株価指数が過去最高値を更新し続けているようなニュースを見ると、「今から買ったら高値掴みになるのでは」「もう少し下がるのを待ったほうがいいのでは」という不安がよぎるのは、投資家であれば誰もが経験することだと思います。私自身、投資家として20年活動してきた中で、何度もこの「暴騰相場での判断」に頭を悩ませてきました。
個人事業主として20年、大家として20年というキャリアも含めて、山あり谷ありの相場をくぐり抜けてきた立場から、今回は「暴騰相場で買い増しすべきか、待つべきか」について、4人の子どもを育てるシングルファーザーとしての家計目線もまじえながら整理していきます。
「高値掴みが怖い」という感情の正体
まず理解しておきたいのは、「高値掴みが怖い」という感情は、決して珍しいものでも、投資初心者だけが感じるものでもないということです。行動経済学の世界では、これは「損失回避性」と呼ばれる、人間が本能的に持っているバイアスとして説明されます。人は同じ金額の利益から得られる満足感よりも、同じ金額の損失から受ける苦痛のほうを強く感じる傾向があるとされています。
過去最高値を更新している局面で買うということは、「これから下落するかもしれない資産を、あえて一番高いタイミングで買う」という行為に感じられやすく、この感情的な抵抗感は、投資経験を重ねてもゼロにはなりません。私自身、20年間投資を続けてきた今でも、相場が大きく上昇している局面で買い増しの発注ボタンを押す瞬間には、多少の躊躇いを感じることがあります。
大切なのは、この感情そのものを否定することではなく、「感情はあって当然」と受け止めたうえで、感情に判断を委ねない仕組みを作っておくことだと感じています。
「最高値だから下がる」は思い込みであることが多い
データの話をすると、株価指数が過去最高値を更新したタイミングで投資を始めた場合と、そうでないタイミングで投資を始めた場合とで、その後の一定期間のリターンを比較した研究や検証は複数存在します。多くの検証結果に共通しているのは、「最高値を更新したタイミングだからといって、その後のリターンが平均的に悪くなるわけではない」という点です。
これは直感に反するかもしれませんが、考えてみれば当然の面もあります。株価指数は長期的には経済成長や企業業績の拡大を反映して右肩上がりに推移してきた歴史があり、その過程では「過去最高値」を何度も更新し続けます。つまり、最高値というのは通過点であることのほうが多く、「最高値=天井」とは限らないのです。
もちろん、これは将来のリターンを保証するものではなく、あくまで過去の傾向に基づく話です。個別の局面によっては、最高値更新の直後に大きな調整が入ることも当然あります。重要なのは、「最高値だから危険」という単純な思い込みだけで投資判断をしないことです。
私が実践している3つの対策
暴騰相場での判断に悩まないために、私自身が実践している対策を3つ紹介します。
1つ目は、積立投資を淡々と継続することです。つみたてNISAや新NISAのつみたて投資枠を使ったドルコスト平均法での積立投資は、相場が高いときも安いときも、機械的に一定額を買い続ける仕組みです。相場の水準を見て「今月は買うのをやめよう」「今月は多めに買おう」といった裁量を挟まないことで、感情によるブレを排除しています。長期的に見れば、高値づかみのリスクも安値での買い逃しのリスクも、平均化されていく効果が期待できます。
2つ目は、まとまった資金(ボーナスや臨時収入など)を投資する際は、時間分散を取り入れることです。一括投資と分割投資のどちらが期待リターン上優れているかについては様々な考え方がありますが、精神的な負担を減らすという意味では、まとまった資金を数か月〜1年程度に分けて投資していくことは、私にとって理にかなった方法です。「一括で入れて直後に大きく下落したらどうしよう」という不安を和らげる効果があります。
3つ目は、自分なりの「買い増しルール」をあらかじめ言語化しておくことです。たとえば、「一定額のインデックス投資信託への積立は相場水準にかかわらず継続する」「余剰資金での追加投資は、相場が過熱していると感じるときほど金額を抑える」といったルールを、相場が落ち着いているうちに決めておきます。相場が大きく動いている最中に新しいルールを考えようとすると、どうしても感情に引っ張られてしまうためです。
高値掴みを過度に恐れることのデメリット
一方で、「高値掴みが怖い」という感情に支配されすぎることにもデメリットがあります。
「もう少し下がってから買おう」と考えて投資を先延ばしにし続けると、結果的に相場からずっと退場している状態になり、機会損失が積み重なっていきます。相場が調整するタイミングを正確に予測することは、プロの投資家であっても極めて難しいとされており、個人投資家が「絶好の押し目」を狙って待ち続けることは、現実的にはうまくいかないケースが多いというのが実感です。
私自身、投資を始めたばかりの頃は「もう少し下がるのを待とう」と考えて現金のまま寝かせていた資金があり、結果的にその後の相場上昇を横目に見ながら機会損失を感じた経験があります。この経験から、「待つこと」自体にもコストがあるという意識を持つようになりました。
シングルファーザー・子育て家庭ならではの視点
4人の子どもを育てる家庭では、教育費や生活費など、今後確実に発生する支出があらかじめ見えています。だからこそ私は、生活防衛資金と近い将来使う予定のある資金は、相場の状況にかかわらず、確実に円建ての安全資産で確保しておくことを最優先にしています。そのうえで、当面使う予定のない余剰資金の部分についてのみ、暴騰相場かどうかを気にしながら投資判断をするようにしています。
生活の土台となる資金と、長期的な資産形成に回す資金をきちんと分けて考えることで、「相場が暴落したら生活が立ち行かなくなるのでは」という不安から解放され、結果として長期的な視点での投資判断がしやすくなると感じています。逆に、生活資金と投資資金の境目があいまいなままだと、相場の変動のたびに冷静な判断が難しくなり、高値掴みへの恐怖も、狼狽売りへの恐怖も、両方が増幅されてしまいます。
暴騰相場で「待つ」という選択肢が合理的なケース
すべてのケースで「待たずに買い続けるべき」というわけではありません。たとえば、近い将来(数年以内)に住宅購入や教育資金として使う予定が明確に決まっている資金であれば、暴騰相場だからといって新たに投資に回すのではなく、確実性を優先して預貯金などで確保しておくほうが合理的です。また、すでに自分のリスク許容度を超える水準まで投資比率が高まっている場合は、無理に買い増しをせず、資産配分のバランスを見直すことを優先すべき場面もあります。
つまり、「暴騰相場だから買うべき」でも「暴騰相場だから待つべき」でもなく、あくまで自分の資金の性格(いつ使う予定のお金か)と、現在のリスク許容度に照らして判断するというのが、20年間投資を続けてきた私なりの結論です。
なお、以前の記事「積立投資は相場が下がったときこそ続ける理由」や「投資のリスク許容度をライフイベントから逆算する方法」でも、近しいテーマを扱っていますので、あわせて参考にしていただければと思います。
まとめ
暴騰相場での「買い増すべきか、待つべきか」という悩みは、投資経験を重ねても完全にはなくならない感情です。しかし、「最高値=天井」とは限らないというデータの傾向や、積立投資の継続・時間分散・事前のルール化といった仕組みを取り入れることで、感情に振り回されずに判断できる場面は増やせます。生活防衛資金と投資資金を明確に分けたうえで、自分の資金の性格に合わせた判断を積み重ねていくことが、長期的な資産形成につながると感じています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資行動や相場見通しを推奨・保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。個別の税務・投資・法律に関する判断については、税理士やファイナンシャルプランナーなど専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。


