シングルファーザーの遺言書、公正証書遺言を選んだ理由

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「遺言書なんて、まだ早いのでは」と思う方も多いかもしれません。実際、自分も40代のうちに遺言書を作るとは思っていませんでした。しかし4人の子どもを一人で育てる立場になったとき、考え方が大きく変わりました。もし自分に万が一のことがあったら、この子たちの生活は誰がどう支えるのか。財産の分け方はどうなるのか。そう考え始めると、遺言書は「お金持ちが作るもの」ではなく、「一人で子どもを育てている人こそ作っておくべきもの」だと気づいたのです。

この記事では、遺言書の中でも「公正証書遺言」という形式をなぜ選んだのか、自筆証書遺言との違いを踏まえながら、実際の作成プロセスや費用感、書いた内容の考え方まで、自分の経験をベースに整理していきます。相続対策全体の話ではなく、あくまで「遺言書という手段そのもの」にフォーカスした内容です。

なぜ「今」遺言書が必要だと感じたか

会社員で配偶者がいる家庭であれば、自分に万が一のことがあっても、もう一方の親が子どもの生活を継続して支えられます。法定相続分も配偶者と子どもで分け合う形になり、財産の帰属先も比較的シンプルです。しかしひとり親家庭、それも個人事業主として事業用資産と生活用資産が入り混じっている状態では、話がまったく違ってきます。

自分に何かあったとき、未成年の子どもが複数いる状態で相続が発生すると、法定相続人としての手続きは子どもたち自身、あるいは未成年後見人が担うことになります。遺言書がなければ、法定相続分に従って機械的に財産が分割されることになりますが、それが必ずしも子どもたちの生活実態に合っているとは限りません。事業用の口座、投資用の証券口座、不動産、生命保険といった資産が複数の種類にまたがっていると、遺言書がない状態での相続手続きは想像以上に煩雑になります。「もし自分が突然いなくなったら、この子たちは何から手をつければいいのか」と考えたとき、遺言書を作らない理由がないと感じました。

自筆証書遺言と公正証書遺言、何が違うのか

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という二つの形式があります。自筆証書遺言は、文字通り自分で全文を手書きし、日付と署名押印をするだけで作成できる、もっとも手軽な方法です。費用もかからず、いつでも書き直せる自由度の高さが魅力です。近年は法務局による自筆証書遺言書保管制度も整備され、紛失や改ざんのリスクを減らす仕組みも用意されています。

一方の公正証書遺言は、公証役場で公証人という専門家が関与し、証人2名の立ち会いのもとで作成する形式です。原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざん・偽造のリスクがほぼありません。また、家庭裁判所での「検認」という手続きが不要になる点も大きな違いです。自筆証書遺言の場合、法務局保管制度を使わないと相続開始後に検認手続きが必要になり、その分だけ相続人の負担と時間がかかります。

自筆証書遺言を選ばなかった理由

自分が公正証書遺言を選んだ一番の理由は、「万が一のときに、子どもたちの手続き負担を最小限にしたい」という一点に尽きます。自筆証書遺言は手軽ですが、形式不備で無効になるリスクや、内容の解釈をめぐって相続人間で争いが生じる可能性がゼロではありません。4人の子どもたちが、まだ人生経験の浅い状態でそうした法的トラブルに直面することを想像すると、多少の手間と費用をかけてでも、確実性の高い方法を選ぶべきだと判断しました。

また、事業用資産と個人資産が混在している状況、複数の不動産や証券口座がある状況では、財産目録の内容も複雑になりがちです。公証人という専門家のチェックが入ることで、記載内容の法的な曖昧さを事前に潰しておけるという安心感も、自筆証書遺言にはない大きなメリットだと感じました。

公正証書遺言を作成した実際の流れ

実際の作成プロセスは、想像していたよりも段取りが必要でした。まず自分の財産をすべて洗い出す作業から始まります。預貯金、証券口座、不動産、生命保険、事業用の資産まで、一つひとつリストアップし、誰にどう配分したいかを整理します。この段階で、税理士やファイナンシャルプランナーに相談しながら財産目録を作り込みました。

次に、遺言の内容を公証人に伝えるための「原案」を作成します。これは自分で作ることも、司法書士や弁護士などの専門家に依頼して作成することもできます。自分の場合は、資産構成が複雑だったこともあり、専門家のサポートを受けながら原案を詰めていきました。原案が固まったら公証役場に予約を取り、証人2名(利害関係のない第三者である必要があります)を手配し、当日は公証人が遺言の内容を読み上げ、本人と証人が内容を確認して署名押印するという流れで完了します。準備段階も含めると、トータルで1〜2ヶ月程度の期間がかかりました。

費用はいくらかかったか

公正証書遺言の作成には、公証人手数料がかかります。手数料は遺言の対象となる財産の価額に応じて段階的に決まる仕組みになっており、財産額が大きいほど手数料も上がります。目安として、財産額が数千万円規模であれば数万円台、財産構成が複雑で複数の相続人がいる場合はさらに加算される、というイメージです(手数料の具体的な金額は公証人手数料令に基づいて計算されるため、正確な金額は事前に公証役場に確認する必要があります)。

これに加えて、専門家に原案作成を依頼した場合はその報酬、証人を紹介してもらう場合はその費用も発生します。自分の場合はトータルで十数万円程度の費用がかかりましたが、「子どもたちが困らないための保険」だと考えれば、決して高い出費ではなかったと感じています。

遺言書に何を書いたか

財産の分配方法はもちろんですが、それ以外にも書いておいてよかったと感じている内容があります。ひとつは「未成年後見人」の指定です。もし自分に万が一のことがあれば、まだ成人していない子どもの身上監護や財産管理を担う後見人が必要になります。信頼できる親族を候補として指定しておくことで、家庭裁判所での後見人選任手続きがスムーズになります。

もうひとつは「付言事項」と呼ばれる、法的効力はないものの、家族への想いを自由に書き記せる部分です。財産の分け方だけを淡々と記した遺言書よりも、なぜそのような分配にしたのか、子どもたち一人ひとりへの想いを添えておくことで、相続人同士の感情的な摩擦を和らげる効果があると言われています。自分もこの部分には、事業を通じて大切にしてきた考え方や、子どもたちへの願いを綴りました。

作ってみて感じたこと・見直しのタイミング

実際に公正証書遺言を作成してみて感じたのは、「一度作って終わり」ではないということです。資産状況は毎年変わりますし、不動産投資の出口戦略を実行して物件を売却したり、新しい投資を始めたりすれば、財産目録の内容も更新が必要になります。自分は年に一度、確定申告のタイミングに合わせて資産状況を棚卸しし、遺言の内容と大きくズレていないかを確認するようにしています。

また、子どもたちが成人に近づくにつれて、未成年後見人の指定が不要になるなど、状況が変化していくのも事実です。遺言書は一度作って安心するものではなく、ライフステージの変化に合わせて見直し続けるものだと捉えるようになりました。

まとめ

遺言書、特に公正証書遺言は「資産家だけのもの」ではありません。むしろ、ひとり親で複数の子どもを育てている個人事業主こそ、万が一のときに子どもたちの負担を最小限にするための備えとして検討する価値があると、自分の経験から強く感じています。自筆証書遺言との違いを理解した上で、自分の資産状況や家族構成に合った形式を選ぶことが大切です。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、遺言書の作成方法・手数料・法的効力等の詳細は個々の状況や法改正によって異なります。実際の遺言書作成にあたっては、公証役場、司法書士、弁護士等の専門家に必ずご相談の上、個別の状況に応じた判断を行ってください。

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