FP3級「相続・事業承継」完全解説【贈与・相続・相続税・財産評価を子4人の親が実装する】

ひとり親の家計

  1. はじめに ─ 「相続」は今すぐ始める家族イベント
  2. 結論:この分野で押さえる5つの柱
  3. 柱①:相続の基礎
    1. 法定相続人の優先順位
    2. 法定相続分の例
    3. 相続放棄・限定承認
    4. 遺言書の種類
    5. 4児パパの実生活での使い方
  4. 柱②:相続税
    1. 基礎控除
    2. 相続税率(速算表)
    3. 主要な控除・特例
    4. 生命保険の非課税枠
    5. 4児パパの実生活での使い方
  5. 柱③:贈与税
    1. 贈与税の課税方式
      1. 暦年贈与
      2. 相続時精算課税
    2. 主要な贈与税の特例
    3. 4児パパの実生活での使い方
  6. 柱④:財産評価(最重要)
    1. 土地の評価
      1. 路線価方式
      2. 倍率方式
    2. 建物の評価
    3. 小規模宅地等の特例(重要)
    4. 株式・投資信託の評価
    5. 4児パパの実生活での使い方
  7. 柱⑤:事業承継
    1. 個人事業の承継
    2. 非上場株式の評価
    3. 事業承継税制
    4. 4児パパの実生活での使い方
  8. 4児パパが実感したこの分野の効果【実数値】
    1. 効果1:生命保険非課税枠2,000万円の活用
    2. 効果2:小規模宅地等の特例
    3. 効果3:暦年贈与の計画
    4. 効果4:公正証書遺言の作成 → トラブル予防
    5. 効果5:子の保育園・教育費贈与の活用
  9. 学習のポイント
    1. 法定相続分の表は完全暗記
    2. 相続税の基礎控除式は反射的に
    3. 小規模宅地等の特例は試験頻出
    4. 贈与税は計算問題が多い
  10. おすすめ専門家相談
  11. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 相続税は本当に発生する?
    2. Q2. 生前贈与と相続、どちらが得?
    3. Q3. 遺言書は本当に必要?
    4. Q4. 個人事業の承継、子に継いでもらえる?
    5. Q5. シングルファーザーの相続上の特徴は?
  12. まとめ ─ 「今から始める」相続対策
  13. 相続税シミュレーション ─ 資産規模別に見る税額の違い
    1. 試験対策としての読み方
  14. 暦年贈与 vs 相続時精算課税 ─ どちらを選ぶべきか【比較表】
    1. 2024年改正:生前贈与加算「7年ルール」への延長
  15. 相続でよくある5つの失敗例
    1. 失敗1:自筆証書遺言の形式不備で無効になる
    2. 失敗2:名義預金の見落とし
    3. 失敗3:生前贈与の証拠が残っていない
    4. 失敗4:小規模宅地等の特例の要件を確認していない
    5. 失敗5:遺産分割協議が長引き、申告期限に間に合わない
  16. 事業承継・不動産オーナー視点の実務ポイント
    1. 個人事業の承継で見落としがちな手続き
    2. 賃貸物件(貸家・貸地)の評価減
  17. 今日から始める相続対策 ─ 実践5ステップ
    1. ステップ1:財産目録を作る
    2. ステップ2:法定相続人と相続分を確認する
    3. ステップ3:生命保険の非課税枠を使い切っているか点検する
    4. ステップ4:生前贈与の年次計画を立てる
    5. ステップ5:遺言書を作成する
  18. 追加FAQ ─ もう一歩踏み込んだ疑問に答える
    1. Q6. 生前贈与加算の「7年ルール」で、暦年贈与のメリットは減った?
    2. Q7. 遺産分割協議書はどう作ればいい?
    3. Q8. 相続税の申告・納付期限と、間に合わない場合の対応は?
    4. Q9. 賃貸物件を持っていると相続税はどう変わる?
    5. Q10. 生命保険金は遺産分割協議の対象になる?
  19. 遺留分の考え方 ─ 遺言があっても無視できない権利

はじめに ─ 「相続」は今すぐ始める家族イベント

「相続って、親が亡くなってから考えればいいでしょ?」

家計相談の現場で何度も聞かれる質問です。

しかし、4児シングルファーザーで個人事業主20年の僕が断言します。

相続対策は「親が元気なうちに始める」のが最大の節税策。

僕は妻を突然失った経験から、相続というイベントが「ある日突然」やって来ること、そして「準備の有無で500万〜数千万円違う」ことを肌で知っています。

特にシングルファーザーとなった今、

  • 自分が万一の時、子4人にどう財産を残すか
  • 生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)の活用
  • 生前贈与(年110万円非課税)の計画的実行
  • 小規模宅地等の特例で自宅評価額を80%減
  • 遺言書による相続トラブルの予防

を、すべて設計しています。

この記事では、4児シングルファーザー × 個人事業主20年として、

  • FP3級「相続・事業承継」の全体像と要点
  • 試験合格に必要な最低限の知識
  • 4児パパとしての相続実装プラン

を本気で解説します。


結論:この分野で押さえる5つの柱

試験で出る要点 実生活で使う場面
①相続の基礎 法定相続人・法定相続分 家族構成での相続権把握
②相続税 基礎控除・税率・計算 相続税ゼロにする戦略
③贈与税 暦年贈与・相続時精算課税 生前贈与で資産移転
④財産評価 路線価・倍率方式・小規模宅地特例 自宅評価額80%減
⑤事業承継 個人事業の承継・自社株評価 個人事業主の引継ぎ

→ どれも「ある日突然」ではなく「今から計画する」ための知識。


柱①:相続の基礎

法定相続人の優先順位

順位 相続人 配偶者がいる場合の取り分
第1順位 (および代襲相続人の孫) 配偶者1/2 ・ 子1/2
第2順位 父母(祖父母) 配偶者2/3 ・ 父母1/3
第3順位 兄弟姉妹(甥姪) 配偶者3/4 ・ 兄弟1/4

配偶者は常に相続人。子がいる場合、父母・兄弟は相続人にならない。

法定相続分の例

4児パパ家族(配偶者がいない・子4人の場合):

  • 各子:1/4ずつ

配偶者+子2人

  • 配偶者:1/2
  • 各子:1/4ずつ

相続放棄・限定承認

  • 相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ
  • 借金の方が多い場合に活用

遺言書の種類

種類 作成方法 検認
自筆証書遺言 全文自筆(財産目録は別途可) 家裁検認必要
公正証書遺言 公証人作成 検認不要
秘密証書遺言 内容を秘密に 家裁検認必要

4児パパの実生活での使い方

  • 自分の死亡時:子4人が法定相続人 → 各1/4
  • 遺言書:公正証書遺言で作成済(紛失リスクゼロ)
  • 遺留分(法定相続分の1/2)を意識した遺言

柱②:相続税

基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例:

  • 法定相続人1人 → 3,600万円
  • 4児パパの場合(法定相続人=子4人) → 3,000 + 2,400 = 5,400万円

→ 5,400万円までの財産なら相続税ゼロ

相続税率(速算表)

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

主要な控除・特例

特例 内容
配偶者税額軽減 配偶者は1.6億円 or 法定相続分まで無税
未成年者控除 18歳までの年数×10万円
障害者控除 85歳までの年数×10万円(一般)/20万円(特別)
相次相続控除 10年以内に相続が連続 → 控除

生命保険の非課税枠

500万円 × 法定相続人数

例:4児パパ家族 → 2,000万円まで生命保険金は非課税

→ 生命保険は相続対策の王道

詳しくは生命保険の必要保障額の計算方法で。

4児パパの実生活での使い方

  • 想定相続財産(自宅+投資+預金):約8,000万円
  • 基礎控除 5,400万円
  • → 課税遺産 2,600万円 → 各子の取得分 650万円 → 税率10%で各65万円相続税
  • 生命保険2,000万円非課税枠を使えば実質ゼロに圧縮可能

柱③:贈与税

贈与税の課税方式

暦年贈与

  • 年110万円までは非課税
  • 110万円超:贈与税課税(10〜55%)

相続時精算課税

  • 2,500万円まで贈与税ゼロ
  • 相続発生時に相続財産に持戻し
  • 60歳以上→18歳以上の子/孫に贈与する場合に選択可

主要な贈与税の特例

特例 内容
配偶者控除 婚姻20年以上で居住用不動産 2,000万円控除
教育資金一括贈与 30歳未満の子孫へ1,500万円非課税
結婚・子育て資金一括贈与 1,000万円非課税
住宅取得等資金の贈与 省エネ住宅1,000万円・その他500万円非課税

4児パパの実生活での使い方

  • 親→自分への贈与:年110万円ずつを計画的に
  • 自分→子への贈与:18歳から少しずつ
  • 教育資金一括贈与:孫世代から逆算した活用

柱④:財産評価(最重要)

不動産の評価は相続税の額を大きく変えます。

土地の評価

路線価方式

評価額 = 路線価 × 面積 × 補正率

  • 路線価:国税庁が毎年公表
  • 市街地で使用

倍率方式

評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

  • 路線価がない地域で使用

建物の評価

評価額 = 固定資産税評価額

小規模宅地等の特例(重要)

種類 限度面積 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%減
特定事業用宅地 400㎡ 80%減
貸付事業用宅地 200㎡ 50%減

自宅評価が80%減 = 数千万円規模の節税

株式・投資信託の評価

  • 上場株式:相続発生月・前月・前々月のうち最低額
  • 投資信託:基準価額

4児パパの実生活での使い方

  • 自宅土地:路線価方式で評価
  • 小規模宅地等の特例で80%減を狙う設計
  • 自宅評価3,000万円 → 600万円に圧縮
  • → 相続税大幅削減

柱⑤:事業承継

個人事業の承継

  • 事業用資産(売掛金・棚卸資産・固定資産)の引継ぎ
  • 屋号・取引先・許認可の名義変更
  • 廃業届/開業届の提出

非上場株式の評価

  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式
  • 配当還元方式

事業承継税制

  • 中小企業の自社株を一定要件下で贈与税・相続税の納税猶予/免除

4児パパの実生活での使い方

  • 個人事業:子に承継するか・廃業するかを生前に決める
  • 小規模企業共済:自分の退職金として活用
  • 詳しくは小規模企業共済完全ガイドで。

4児パパが実感したこの分野の効果【実数値】

効果1:生命保険非課税枠2,000万円の活用

  • 学んだ知識:500万円×法定相続人数
  • 結果:相続税課税対象から2,000万円減

効果2:小規模宅地等の特例

  • 学んだ知識:自宅評価80%減
  • 結果:自宅評価3,000万円→600万円

効果3:暦年贈与の計画

  • 学んだ知識:年110万円非課税
  • 結果:子4人へ各年110万円×10年 = 4,400万円を非課税で移転

効果4:公正証書遺言の作成 → トラブル予防

  • 学んだ知識:遺言の効力
  • 結果:将来の子4人間の相続トラブルを未然防止
  • 費用:公証役場で5〜10万円で作成

効果5:子の保育園・教育費贈与の活用

  • 学んだ知識:扶養義務の範囲なら贈与税なし
  • 結果:子の教育費・結婚資金を直接負担

総合効果:相続税1,000〜2,000万円規模の節税予定


学習のポイント

法定相続分の表は完全暗記

「配偶者+子」「配偶者+父母」「配偶者+兄弟」の3パターン。

相続税の基礎控除式は反射的に

「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」を問題見た瞬間に計算開始

小規模宅地等の特例は試験頻出

330㎡・400㎡・200㎡ + 80%・80%・50%を表で覚える。

贈与税は計算問題が多い

暦年贈与の速算表を覚える。相続時精算課税との選択の判断軸も。


おすすめ専門家相談

税理士ドットコム:相続税試算・税理士マッチング無料

相続税申告.com:相続税申告書作成依頼

AGE100:終活・遺言・任意後見の相談

ベンナビ相続:相続トラブルの弁護士マッチング

→ FPと税理士・弁護士の使い分けはマネードクターなどで相談可能。


よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税は本当に発生する?

A. 基礎控除内なら発生しない

4児パパなら5,400万円までの遺産は無税。

ただし都心戸建てを所有する家庭は要注意。

Q2. 生前贈与と相続、どちらが得?

A. 計画的な生前贈与が得になることが多い。

特に暦年贈与(年110万円×複数年)は王道。

Q3. 遺言書は本当に必要?

A. 複数の相続人がいる家庭は必須

特に4児や複雑な家族構成では公正証書遺言を強く推奨。

Q4. 個人事業の承継、子に継いでもらえる?

A. 子の意思次第。

廃業 or 法人化で自社株承継 or 個人事業承継のいずれかを生前に検討。

Q5. シングルファーザーの相続上の特徴は?

A. 配偶者控除がない分、子への相続が直接来る

生命保険非課税枠 + 小規模宅地特例 + 暦年贈与の3点セットで節税。


まとめ ─ 「今から始める」相続対策

FP3級「相続・事業承継」は、「ある日突然」ではなく「今から計画する」ための分野です。

押さえるべき視点 効果
法定相続人・相続分 家族構成の理解
基礎控除と相続税率 相続税の有無判断
生命保険非課税枠 500万円×人数の非課税
小規模宅地特例 自宅評価80%減
暦年贈与 年110万円×複数年で資産移転
遺言書 トラブル予防

僕は4児パパとして、妻を失った経験から、「相続は元気なうちに準備する」ことを心の底から学びました。

「準備の有無で1,000万〜数千万円違う」という事実は、知識を持っている人だけが回避できる損失です。


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相続税シミュレーション ─ 資産規模別に見る税額の違い

FP3級の試験では「基礎控除→課税遺産→税率適用」という計算の流れそのものが問われます。ここでは法定相続人=子4人(配偶者なし)というケースを軸に、遺産総額ごとに相続税額がどう変わるかを一覧にしました。基礎控除は「3,000万円+600万円×4人=5,400万円」で固定し、各子の法定相続分に応じた取得金額に速算表の税率を掛ける簡易計算です(実際の申告では取得割合や各種控除でさらに増減します)。

遺産総額 課税遺産総額 各子の取得金額 適用税率・控除額 相続税合計(4人分)
5,400万円 0円 0円 非課税 0円
8,000万円 2,600万円 650万円 10%・控除0円 約260万円
1億円 4,600万円 1,150万円 15%・控除50万円 約490万円
1億5,000万円 9,600万円 2,400万円 15%・控除50万円 約1,240万円
2億円 1億4,600万円 3,650万円 20%・控除200万円 約2,120万円

ここに生命保険の非課税枠(500万円×4人=2,000万円)を組み合わせると、遺産総額から先に2,000万円を差し引いてから課税遺産を計算できます。たとえば遺産総額1億円のケースなら、課税対象は実質8,000万円まで圧縮され、相続税合計は約260万円まで下がる計算になります。「非課税枠をどれだけ使い切れているか」が節税効果の分かれ目だという点が、この表からも読み取れます。

試験対策としての読み方

FP3級の計算問題では、上記のように「①基礎控除を引く→②法定相続分で按分→③速算表の税率・控除額を当てはめる→④実際の取得割合で再按分」という4ステップが繰り返し出題されます。数字を丸暗記するより、この計算プロセスそのものを体に覚え込ませる方が本番で応用が利きます。


暦年贈与 vs 相続時精算課税 ─ どちらを選ぶべきか【比較表】

贈与税の2つの課税方式は、試験でもよく比較問題として出ますが、実生活での使い分けはさらに重要です。特に2024年の税制改正で生前贈与加算のルールが変わったため、最新の内容を押さえておく必要があります。

項目 暦年贈与 相続時精算課税
非課税枠 年110万円 特別控除2,500万円+2024年からは年110万円の基礎控除も新設
相続財産への持ち戻し 相続開始前一定期間内の贈与のみ加算 基礎控除分を除き、贈与財産は原則すべて相続財産に持ち戻し
制度の変更可否 いつでも選択・継続可能 一度選択すると暦年贈与には戻れない
向いているケース 長期間かけて少しずつ資産を移転したい場合 収益物件や値上がりが見込める資産を早めに移転したい場合

2024年改正:生前贈与加算「7年ルール」への延長

従来、暦年贈与は相続開始前3年以内の贈与だけが相続財産に加算される仕組みでした。これが税制改正により相続開始前7年以内まで段階的に延長されています(2024年1月1日以後の贈与から対象で、経過措置により完全に7年間へ移行するのは2031年1月以降の相続からです)。延長された4年分(3年超7年以内)の贈与については、合計100万円までは加算対象から除外される緩和措置もあります。

→ これは「相続直前に慌てて贈与しても節税効果が薄れる」ことを意味します。暦年贈与は早く始めるほど、加算対象外になる部分が増えて有利になる、という試験にも実生活にも直結するポイントです。


相続でよくある5つの失敗例

相続対策は「知っているつもり」が一番危険です。実務でよく見聞きする失敗パターンを5つ整理しました。

失敗1:自筆証書遺言の形式不備で無効になる

日付の記載漏れ、押印忘れ、財産目録の記載方法の誤りなど、形式要件を1つ欠くだけで遺言全体が無効になるケースがあります。確実性を求めるなら公正証書遺言を選ぶ方がリスクは小さくなります。

失敗2:名義預金の見落とし

子や孫の名義で預金していても、実質的に被相続人が管理・支配していたお金は「名義預金」として相続財産に含められ、課税対象になることがあります。贈与は贈与契約書の作成・受贈者本人による口座管理・実際の使用実績があって初めて認められるという点を見落としがちです。

失敗3:生前贈与の証拠が残っていない

「口約束で毎年渡していた」というだけでは、税務調査で贈与と認められないことがあります。都度の贈与契約書、銀行振込の記録など、形に残る形式で実行することが重要です。

失敗4:小規模宅地等の特例の要件を確認していない

「自宅なら自動的に80%減になる」と誤解しているケースが多く見られますが、実際には同居や保有継続などの適用要件があります。要件を満たさない相続人が取得すると特例が使えず、想定より相続税が跳ね上がることがあります。

失敗5:遺産分割協議が長引き、申告期限に間に合わない

相続税の申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。分割協議がまとまらないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が一旦使えない状態で申告することになり、後日「更正の請求」で取り戻す二度手間が発生します。


事業承継・不動産オーナー視点の実務ポイント

個人事業主として事業を営みながら、賃貸物件も保有しているようなケースでは、通常の相続税対策に加えて押さえておきたい論点があります。

個人事業の承継で見落としがちな手続き

  • 青色申告特別控除は自動的には引き継がれない ─ 事業を承継する人が新たに開業届・青色申告承認申請書を提出する必要がある
  • 屋号・取引先との契約・許認可は名義変更や再取得の手続きが必要になる場合が多い
  • 事業用の売掛金・棚卸資産も相続財産として評価対象になるため、帳簿の整理が節税にも直結する

賃貸物件(貸家・貸地)の評価減

兼業で賃貸経営をしている場合、自用の不動産よりも相続税評価額が下がる仕組みがあります。

区分 評価の考え方
貸家建付地 自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で評価減
貸家(建物) 固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)で評価減
貸付事業用宅地等 小規模宅地等の特例の対象(200㎡まで50%減)

→ 賃貸物件は「保有しているだけで評価額が下がる」という性質があるため、現金や更地で相続するより有利になりやすい資産です。ただし空室が多いと賃貸割合が下がり評価減の効果も小さくなるため、稼働率の維持自体が相続対策の一部になるという発想が実務では重要になります。


今日から始める相続対策 ─ 実践5ステップ

知識を「知っている」状態から「実行した」状態に変えるための、具体的な手順です。

ステップ1:財産目録を作る

不動産・預貯金・有価証券・生命保険・事業用資産・借入金を一覧化します。プラスの財産とマイナスの財産の両方を把握することが出発点です。

ステップ2:法定相続人と相続分を確認する

自分の家族構成において、誰がどの順位でどれだけの相続分を持つのかを紙に書き出します。想定と違う相続人がいないかもここで確認します。

ステップ3:生命保険の非課税枠を使い切っているか点検する

「500万円×法定相続人数」の非課税枠に対して、現在加入している生命保険の死亡保険金額が足りているかを確認します。不足していれば、終身保険などでの上乗せを検討します。

ステップ4:生前贈与の年次計画を立てる

暦年贈与なら年110万円を上限に、誰に・いつ・いくら贈与するかを複数年分の計画表にしておきます。贈与契約書の作成もセットで習慣化します。

ステップ5:遺言書を作成する

財産目録と相続人が固まったら、公正証書遺言の作成に進みます。証人2名の手配、必要書類の準備、公証役場での事前相談という流れが一般的です。


追加FAQ ─ もう一歩踏み込んだ疑問に答える

Q6. 生前贈与加算の「7年ルール」で、暦年贈与のメリットは減った?

A. ゼロにはなりませんが、直前の駆け込み贈与の効果は薄れました。逆に言えば、早い時期から少額を継続する暦年贈与ほど、相続財産への加算対象から外れる年数が増え、相対的に有利になります。

Q7. 遺産分割協議書はどう作ればいい?

A. 相続人全員の合意内容を書面化し、相続人全員の署名・実印での押印、印鑑証明書の添付が一般的です。不動産の名義変更や預金の解約・払い戻しの際にも必要になる重要書類です。

Q8. 相続税の申告・納付期限と、間に合わない場合の対応は?

A. 期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。現金一括納付が難しい場合は、要件を満たせば延納(分割払い)物納(不動産等での納付)という制度もあります。ただし延納には利子税がかかるため、事前の資金計画のほうが優先度は高くなります。

Q9. 賃貸物件を持っていると相続税はどう変わる?

A. 現金で同額を保有するより、貸家建付地・貸家の評価減や小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)が使える分、相続税評価額は下がりやすくなります。一方で、遺産分割の際に不動産は分割しづらいという別の課題も生まれるため、遺言書での取得者指定が重要になります。

Q10. 生命保険金は遺産分割協議の対象になる?

A. 死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるため、原則として遺産分割協議の対象外です。特定の子に多めに資産を残したい場合、受取人指定を活用することで、遺産分割協議を経ずに確実に渡す手段として使えます(ただし著しく偏った金額は特別受益として扱われる可能性がある点には注意が必要です)。


遺留分の考え方 ─ 遺言があっても無視できない権利

「遺言書さえ作れば思い通りに財産を分けられる」と考えがちですが、一定の相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されています。遺言の内容がこれを下回ると、遺留分を侵害された相続人は他の相続人に対して遺留分侵害額請求(金銭での支払い請求)を行うことができます。

相続人の組み合わせ 遺留分の割合(全体)
子のみ(配偶者なし) 法定相続分の1/2
配偶者+子 法定相続分の1/2
配偶者+父母 法定相続分の1/2
父母のみ(直系尊属のみ) 法定相続分の1/3
兄弟姉妹のみ 遺留分なし

子が複数いる家庭で「特定の子にだけ多く残したい」という遺言を作る場合、他の子の遺留分を侵害しない範囲で設計するか、侵害する場合はその分を生命保険金(受取人固有の財産で遺留分算定基礎財産に含まれにくい)で補うなど、あらかじめ手当てをしておく発想が実務では欠かせません。遺言書は「作って終わり」ではなく、遺留分まで含めて設計して初めて完成するものだと考えると失敗が減ります。


相続・事業承継は範囲が広く、暗記だけでは実生活に活かしきれない分野です。「基礎控除」「非課税枠」「評価減の特例」という3つの型を、自分の財産目録に当てはめて計算してみること。これが試験対策としても、実際の家族を守る準備としても、一番の近道になります。

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