不動産と年金|家賃キャッシュフローが老後を変える・年金制度で学ぶ資産形成シリーズ第12話

投資・資産運用

前回の第11話「年金・株・不動産・現金――4資産を一枚の地図に束ねる」では、私が20年向き合ってきた4つの資産を5つの軸で採点し、どれも単独では致命的な弱点を抱えていること、だからこそ性格の違う資産を組み合わせて弱点を打ち消し合う「ポートフォリオ思考」が背骨になることを書きました。そしてその最後で、こう予告しました――次は、私が最も深く・最も生々しく付き合ってきた不動産という攻めの資産と、年金という終身の守りを、どう一つの家計の中で噛み合わせるのか、実践編に入る、と。今回はその約束を果たします。本話は、地図を一歩踏み込んで「終身の家賃」という発想に落とし込む回です。シリーズ全体の見取り図は年金で学ぶ資産形成シリーズのハブページにまとめてありますので、行き来しながら読んでいただければと思います。

先に私の立場を申し上げておきます。私は4人の子を一人で育てている父親で、大家として20年、個人事業主として20年、投資家として20年やってきました。妻を病気で亡くしており、ひとり親として家計の地面を一段ずつ固めることの重みを、知識としてではなく経験として知っています。不動産は、私が人生をかけて実際に持ち、増やし、ときに痛い目に遭いながら付き合ってきた相手です。机上の話ではありません。だからこそ、最初にはっきり申し上げます――私は不動産投資を、誰にでも勧められるものとは思っていません。以下はあくまで私個人の見解であり、不動産は元本保証ではなく、空室・修繕・流動性・災害・融資という重いリスクを必ず伴います。本話は不動産投資を推奨する記事ではなく、私が20年で学んだ「光と影」を、影のほうを濃く書く記事です。最終的な判断はご自身の状況や、必要に応じて金融機関・税理士・専門家の確認を踏まえて行ってください。

「終身の年金」と「終身の家賃」――2つの終身収入

このシリーズで私は、第1話から一貫して年金は”投資商品”ではなく”保険”だと言い続けてきました。その核心は、公的年金が「生きている限り、死ぬまで給付が続く」終身収入だという点にあります。何歳まで生きるか分からないという「長生きのリスク」――本来は喜ばしいはずの長寿が、お金の面では「資金が底をつくかもしれない」という不安に変わる、人生最大級の不確実性です。年金は、この長生きリスクに対する保険として、終身の安定したキャッシュフローを生み続けてくれる。これが、年金という守りの土台の正体でした。

では、不動産はどうか。私が20年、大家を続けてきて行き着いた一番の発見は、家賃もまた「終身」たりうるということです。建物が建ち、入居者がいる限り、毎月家賃が振り込まれる。入居者が入れ替わっても、物件さえ手元にあれば、家賃というキャッシュフローは続く。私が死んでも、物件は子に残り、家賃は子の世代へと引き継がれていく。公的年金が「制度が保証する終身収入」だとすれば、家賃は「自分が保有する資産が生み出す、私的な終身収入」です。私はこの2つを、頭の中で「終身の年金」と「終身の家賃」という双子のキャッシュフローとして並べて考えています。

この2つは、性格が驚くほど似ています。どちらも毎月・毎年、決まった額が口座に振り込まれる。どちらも株のように激しく上下に踊らず、安定した流れを生む。どちらも「使い切ってしまう資産」ではなく、「生み続ける資産」だという点で共通しています。老後の家計を考えるとき、私が最も恐れているのは「貯めた資産を取り崩していくうちに、底が見えてくる恐怖」です。退職金や貯金を切り崩して暮らす生活は、残高が減るたびに「あと何年もつだろうか」という不安がつきまとう。けれど、終身の年金と終身の家賃という2本のキャッシュフローの蛇口があれば、元本を取り崩さなくても、毎月の流れだけで暮らしが回る。残高を減らさずに生きられる――これが、私が老後設計の理想形だと考えている姿です。

もちろん、両者には決定的な違いもあります。年金は制度が保証するぶん、自分の努力では増やせず、放っておける(手間がかからない)。一方の家賃は自分が保有・管理する資産が生むぶん、空室・修繕・管理という手間とリスクが常につきまといます。年金は「もらう」もの、家賃は「働かせて生ませる」もの。けれど、どちらも終身のキャッシュフローであるという一点で、老後の地面を支える同じ役割を担える。だから私は、年金と不動産を「攻めと守り」と単純に切り分けるのではなく、「制度が支える終身収入」と「資産が生む終身収入」という2本柱として捉え、噛み合わせることを考えてきました。本話は、この発想を軸に進めていきます。

20年大家が見た、家賃が生む時間の自由

では、家賃というキャッシュフローが実際に家計に何をもたらすのか。20年大家を続けてきた私の体感を、正直に書きます。きれいごとではなく、影も含めて。

まず、家賃収入が家計にもたらす最大のものは、お金そのものよりも「時間の自由」だと私は感じています。労働で得る給与は、自分が働いた時間の対価です。働くのをやめれば、収入は止まる。けれど家賃は、自分が働いていない時間にも入ってくる。眠っている間も、子の運動会を見ている間も、物件が代わりに働いて家賃を生んでくれる。これは、ひとり親として4人の子を育ててきた私にとって、何より大きかった。子どもが熱を出して仕事を休んだ月も、家賃という別の蛇口があることで、家計が即座に倒れない。収入の源泉を「自分の労働時間」だけに一本化しないこと――これが、家賃という資産が私にくれた、お金以上の安心でした。

具体的なイメージを、数字を使ってお話しします(あくまで考え方を示すための単純化した例で、実際の利回りや経費は物件ごとに大きく異なります)。たとえば、ある物件が毎月10万円の家賃を生むとします。年間で120万円。ここから固定資産税・管理費・修繕積立・空室期間の損失・融資返済を差し引いて、手元に残るのが仮に月3〜4万円だとしましょう。一見すると小さな額です。けれど、この「月3〜4万円が、自分の労働なしに、終身で続く」という性質を、年金と同じ目線で見てください。月4万円は年48万円。これが65歳から30年続けば、累計1,440万円。さらに、こうした物件を時間をかけて複数持てば、家賃の合計は月10万、20万と積み上がっていく。公的年金に、家賃という”私的な上乗せ年金”を足していく――これが、私が20年かけてやってきたことの本質です。

そして、家賃には年金にはない強みがあります。インフレに連動しやすいことです。前回の採点表で、不動産のインフレ耐性に4資産で唯一の◎をつけました。物価が上がる局面では、家賃も地価も上昇しやすい。現金が物価上昇で実質目減りしていく一方で、家賃という収入は物価と一緒に値を上げてくれる傾向がある。公的年金にも物価調整の仕組みはありますが、制約もあって完璧ではありません。「終身の年金」のインフレ耐性の弱さを、「終身の家賃」のインフレ耐性の強さで補う――この組み合わせの妙が、私が年金と不動産を双子として並べる理由の一つです。

ただし、ここまで読んで「では自分も」と思った方には、強くブレーキを踏んでほしい。家賃が生む時間の自由は、20年という時間と、数えきれない失敗の上にようやく立っているものです。私が見せている「いまの安定」の裏には、深夜の設備トラブルの電話、半年埋まらなかった空室の胃の痛む日々、滞納者との交渉、想定外の大規模修繕の出費――数えきれない影があります。家賃というキャッシュフローは、放っておいて湧いてくるものではありません。次の章で、その影を正直に書きます。

不動産のリスクを正直に――空室・修繕・流動性・災害

不動産投資の話は、世の中では「家賃で不労所得」「ほったらかしで資産形成」と、光の部分ばかりが語られがちです。けれど、20年やってきた私の実感では、不動産で失敗する人の大半は、影を軽視した人です。だからここでは、私が実際に痛い目を見てきた4つのリスクを、一つずつ正直に書きます。これを呑み込めないなら、不動産には手を出さないほうがいい。私はそう思っています。

第一に、空室リスク。家賃は「入居者がいる限り」入ってきます。裏を返せば、入居者がいなければ、家賃はゼロです。それでも固定資産税は来るし、融資の返済は止まりません。私は、退去から次の入居まで半年以上埋まらなかった物件を経験しています。その間、収入はゼロなのに、返済と税と管理費は毎月出ていく。家賃を当てにして家計を組んでいたら、空室の一発で資金繰りが崩れます。満室を前提に収支を組んではいけない――これは、空室で胃を痛めた私が、骨身に刻んだ教訓です。私はいまも、収支計算は「年間2か月は空室になる」という前提でしか立てません。

第二に、修繕リスク。建物は、時間とともに必ず劣化します。給湯器が壊れ、エアコンが止まり、雨漏りが起き、外壁や屋根は十数年ごとに大規模な修繕を要求してくる。これらの出費は、予告なく、まとまった額でやってきます。給湯器一台で十数万円、屋根や外壁の修繕なら百万円単位。「家賃が月4万円残る」と喜んでいても、一度の大規模修繕で、数年分の手残りが吹き飛ぶことがある。私は、修繕費を「いつか必ず来る確定した支出」として、毎月の家賃から積み立てておくことを20年続けています。修繕を見込まない収支計算は、絵に描いた餅です。

第三に、流動性リスク。前回の採点表で、不動産の流動性に×をつけました。これは初心者が最も軽視する点です。株なら数日で売って現金にできますが、不動産はすぐには売れません。買い手を探し、価格を交渉し、契約・登記を経て、売却完了まで数か月かかるのが普通です。急にお金が必要になっても、間に合わない。しかも、急いで売ろうとすれば足元を見られ、安値で手放す羽目になる。「いざというときの現金は、不動産とは別に持っておく」――これができていないと、不動産は資産どころか、家計の重しになります。だから私は、不動産という流動性のない資産を持つからこそ、現金という即時の流動性を人より厚めに確保しているのです。

第四に、災害リスク。これは、日本で現物の不動産を持つ以上、絶対に目をそらせないリスクです。地震、台風、水害、火災――現物資産は、物理的に壊れたり、価値が一夜で毀損したりする可能性を常に抱えています。保険である程度カバーはできますが、保険で全てが戻るわけではありません。立地によっては、災害後に入居需要そのものが消えることもある。株や年金にはない、「現物だからこそ物理的に失われうる」という重いリスクを、不動産は構造的に背負っています。私は物件を選ぶとき、利回りの数字より先に、ハザードマップと地盤を見ます。

これら4つのリスクを並べて、私が言いたいのは一つです。不動産の家賃は「不労所得」ではない。それは、空室・修繕・流動性・災害という重いリスクを引き受け、手間をかけて管理し続ける対価として、ようやく手に入る収入です。前回の採点表で、不動産の手間に×をつけたのは、この継続的なコストを正直に評価したからです。年金が「放っておける終身収入」なら、家賃は「働かせ続けてようやく続く終身収入」。この違いを呑み込めるかどうかが、不動産を持てるかの分かれ目だと、私は思っています。

借金との向き合い方――事業性融資は味方、消費性融資は敵

不動産を語るうえで、避けて通れないのが借金(融資)です。不動産は、銀行からの融資を使って自己資金の何倍もの規模の資産を持てる、ほぼ唯一の身近な資産です。レバレッジ――てこの原理。これが不動産の最大の魅力であり、同時に最大の凶器でもあります。ここが、本シリーズで私が最も濃く語りたかった核心です。

私の借金に対するスタンスを、はっきり申し上げます。私は基本的に、借金反対派です。けれど、ただ一つだけ例外があります――借りた金で「借入額+借入にかかるコスト(金利・手数料)」を上回って増やせる、堅い見込みがあるとき。このときに限り、私は借金を「事業」として取りに行きます。この線引きを、私は「事業性融資」と「消費性融資」という言葉で、頭の中ではっきり分けています。

事業性融資とは、お金を生む資産を買うための借金です。不動産投資のローンが、その代表例。借りた1,000万円で物件を買い、その物件が家賃を生み、家賃が返済額と諸経費(金利・税・修繕・空室損)を上回り、なおかつ手元にキャッシュが残る――この計算が一円単位で堅く立つなら、借金は資産を加速させる味方になります。借入のコスト(金利)よりも、資産が生むリターン(家賃利回り)が確実に上回る。このとき、複利は私の味方として働きます。生まれた家賃で繰り上げ返済を進め、返済が終われば家賃はまるごと手残りになり、その手残りが次の投資の元手になる――お金がお金を生む雪だるまが、私の側で転がり始める。これが、私が「複利を株主側・資産の持ち手側で必ず味方につける」と言い続けてきたことの、不動産における実践です。

一方、消費性融資とは、お金を生まないものを買うための借金です。リボ払い、カードローン、生活費の借り入れ、見栄のための車や買い物のローン。これらは、買った瞬間に価値が減り、何のキャッシュフローも生みません。生まないどころか、毎月利息という形で、お金が出ていくだけ。このとき複利は、私の敵として働きます。利息が元本に乗り、その膨らんだ元本にまた利息が乗る。返済が追いつかなければ、借金の雪だるまが、私を飲み込む側で転がり始める。前回までのシリーズで私が繰り返してきた「複利を借り手側で絶対に敵に回さない」という原則は、まさにこの消費性融資を絶対に背負わない、という決意です。

同じ「借金」という言葉でも、事業性融資と消費性融資は、複利を味方につけるか、敵に回すかという一点で、天と地ほど違います。私は不動産投資の融資を、決して「投資」とは呼びません。「事業」と呼びます。なぜなら、収支計算を一円単位で詰め、空室2か月・修繕積立・金利上昇を全て織り込んだうえで、それでも借入コストを家賃が上回ると確信できたときにしか、判断のハンコを押さないからです。私が大家として20年やってきて、致命傷を負わずに済んでいる理由は、才能でも運でもありません。この線引きを、一度も緩めなかったからです。

だから、もしあなたが不動産投資を考えるなら、最初に問うべきは「いくら儲かるか」ではありません。「最悪の事態(長期空室・金利上昇・大規模修繕が重なる)でも、この融資の返済を続けられるか」です。その答えがイエスでない融資は、事業性融資の顔をした消費性融資――いずれ複利が牙を剥く、危険な借金です。レバレッジは、計算が堅く立つときだけ味方になり、計算が崩れた瞬間に、家計を一気に飲み込む最強の敵に変わります。この両面を、私は20年、片時も忘れたことがありません。

リバースモーゲージを最終手段に留める理由

不動産と老後資金を語るとき、近年よく耳にするようになったのがリバースモーゲージです。これは、自宅という不動産を担保にお金を借り、生きている間は返済せず(または利息のみ返済し)、亡くなったときに自宅を売却して一括返済する、という仕組みです。「自宅に住み続けながら、その資産価値を老後資金に換えられる」と説明され、老後資金が不足する世帯の選択肢として紹介されることが増えました。ここまで「終身の家賃」という攻めの不動産活用を語ってきた本話の締めくくりに、この「自宅という不動産を、守りから取り崩す」発想について、私の立場をはっきり書いておきます。

結論から言えば、私はリバースモーゲージを「最終手段」として位置づけています。否定はしません。他に手段がなく、生活が立ち行かないなら、自宅を売って施設に移るよりも住み慣れた家に住み続けられるという点で、合理的な選択肢になりうる。けれど、進んで選ぶものではなく、他の全ての手を尽くした最後の最後に検討するものだと考えています。その理由は、これまでの私の原則に照らせば、明快です。

リバースモーゲージは、借金です。そして、その性格は――お金を生まない自宅を担保に借りるという点で――どちらかといえば消費性融資に近い。借りたお金は生活費として消えていき、何のキャッシュフローも生みません。一方で、利息は発生し続けます。多くの仕組みでは、借りている間の利息が元本に乗っていく。つまり、複利が借り手である自分の側で、ゆっくりと膨らんでいく。私が「複利を借り手側で絶対に敵に回さない」と言い続けてきた、まさにその構図がここに現れます。生きている間は返済が表に出ないぶん、複利が静かに、けれど確実に、自宅の価値を食っていく。亡くなったときには、膨らんだ債務の返済のために自宅が売られ、子に残せるはずだった資産が消えることもある。

さらに、リバースモーゲージには固有のリスクもあります。地価が下がれば担保価値が目減りし、借りられる枠が縮む(あるいは追加担保を求められる)可能性がある。長生きすればするほど利息が積み上がり、想定より早く担保価値の上限に達することもある。長生きという、本来は喜ばしいことが、この仕組みではリスクに変わる。これは、長生きリスクに「終身の給付」で備える年金とは、正反対の構造です。年金が長生きするほど価値を増す保険なら、リバースモーゲージは長生きするほど債務が膨らむ借金。同じ「老後資金」を語る道具でも、向いている方向が真逆なのです。

だからこそ私は、リバースモーゲージを最終手段に留めるために、その手前で打てる手をすべて打っておくことを、現役世代に強く勧めます。終身の年金を最大化する(繰下げ受給などを検討する)、終身の家賃を生む資産を時間をかけて築く、現金の土台を厚く持つ、株という成長エンジンを長期で握る――こうした手を尽くしていれば、自宅を取り崩す最終手段に手を伸ばさずに済む確率が、ぐっと上がります。自宅は、住む場所であって、最後まで取り崩さずに済むなら、それが一番いい。私はそう考えています。攻めの不動産(家賃を生む資産)は積極的に活用しても、守りの不動産(自宅)は、複利を敵に回してまで取り崩す対象にはしない――これが、不動産と借金に20年向き合ってきた私の、最後の線引きです。

まとめ

不動産と年金――2つの終身収入をどう噛み合わせるか。本話の要点を整理します。

  • 「終身の年金」と「終身の家賃」:公的年金は制度が保証する終身収入、家賃は自分が保有する資産が生む私的な終身収入。どちらも元本を取り崩さず、毎月のキャッシュフローだけで暮らしを支えられる双子の収入。年金のインフレ耐性の弱さを、家賃のインフレ耐性の強さが補う。
  • 家賃が生むのは「時間の自由」:家賃は自分が働いていない時間にも入る。収入源を労働時間だけに一本化しないことが、家計が倒れない安心になる。ただしそれは20年の手間と失敗の上に立っているもので、不労所得ではない。
  • 4つのリスクを正直に:空室(入居者がいなければ家賃ゼロ)、修繕(予告なくまとまった額で来る)、流動性(すぐ売れない)、災害(現物だからこそ物理的に失われうる)。満室・無修繕を前提にした収支計算は絵に描いた餅。
  • 事業性融資は味方、消費性融資は敵:お金を生む資産を買う借金で、借入コストを上回って増やせるなら複利は味方。お金を生まないものを買う借金は、複利が敵に回って自分を飲み込む。不動産融資は「投資」ではなく「事業」として、最悪の事態でも返済できるかで判断する。
  • リバースモーゲージは最終手段:自宅を担保にする借金で、複利が借り手側で膨らみ、長生きするほど債務が増える。年金とは正反対の構造。手前で打てる手(年金最大化・家賃資産・現金・株)をすべて尽くし、最後の最後にだけ検討する。

このシリーズは、第1話から年金という「制度の器」を解剖し、前回の第11話で年金・株・不動産・現金を一枚の地図に束ねました。本話では、その地図の中から不動産を取り出し、年金と並べて「2つの終身収入」として噛み合わせる実践に踏み込みました。改めて見えてくるのは、私の資産設計が結局のところ三本柱に集約されるということです――公的な終身収入である「年金」、私的な終身収入である「家賃」、そして長期で資産を成長させるエンジンである「株」。年金と家賃という2本の終身キャッシュフローで老後の地面を支え、株という成長エンジンで資産全体を膨らませ、現金という土台でその全てを慌てず握り続ける。複利を借り手側で決して敵に回さず、株主側・資産の持ち手側で必ず味方につける――この原則を、年金と不動産という2つの現実に落とし込んだのが、本話でした。

繰り返しになりますが、本記事は私個人の見解であり、不動産投資を推奨するものではありません。不動産は元本保証ではなく、空室・修繕・流動性・災害・融資の重いリスクを必ず伴い、損失が出る可能性があります。まずはご自身の生活防衛資金(現金の土台)が足りているかを確認し、不動産に手を出すとしても、最悪の事態でも返済を続けられる範囲の事業性融資に限り、必要に応じて金融機関・税理士・専門家の確認を踏まえて判断してください。

このシリーズを最初から読みたい方は第1話「そもそも年金とは何か――”保険”として捉え直す」から、全体像は年金で学ぶ資産形成シリーズのハブページへ。年金以外のテーマも含めた資産形成全体の入り口は資産形成の統合ハブにまとめています。

そして次回――年金と家賃という2つの終身収入、そして株という成長エンジン。三本柱の発想が見えてきたところで、いよいよ多くの人が一番知りたい問いに正面から向き合います。「老後資金は、結局いくら必要なのか」。そして、生活コストそのものを見直す選択肢として、近年現実味を帯びてきた「海外移住」という発想にも触れます。必要額を闇雲に怖がるのではなく、自分の三本柱で支えられる範囲から逆算して老後の地面を設計する――その実践に入ります。第13話:老後資金はいくら必要か+海外移住という選択肢 へ続きます。

▶ 次の話:第13話 老後資金はいくら必要か+海外移住という選択肢

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