こんにちは、シンパパ資産設計士です。
ライフプランの作り方シリーズ第5回です。前回は教育費について詳しく解説しました。今回は、人生でもう一つ大きなウェイトを占める「住宅費」を、ライフプランにどう組み込むかを解説していきます。テーマは「住宅ローンが終わっても、住宅費はゼロにならない」という、意外と見落とされがちな事実です。
「住宅ローンを完済したら安心」という誤解
多くの人は、住宅ローンを完済することを、住宅にまつわる支出のゴールだと考えています。もちろん、住宅ローンの完済は大きな節目であり、家計にとって喜ばしい出来事です。しかし、住宅ローンが終わったからといって、住宅にまつわる支出が完全にゼロになるわけではありません。持ち家である以上、次のような費用が、ローン完済後もずっと発生し続けます。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料(地震保険を含む場合も)
- 修繕費(外壁・屋根・給湯器・エアコン等の設備交換)
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
これらの費用は、家計管理シリーズで紹介した「固定費」「特別費」に該当し、住宅を所有し続ける限り、生涯にわたって発生します。
なぜ「ローン完済=安心」という誤解が生まれるのか
住宅ローンの毎月の返済額は、多くの家庭にとって固定費の中でも最大の項目です。だからこそ、その返済が終わるというニュースは、それだけで「これで家計は一気に楽になる」という強い印象を与えます。この印象自体は間違っていません。実際、ローン返済がなくなれば、毎月の資金繰りは大きく改善します。しかし、「返済がなくなる」ことと「住宅にまつわる支出がなくなる」ことは、まったく別の話です。この2つを混同してしまうと、ローン完済後に想定外の修繕費が発生したとき、「もう住宅にお金がかかるとは思っていなかった」という状態で慌てることになりかねません。あらかじめこの違いを正しく理解しておくことが、何よりの備えになります。
兼業大家としての視点から見た住宅費
兼業大家として複数の物件を管理してきた経験から言えるのは、入居者に貸す物件も、自分が住む自宅も、「建物である以上、必ず経年劣化し、修繕が必要になる」という点では同じだということです。賃貸物件であれば、この修繕費は事業経費として明確に管理・計上しますが、自宅の場合は「生活費」に埋もれてしまい、意識されにくいという違いがあります。自宅についても、賃貸経営と同じような感覚で、修繕費を計画的に積み立てておくという発想を持つことをおすすめします。
固定資産税・都市計画税の考え方
固定資産税・都市計画税は、毎年ほぼ決まった時期に、市区町村から納税通知書が届きます。金額は土地・建物の評価額によって変動しますが、一度確定すれば、その後数年間は大きく変わらないことが多いため、年間の見積もりとしては比較的予測しやすい費用です。家計管理シリーズ第6回で紹介した「特別費」の考え方に沿って、年払いの場合は12で割って毎月積み立てておくと、納税月に慌てずに済みます。
火災保険料:更新のたびに見直す
火災保険は、多くの場合5年〜10年単位で契約を更新します。更新のたびに、保険会社・補償内容を見直すことで、保険料を適正化できる可能性があります。特に、水災リスクの低い地域に住んでいる場合、水災補償を外す・縮小するといった選択肢も検討する価値があります(保険の考え方については、保険関連の記事もあわせてご参照ください)。ライフプランにおいては、更新のたびに保険料が変動する可能性がある前提で、やや余裕を持った見積もりにしておくことをおすすめします。
火災保険料は年々上昇傾向にある
近年、自然災害の頻発化に伴い、火災保険料は全体として上昇傾向にあります。水災等級制度の導入など、制度面の変更も保険料に影響を与えています。数年前に契約した際の保険料をそのままライフプランに反映させていると、次回更新時に想定より保険料が上がっていて、見積もりが狂ってしまう可能性があります。ライフイベント表に保険の更新時期を書き込んでおき、その都度、最新の保険料水準を反映させる習慣をつけておくことをおすすめします。
地震保険は入るべきか
地震保険は、火災保険とセットで加入するかどうかを選択できる制度です。地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の最大50%までという制約があり、実際に大地震が発生した際に、住宅の再建費用を十分にカバーできない可能性があります。この制度上の限界を理解した上で、地震保険料を積み立てに回すか、保険として加入するかは、居住地域の地震リスクや、家庭の資産状況を踏まえて判断する必要があります。
修繕費:最も見積もりが難しく、最も金額が大きい
住宅費の中で、最も見積もりが難しく、かつ最も金額のインパクトが大きいのが修繕費です。主な修繕項目と、一般的な交換・修繕の周期の目安は次の通りです。
| 修繕項目 | 周期の目安 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 外壁塗装 | 10〜15年 | 80万円〜150万円 |
| 屋根の補修・葺き替え | 15〜30年 | 50万円〜200万円 |
| 給湯器の交換 | 10年前後 | 10万円〜30万円 |
| エアコンの交換 | 10年前後 | 1台あたり10万円〜20万円 |
| 水回り設備の交換(キッチン・浴室等) | 15〜20年 | 50万円〜150万円 |
この表からも分かる通り、住宅の修繕は、10年に一度は必ず何らかの大きな出費が発生すると考えておくのが現実的です。「今のところ壊れていないから大丈夫」と楽観視していると、複数の設備が同時期に寿命を迎え、まとまった出費に直面することになります。
複数の設備の寿命が重なる「修繕のピーク」
給湯器、エアコン、外壁塗装は、それぞれ独立した周期で寿命を迎えますが、新築時にすべて同時に設置・施工されているケースが多いため、設備の寿命も同じ時期に集中しやすいという傾向があります。教育費のピークと同様、住宅修繕にもピークが存在することを理解しておくと、備えの精度が上がります。特に、外壁塗装のタイミング(築10〜15年)と、給湯器・エアコンの寿命(築10年前後)が重なる時期は、住宅修繕費が一時的に大きく膨らむ可能性が高い時期だと言えます。
修繕を先延ばしにするリスク
資金的な余裕がないときに、修繕を先延ばしにしたくなる気持ちは理解できますが、外壁や屋根の劣化を放置すると、雨漏りなど、より深刻で高額な被害につながることがあります。小さな修繕を先延ばしにした結果、大きな修繕が必要になり、トータルではより高くつくというのは、住宅メンテナンスにおいてよく起こる失敗パターンです。専門業者による定期点検を活用し、早期発見・早期対応を心がけることも、長期的なコスト削減につながります。
マンションと戸建てで異なる備え方
分譲マンションであれば、多くの場合、毎月の管理費・修繕積立金という形で、あらかじめ修繕費用の一部が徴収される仕組みになっています。この場合、個人で別途多額の修繕費を積み立てる必要性は、戸建てに比べて低くなります。ただし、大規模修繕のタイミングで修繕積立金が不足し、追加の一時金が徴収されるケースもあるため、管理組合の長期修繕計画を定期的に確認しておくことをおすすめします。
修繕積立金の値上がりも見込んでおく
マンションの修繕積立金は、多くの場合、築年数の経過とともに段階的に値上がりする「段階増額積立方式」が採用されています。購入当初の低い金額のまま将来も推移すると思い込んでいると、数年後に想定外の値上がりに直面することになります。長期修繕計画書には、将来の積立金額の見通しが記載されていることが多いため、この情報もあわせてライフイベント表に反映させておくと、より精度の高い見積もりになっていきます。
管理組合の総会には積極的に参加する
マンションの管理費・修繕積立金の使い道は、管理組合の総会で決定されます。総会に参加し、長期修繕計画の内容や、積立金の運用状況を把握しておくことは、単なる義務ではなく、自分自身のライフプランの精度を高めるための重要な情報収集の機会でもあります。
一方、戸建ての場合は、こうした強制的な積立の仕組みがありません。自分で意識的に「住宅修繕費専用の積立」を作っておかないと、いざ修繕が必要になったときに資金が用意できていないという事態に陥りがちです。目安としては、家計管理シリーズ第6回で紹介した「年間支出÷12か月」の考え方を応用し、上記の修繕項目を周期で割った月額を、住宅修繕専用口座に積み立てておくことをおすすめします。
具体的な積立額の試算例
仮に、外壁塗装100万円(12年周期)、屋根補修100万円(20年周期)、給湯器20万円(10年周期)、エアコン2台で30万円(10年周期)という前提で試算すると、年換算では、外壁塗装が約8.3万円、屋根補修が約5万円、給湯器が2万円、エアコンが3万円で、合計約18.3万円になります。これを12か月で割ると、月あたり約1.5万円が住宅修繕費の積立目安になります。この金額はあくまで一例であり、実際の住宅の状態・築年数によって大きく変わりますが、具体的な数字に置き換えて試算してみること自体が重要です。
専門家による建物診断の活用
自分で正確な修繕時期・費用を見積もるのが難しい場合は、ホームインスペクション(住宅診断)を活用する方法もあります。専門家が建物の状態を診断し、今後必要になる修繕の時期や概算費用を提示してくれるサービスで、数万円程度の費用で受けられることが多く、長期的な住宅費の見積もり精度を高める上で有効な投資だと言えます。
住宅費をライフイベント表に組み込む
前回・前々回で作成したライフイベント表に、住宅に関する情報も追加していきます。具体的には、「いつ、どの設備の寿命が来そうか」を、購入時期・設置時期から逆算して書き込む作業です。給湯器やエアコンであれば設置時期が明確に分かっているはずなので、そこから10年後を目安に、表に書き込んでおきます。外壁・屋根については、前回の塗装・補修時期が分かれば、そこから周期分先の年を書き込みます。
賃貸の場合の住宅費の考え方
ここまで持ち家を前提に解説してきましたが、賃貸住まいの場合は、修繕費の負担は原則として大家側にあるため、入居者としてはこの点でのリスクを相対的に低く抑えられます。一方で、賃貸には「家賃を払い続ける限り、住居費が一生発生し続ける」という別の性質があります。ライフプランを考える上では、「持ち家か賃貸か」という選択自体も、長期的な住宅費の見積もりに大きく影響する重要な判断だと言えます。
賃貸か持ち家か、生涯コストで比較する視点
「賃貸と持ち家、どちらが得か」という議論は昔から繰り返されてきましたが、単純な優劣をつけられるものではなく、ライフステージ・収入の安定性・住みたい地域・将来の家族構成の見通しによって最適解は変わります。持ち家は購入時の初期費用と修繕費という負担がある一方、資産として残ります。賃貸は初期費用・修繕費の負担がない一方、生涯にわたって家賃を払い続ける必要があり、資産としては残りません。どちらを選ぶにせよ、生涯にわたる総コストで比較検討することが、感情論に流されない冷静で客観的な判断につながっていきます。
老後の住まいという視点も忘れずに
持ち家の場合、老後に住宅ローンの返済負担がなくなることは大きな安心材料になりますが、一方で、高齢になってからのバリアフリー化や、介護が必要になった場合の住宅改修費用も視野に入れておく必要があります。一方で賃貸の場合は、高齢になってからの契約更新や入居審査のハードルが上がってしまう可能性がある点にも十分な注意が必要です。老後の住まいについては、次回以降のシリーズ、特に第9回の老後資金の計算とあわせて、じっくり考えていくことになります。
まとめ|住宅費は「一生ついて回るコスト」として見積もる
今回のポイントを整理します。
- 住宅ローンを完済しても、固定資産税・保険料・修繕費は生涯発生し続ける
- 修繕費は10年に一度は大きな出費が発生する前提で見積もる
- マンションは管理費・修繕積立金である程度カバーされるが、戸建ては自分で修繕費を積み立てる必要がある
- ライフイベント表に「設備の寿命が来る年」を書き込んでおくことで、事前の備えがしやすくなる
次回は、住宅と並んで見落とされがちな「車」について、生涯でいくらかかるのかを詳しく試算していきます。
住宅費と向き合って感じたこと
兼業大家として複数の物件を管理する中で、「建物は放っておくと必ず劣化する」という当たり前の事実を、嫌というほど実感してきました。建物というものは、どれだけ丁寧に手入れをしていても、時間の経過とともに必ず劣化していくものです。この経験が、自宅の住宅費を考える上でも大きく役立っています。「今壊れていないから大丈夫」ではなく「いつか必ず壊れるものとして、今から備えておく」という発想の転換こそが、住宅費をライフプランに正しく組み込むための最大のポイントです。
住宅ローンという分かりやすい支出がなくなった後こそ、気を緩めることなく、油断せずに住宅と向き合い続ける姿勢が何よりも必要です。この記事が、住宅ローン完済後の住宅費という、意外と見落とされがちな、しかし大切なテーマに光を当てるきっかけになれば幸いです。長く安心して住み続けていくためにも、今のうちから少しずつ、着実に準備を進めていきましょう。家族が安心して暮らし続けられる住まいを守ることは、資産形成とまったく同じくらいに価値のある、とても大切な取り組みだと言えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 住宅の修繕費は、具体的にどれくらい積み立てておけばいいですか?
一般的な目安として、戸建ての場合、月々1万円〜2万円程度を修繕専用の積立として確保しておくと、大きな修繕が来たときにも慌てにくくなります。ただし、住宅の築年数・構造・立地によって必要な金額は変わるため、専門家による診断(ホームインスペクション等)を活用するのも一つの方法です。
Q2. 賃貸から持ち家に住み替える予定がある場合、どう計画すればいいですか?
住み替えのタイミングをライフイベント表に組み込み、頭金・諸費用として必要な金額を、その時期までに準備する計画を立てることをおすすめします。住宅ローンの返済負担率(年収に対する返済額の割合)にも注意し、無理のない借入額を設定してください。
Q3. 中古住宅を購入する場合、修繕費の見積もりはどう変わりますか?
中古住宅の場合、購入時点ですでに一部の設備が経年劣化している可能性があるため、新築時よりも早いタイミングで修繕が必要になることがあります。購入前にインスペクションを実施し、各設備の残り寿命を把握しておくことで、より精度の高い見積もりが可能になります。
Q4. 修繕費の積立が、まだまったくできていません。今からでも間に合いますか?
今から始めても十分に間に合います。まずは今の住宅の築年数を確認し、直近で寿命を迎えそうな設備がないかをチェックすることから始めてください。差し迫った修繕がなければ、月々少額からでも積立を始め、徐々に金額を増やしていく形で問題ありません。
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シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年
📝 noteでも毎日発信中
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