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はじめに ─ 保険のおばちゃんに言われるがまま入っていた頃の話
正直に告白します。妻を突然亡くすまでの僕は、保険について何も分かっていませんでした。
学資保険、医療保険、がん保険、個人年金保険、外貨建ての貯蓄型保険……勧められるまま、あるいは「なんとなく入っておいた方が安心な気がする」という漠然とした空気に流されるまま、気づけば毎月数万円を保険料に溶かしていました。
妻を亡くし、4人の子どもを一人で育てることになったとき、初めて家計と真剣に向き合いました。保険証券を全部机に並べて、1枚ずつ「これは本当に必要なのか」を確認していったんです。
控除の仕組みを正しく調べ、公的保険(健康保険・年金・高額療養費制度)の中身を正しく理解し、保険会社の決算資料まで読み込んだ結果、僕が出した結論はシンプルでした。
民間保険は「掛け捨ての生命保険」「自動車(自転車)保険」「火災保険」の3つだけでいい。それ以外は、公的保険と投資・貯蓄で十分カバーできる。
この記事では、20年の投資家経験・個人事業主経験・4人の子育て経験を持つ僕が、なぜこの結論に辿り着いたのかを、根拠とともにお伝えします。
結論:必要な民間保険は3つだけ
最初に結論からお伝えします。
【シンパパ的・保険の結論】
必要な民間保険=①掛け捨ての生命保険(自分が死んだら経済的に困る人がいる場合のみ)②自動車(自転車)保険(対人・対物)③火災保険。それ以外の保険は、公的保険と投資・貯蓄で代替できる。
子どもの傷害や、自転車事故で誰かにケガをさせてしまった場合の賠償責任は、単体の子ども保険に別途入るのではなく、火災保険や自動車保険の「個人賠償責任特約」として付帯オプションで備えるのが合理的です。単体で契約すると保険料が二重に発生するだけです。
なぜこの3つ「だけ」でいいのか。その根拠を、順番に説明していきます。
保険とは何か|「低確率・大損失」に備えるものであって、資産形成の道具ではない
まず大前提として、保険の本来の役割を整理します。
保険は、発生確率は低いけれど、起きたら生活が破綻するほどの大きな損失に備えるための仕組みです。
- 一家の大黒柱が死んで、遺された家族の生活が立ち行かなくなる
- 交通事故で他人に一生分の賠償をしなければならなくなる
- 火事で家を失い、住む場所も再建資金もなくなる
こうした「起きたら人生が終わりかねない」事態にだけ、保険は使うべきものです。
逆に言えば、「起きても貯金で何とかなる」「公的保険でかなりの部分がカバーされる」レベルの損失には、民間保険は基本的に不要です。医療費も、がんの治療費も、多くの場合は高額療養費制度と数十万〜数百万円程度の貯蓄があれば対応できます。人生が破綻するレベルの出費ではありません。
保険は「お金を増やすためのツール」ではありません。ここを混同すると、後述する終身保険・学資保険のような「保障と貯蓄を混ぜた商品」に引っかかることになります。
「控除でお得」は保険営業の常套句であって、実際はただの罠
保険を勧められるとき、必ずと言っていいほど出てくるのが「生命保険料控除でお金が戻ってきますよ」というトークです。
これは半分本当で、半分は巧妙な誘導です。
生命保険料控除は、所得税・住民税の計算上、一定額を所得から差し引ける制度です。しかし、控除で戻ってくるのは「払った保険料の一部(税率分)」だけであって、払った保険料そのものが戻ってくるわけではありません。
たとえば年間8万円の保険料を払って、控除の上限いっぱいまで使えたとしても、実際に税金が安くなる金額は数千円〜1万円程度です。残りの7万円前後は、保障を受け取れなかった場合、まるまる掛け捨てられています。
「控除があるからお得」ではなく、「控除があっても、大半は捨てているのと同じ」というのが実態です。控除は、あくまで不要な保険料を正当化するための後付けの理由にされがちなので、注意が必要です。
保険会社は儲けすぎている|「相互扶助」から離れた商売になっていないか
保険はもともと、みんなでお金を出し合って、困った人を助け合う「相互扶助」の仕組みです。
しかし現実には、保険会社は極めて高い売上・利益率を上げ、保険販売員にも高い給与を支払える構造になっています。金融庁から立入検査や行政処分を受ける保険会社が実際に存在する、という事実も見過ごせません。
相互扶助のための仕組みで、運営する会社側だけが大きく儲かっているとしたら、その分だけ契約者側が「払いすぎている」ということです。自分が保険に入るとき、「この保険料のうち、どれだけが本当の保障に使われ、どれだけが会社の利益や販売員の手数料になっているのか」を意識してみてください。
保険販売員と会うな、話すな
厳しい言い方になりますが、これは20年の実感からくる結論です。
保険販売員・保険ショップ・「無料FP相談」と名のつくサービスと話すと、ほぼ確実に、何かしらの保険を勧められます。それが最初から不要な保険であっても、です。
保険販売員の手口には、いくつかの共通パターンがあります。
- 「控除でお得」トーク:先述の通り、実際は掛け金の大半を捨てているだけなのに、あたかも得をするように説明する
- 「保険料は収入から逆算」トーク:本来は「自分に必要な保障金額」から掛け金を決めるべきなのに、「収入のこれくらいなら払えますよね」という切り口で、必要以上の保険を売りつけてくる
- 「解約はもったいないので払い済みに」トーク:不要な保険を解約しようとすると、「保障を下げて保険料の支払いだけ止める『払い済み保険』にしましょう」と提案される。これは新たな契約の押し付けであり、情報弱者から最後まで搾り取るための商品です
保険は、感情(不安・心配・恐怖・安心)を挟まずに、自分に本当に必要な金額と保障内容を冷静に整理してから決めるべきものです。営業と話す時間が長いほど、その冷静さは崩されていきます。
「不要」と判断した保険と、その理由
ここからは、僕が実際に不要と判断し、解約・非加入とした保険を、ひとつずつ説明します。
学資保険|貯蓄性商品としては非効率、教育資金は投資信託で
学資保険は、終身保険ほど手数料の高いぼったくり商品ではありませんが、それでも返戻率は年利換算で0.2〜0.5%程度が相場です。全世界株式インデックス(オルカン)やS&P500に18年間積み立てた場合の期待利回り(年5〜7%程度)と比べると、資産形成の手段としては明確に非効率です。
教育資金は、学資保険ではなく新NISAでの投資信託積立+現金貯蓄で準備するのが合理的だと考えています。
医療保険・がん保険|公的医療保険(高額療養費制度)でほぼ足りる
日本の公的医療保険には、1か月の医療費が一定額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。所得水準にもよりますが、月々の自己負担上限は多くの世帯で数万円〜十数万円程度に抑えられます。
「人生が破綻するレベルの出費」にはならないケースがほとんどです。差額ベッド代や先進医療の技術料など、公的保険でカバーされない部分はありますが、それも数十万円〜数百万円の貯蓄があれば十分に対応できる範囲です。
医療保険・がん保険の保険料を払い続けるより、その分を貯蓄・投資に回した方が、トータルでは有利だと判断しています。
地震保険(単体商品)|制度としては必要でも、今の商品は不要
地震保険という「制度」自体は、大規模災害への社会的な備えとして意義があると理解しています。しかし、現状の民間の地震保険商品は、保険金額が火災保険の最大50%までに制限されているなど、実際に大地震が起きたときに十分な補償が出ない構造的な問題を抱えています。
現状の商品でお金を払い続けるよりは、その分を貯蓄に回し、いざというときの生活再建資金として自分で備えておく方が現実的だと考えています。
家電延長保証・スマホ保険・出産保険・ペット保険|「起きても人生が終わらない」損失には入らない
家電量販店で必ず勧められる「延長保証(+〇年保証)」、スマホ購入時に案内される破損・水濡れ保険、出産時に窓口で勧められる医療保険、そしてペットの治療費に備えるペット保険——これらに共通しているのは、いずれも「起きても人生が破綻するわけではない」損失だという点です。
家電が壊れても買い替え費用は数万円〜十数万円程度、スマホの故障や紛失も同様です。子どもが生まれるときの出産費用も、公的な出産育児一時金でほぼ相殺され、正常分娩であれば自己負担は数万円程度に収まるのが一般的です。ペットの治療費が高額になることはありますが、それによって人生(生活)そのものが破綻するケースは基本的にありません。
いずれも、保険料を払い続けるより、その分を貯蓄に回しておいて、実際に必要になったときに取り崩す方が、トータルでは合理的だと判断しています。
終身保険・養老保険・外貨建て保険|手数料の高い投資信託と同じ、しかも解約で元本割れ
終身保険は、実質的に「手数料がとても高い投資信託のようなもの」です。しかも、契約から短期間で解約すると、ほぼ確実に元本割れします。「保障」と「貯蓄」を無理に一つの商品にまとめているせいで、どちらの機能も中途半端になっているのが実態です。
養老保険、外貨建て保険も、商品設計の細部に違いはあっても、構造的には終身保険と同じ「ぼったくり型」の商品だと考えています。掛け捨て以外の生命保険は、基本的にこのカテゴリに入ると理解しています。
個人年金保険|iDeCo・新NISAの方が効率的
老後資金づくりが目的なら、個人年金保険よりも、税制優遇のあるiDeCoや、運用益が非課税になる新NISAを優先すべきです。個人年金保険は、途中解約時の元本割れリスクや、インフレに弱い固定利率という弱点も抱えています。
払い済み保険|「もったいない」という言葉で乗り換えさせる、新たなぼったくり
不要な保険を解約しようとすると、「もったいないので払い済み保険にしましょう」と提案されることがあります。これは保障を大きく下げたまま、それまで積み立てた解約返戻金相当額を保険会社に置いたままにする仕組みで、実質的には新しい(そして条件の悪い)保険への乗り換えです。「もったいない」という感情に訴えかける、典型的な引き延ばしトークだと理解しておいた方がいいと思います。
「必要」と判断した保険と、その理由
掛け捨ての生命保険|自分が死んだら困る人がいる間だけ
僕が今も加入しているのは、掛け捨ての定期保険(一時金払いタイプ)です。理由はシンプルで、自分が死んだときに経済的に困る子どもたちがいるからです。
似た商品に、死亡時に遺族へ毎月一定額が支払われる「収入保障保険」がありますが、僕自身は毎月分割払いの逓減型であるこのタイプではなく、必要な保障額をあらかじめ計算した上で一時金として受け取れる定期保険を選んでいます。住宅ローンに紐づく団体信用生命保険(団信)も、この「掛け捨ての生命保険」に含まれると考えています。実際、団信のおかげで住宅ローンの残債がゼロになり、家を失わずに済んだ経験があります。掛け捨てだからこそ保険料が安く、必要な期間・必要な金額だけをピンポイントでカバーできます。
子どもが独立して、自分が死んでも経済的に困る人がいなくなれば、この保険も卒業するつもりです。
自動車保険(対人・対物)|賠償額に上限がなく、人生が破綻しうる
自動車事故で他人を死傷させた場合の賠償額は、数千万円〜1億円を超えることもあります。これは貯蓄では到底対応できない金額で、まさに「低確率・大損失」の典型です。対人・対物賠償は無制限で加入しています。
一方で、車両保険(自分の車の修理費用をカバーする補償)には加入していません。車両保険は、車の修理代を保険会社にあらかじめ保険料として前払いしているだけの仕組みで、事故を起こさなければその前払い分は掛け捨てで消えていきます。貯蓄で備えておけば、実際に修理が必要になったときに「後払い」で対応できるだけの違いであり、トータルで見ればどちらが得かは自明です。
そもそも車が壊れても、それだけで生活が破綻することはありません。修理費用を自分で用意できない経済状況なのであれば、その車を持つこと自体が身の丈に合っていない可能性が高いと考えています。また、車両保険は「今と同じ新車を買い戻せる金額」を保証するものではなく、時価(減価償却後の評価額)が支払いの基準になるのが基本です。新車を買い戻せる保証がほしいなら「新車特約」を付ける必要がありますが、その分保険料は当然高くなります。低確率・大損失にだけ備えるという本記事の大原則に照らすと、車両保険は「貯蓄で十分対応できる損失」に分類され、僕は不要と判断しています。
火災保険|家を失う・再建できないリスクに備える
火災や自然災害で家を失えば、再建・住み替えに数百万円〜数千万円単位の費用がかかります。これも貯蓄だけでカバーするのは非現実的なので、火災保険には加入しています。
自動車保険・火災保険は、保険会社によって保険料に差があるため、定期的に一括見積もりで比較するようにしています。
子どもの傷害・賠償責任|自動車保険・火災保険の付帯特約でカバー
子どもが自転車で人にケガをさせてしまった、遊具で友達をケガさせてしまった、といったリスクは、単体の子ども保険ではなく、火災保険や自動車保険に付帯できる「個人賠償責任特約」でカバーするのが合理的です。すでに加入している火災保険・自動車保険に無料または少額で追加できることが多く、単体で契約するより確実に割安です。
ライフプランを立てて、自分に必要な金額を整理することが大事
保険を最小限にする上で欠かせないのが、自分にとって本当に必要な保障額を計算することです。
- 子ども全員の教育費が、いつ・いくら必要になるか
- 自分が死んだ場合、遺族の生活費が公的保障(遺族年金等)でどこまで賄えるか
- 今の貯蓄・資産で、どこまでの損失に耐えられるか
こうした数字を洗い出し、ライフプランとして整理して初めて、「自分に必要な保障はいくらか」が見えてきます。漠然とした不安のまま保険に入るのではなく、数字で判断することが大事だと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 保険を全部やめたら不安になりませんか?
不安を減らすのは、保険の証券ではなく、自分の貯蓄・資産の残高だと感じています。現金と投資資産をきちんと積み上げていれば、多くの想定外の出費には対応できます。保険は「貯蓄では対応できない、人生が破綻するレベルの損失」だけをカバーする最終手段と位置づけています。
Q2. 今すぐ全部解約すべきですか?
いいえ。学資保険や終身保険を今すぐ全部解約すると、経過年数によっては大きく元本割れすることがあります。まずは新規の加入・見直しを止め、既存契約については解約返戻金のシミュレーションを行った上で、損失が小さいタイミングを見て段階的に整理するのが現実的です。
Q3. 20代・貯蓄がまだ少ない場合はどうすればいい?
貯蓄がまだ十分でない時期でも、基本方針は変わりません。医療保険や所得補償保険のような保険に頼るのではなく、まずは生活防衛資金を優先して積み増すことをおすすめします。扶養家族がいて自分が死んだら経済的に困る人がいる場合は、保険料が安い若いうちに掛け捨ての定期保険だけ確保しておき、それ以外は資産形成を優先する、という考え方でいいと思います。
Q4. 保険相談窓口の「無料相談」は使ってもいいですか?
使わないことをおすすめします。無料相談の多くは、保険を成約させることで運営者に紹介料が入るビジネスモデルです。相談すれば高確率で何かしらの保険を勧められます。判断材料が欲しいなら、公的な情報(金融庁・国民生活センター等)や、成果報酬を受け取らない独立系の情報源にあたる方が安全です。なぜ「掛け捨てだけでいい」と言うと販売員に嫌な顔をされるのか、その構造については無料FP相談で「掛け捨てだけでいい」と言うと嫌な顔をされる理由で詳しく解説しています。
まとめ:保険は3つだけ、あとは公的保険と資産で備える
最後に、この記事の結論を改めてまとめます。
- 必要な民間保険は「掛け捨ての生命保険」「自動車(自転車)保険」「火災保険」の3つだけ
- 子どもの傷害・賠償責任は、単体保険ではなく火災保険・自動車保険の付帯特約でカバー
- 学資保険・医療保険・がん保険・地震保険(単体商品)・家電延長保証・スマホ保険・出産保険・ペット保険・終身/養老/外貨建て保険・個人年金保険は、公的保険と貯蓄・投資(新NISA等)で代替
- 控除は「捨てたお金の一部が戻るだけ」であって、加入する理由にはならない
- 保険販売員・無料相談とはできるだけ関わらない
- 自分に必要な保障額を、感情を挟まずに数字で整理することが最も大事
これが、20年かけて僕が辿り着いた「保険との付き合い方」です。
免責事項
本記事は運営者個人の見解と経験に基づくものです。保険の要不要は各家庭の状況(扶養家族の有無、資産状況、健康状態等)によって異なります。保険契約・解約の最終判断は、必ずご自身の責任において行ってください。
シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年
📝 noteでも毎日発信中
投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。


