと考えています。

保険料の納付方法と資金繰りへの組み込み

最後に、実務面での工夫についても触れておきます。国民健康保険料は、年間の保険料を6月から翌年3月までの分割(自治体によって回数は異なります)で納付する形が一般的です。私は、この納付スケジュールも予定納税や住民税の納期とあわせて年間の資金繰りカレンダーに組み込み、支払いが集中する月がないかを確認するようにしています。

口座振替を利用することで納め忘れを防げますが、事業所得の変動が大きい個人事業主の場合、前年の所得が高かった翌年に保険料の負担が重くのしかかり、口座残高が不足するリスクもあります。私は、確定申告が終わった時点でその年の保険料をおおまかに試算し、月々の積み立てとして資金を確保しておくことで、こうしたリスクを避けるようにしています。

自治体によっては、保険料の試算ツールをウェブサイトで公開しているところもあり、前年の所得金額を入力するだけで、おおよその年間保険料を確認できます。私はこうしたツールを、確定申告書を提出した直後に必ず利用し、その年の保険料の見込みを早めに把握するようにしています。保険料の通知書が実際に届くのは6月頃ですが、それを待たずに早い段階で見込みを立てておくことで、資金繰り計画への反映を前倒しでき、結果として年間を通じた資金管理の精度が上がったと感じています。前年所得をベースに計算される予定納税や住民税と同様、国民健康保険料も「前年の頑張りが翌年の負担として跳ね返ってくる」制度であることを常に意識し、好調な年ほど翌年の負担増を見越した資金繰りを心がけることが重要だと感じています。

まとめ

個人事業主にとって国民健康保険料は、所得に連動して負担が大きく変動する重い出費です。世帯構成を変えるという大がかりな対応は現実的ではありませんが、青色申告特別控除のフル活用、小規模企業共済や経営セーフティ共済による所得圧縮、経費の適正な計上といった、所得税の節税と重なる工夫を積み重ねることで、保険料の負担もあわせて軽減できる可能性があります。私自身、確定申告を「所得税だけの手続き」と捉えず、国民健康保険料まで含めたトータルの負担を意識するようになってから、より計画的に事業のお金と向き合えるようになったと感じています。所得税・住民税・国民健康保険料は、いずれも前年の所得を基準に計算されるという共通点があり、これらをまとめて「事業のキャッシュフローに翌年重くのしかかる負担」として捉え、年間を通じて備えておくことが、個人事業主として長く事業を続けていくための土台になると実感しています。

免責事項

本記事は、個人の経験に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の税務処理や保険料の削減策を推奨するものではありません。国民健康保険料の計算方法は自治体によって異なり、また制度が改正される可能性もあります。実際の保険料の計算や所得調整の判断にあたっては、税理士など専門家、またはお住まいの自治体の国民健康保険窓口にご確認いただくようお願いいたします。自治体ごとに保険料率や賦課方式が異なりますので、本記事の内容はあくまで一般的な考え方の一例としてご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました