家計管理で「貯蓄率」を確認する|4児シンパパの家計管理シリーズ⑨

ひとり親の家計

こんにちは、シンパパ資産設計士です。

家計管理シリーズ第9回です。ここまで、家計の把握・分類・計算方法・ツールの活用まで一通り解説してきました。今回は、家計管理の成果を測る「貯蓄率」という指標を使って、自分の家計が資産形成にどれだけ貢献しているかを数字で確認する方法を解説します。

貯蓄率とは何か

貯蓄率とは、手取り収入のうち、実際に貯蓄・投資に回せた金額の割合を示す指標です。計算式はシンプルです。

貯蓄率(%)= 貯蓄額 ÷ 手取り収入 × 100

例えば、年間の手取り収入が500万円、年間の貯蓄額が150万円だったとすると、次のように計算します。

150万円 ÷ 500万円 × 100 = 貯蓄率30%

この30%という数字が高いか低いかは、家庭の状況や目標によって評価が分かれますが、一般的には20〜30%程度を確保できていれば、良好な家計状態だと言われています。

貯蓄率が「見える化」してくれるもの

貯蓄率という1つの数字にまとめる最大のメリットは、収入や家族構成が違う家庭同士でも、家計の健全性を横並びで比較できる点にあります。手取り300万円で貯蓄額60万円の家庭と、手取り800万円で貯蓄額160万円の家庭は、貯蓄額そのものは大きく違いますが、貯蓄率で見るとどちらも20%で同水準です。金額の絶対値だけを見て一喜一憂するのではなく、「収入に対してどれだけの割合を将来に回せているか」という視点を持てることが、貯蓄率という指標の価値です。

なぜ貯蓄率を計算する必要があるのか

これまでのシリーズで、収入と支出を細かく把握する方法を紹介してきました。貯蓄率は、その集大成として、「結局のところ、家計管理は資産形成にどれだけ貢献できているのか」を1つの数字に集約したものです。

家計簿をどれだけ丁寧につけていても、最終的に貯蓄率が向上していなければ、家計管理の目的(お金の流れを把握して資産を増やす、というシリーズ第1回の原点)は達成できていないことになります。逆に言えば、多少家計簿の記録が大雑把でも、貯蓄率が着実に向上しているなら、その家計管理は十分に機能していると言えます。

貯蓄率の計算に含めるべきもの

貯蓄率を計算する際、「貯蓄額」に何を含めるかで数字が変わってきます。僕がおすすめする計算方法は、次の3つをすべて合算することです。

  • 預金口座への積立額(生活防衛資金、特別費積立を含む)
  • 投資に回した金額(NISA・iDeCo・特定口座での積立額)
  • 負債の返済のうち、元本部分(住宅ローンの元本返済分。利息部分は純粋な支出であり含めない)

特に3つ目の「住宅ローンの元本返済」は見落とされがちですが、元本返済は実質的には「不動産という資産への積立」であるため、貯蓄率の計算に含めるべきだと考えています。

元本と利息を分けて考える重要性

住宅ローンの毎月の返済額は、元本部分と利息部分に分かれています。返済初期は利息の割合が大きく、返済が進むにつれて元本の割合が増えていくのが一般的な仕組みです。年末に金融機関から送られてくる「残高証明書」や返済予定表を見れば、その年の元本返済額・利息支払額の内訳を確認できます。利息部分は住居に住むための純粋なコストであり資産にはなりませんが、元本部分は返済するたびに、その分だけ住宅という資産に対する持分が増えていきます。この違いを理解した上で、元本部分のみを貯蓄額としてカウントすることが、より実態に即した貯蓄率の計算につながります。

兼業大家として意識している不動産の減価償却

兼業大家として不動産を保有していると、会計上は減価償却費として経費計上されますが、これはあくまで税務上の処理であり、実際に現金が出ていくわけではありません。貯蓄率を計算する際には、こうした「会計上は支出に見えるが、実際には現金が出ていかない項目」を混同しないよう注意が必要です。実際のキャッシュフローベースで、手元にいくら残っているかを基準に考えることが、正確な貯蓄率の把握につながります。

手取り収入の考え方(個人事業主の場合)

会社員であれば、手取り収入は給与明細から簡単に把握できます。個人事業主・フリーランスの場合は、事業収入から事業経費・税金・社会保険料を差し引いた「実際に家計として使える金額」を手取り収入として計算します。

個人事業主は収入が変動しやすいため、単月ではなく年間の実績値で貯蓄率を計算することをおすすめします(シリーズ第7回で紹介した年間生活費表と組み合わせると、この計算がスムーズになります)。

貯蓄率30%という目安の意味

一般的に「貯蓄率20〜30%」が良好な家計の目安とされる理由は、資産形成のシミュレーションにあります。仮に手取り収入が横ばいのまま、貯蓄率30%を何十年も維持できれば、複利の効果と合わせて、着実に資産を積み上げていくことができます。

ただし、この数字はあくまで一般論です。4人の子どもを育てるシングルファザー家庭のように、教育費の負担が大きい時期には、一時的に貯蓄率が下がることもあります。単年度の貯蓄率だけで一喜一憂せず、数年単位の推移で見ることが大切です。

子どもの成長段階によって目安が変わる

貯蓄率20〜30%という目安は、あくまで平均的な目安であり、子どもの成長段階によって現実的な水準は変わってきます。乳幼児期は比較的支出が抑えられ貯蓄率を高く保ちやすい一方、学齢期以降は教育費が増加し、貯蓄率が自然と下がっていく傾向があります。大学進学が重なる時期などは、一時的に貯蓄率がゼロやマイナスに近づくことも珍しくありません。「今は貯蓄率を高める時期」「今は教育費に重点を置く時期」というように、ライフステージごとに目標水準を柔軟に変えていくという考え方が現実的です(この複数年にわたる目標設定については、次のシリーズ「ライフプランの作り方」でさらに詳しく扱います)。

貯蓄率が低い年、高い年があって当然

これまでのシリーズで繰り返しお伝えしてきた通り、特別費が発生する年は貯蓄率が一時的に下がり、逆に特別費の少ない年は貯蓄率が上がる、という波が自然に生まれます。この波自体は問題ではなく、3〜5年程度の平均で見て、目標とする貯蓄率に近づいているかを確認するのが実践的なアプローチです。

「貯蓄率だけ」を見てはいけない理由

貯蓄率は便利な指標ですが、これだけを見ていると見落とすことがあります。それは、「資産全体の推移」です。貯蓄率が同じ30%でも、収入が増えている家庭と減っている家庭とでは、資産の増え方がまったく異なります。

また、投資に回した資金が値上がりした場合、その含み益は貯蓄率の計算には含まれませんが、資産全体で見れば増加しています。逆に、相場が悪い年には、貯蓄率は高くても資産全体は目減りしていることもあります。

したがって、貯蓄率は「フロー(毎年の流れ)」を見る指標、資産全体の残高は「ストック(積み上がった結果)」を見る指標として、両方をセットで確認することをおすすめします。

フローとストックがズレる典型的なパターン

フロー(貯蓄率)とストック(資産残高)がズレるパターンには、いくつかの典型例があります。1つ目は、相場の変動によるズレです。株式市場が好調な年は、貯蓄率がそれほど高くなくても資産残高は大きく伸びますし、逆に相場が悪化した年は、貯蓄率が高くても資産残高が減ることがあります。2つ目は、不動産評価額の変動によるズレです。兼業大家として物件を保有していると、周辺相場の変化によって、キャッシュフローとは無関係に評価額が動きます。これらのズレを見て一喜一憂するのではなく、短期的な評価額の増減は無視し、長期的なトレンドで資産形成が進んでいるかを判断する姿勢が大切です。

資産全体を把握する方法

資産全体を把握するには、預金・投資・不動産(評価額)などをすべて洗い出し、定期的に合計額を計算します。家計簿アプリの中には、連携している口座・証券口座の残高を自動で合算し、資産全体の推移をグラフで見られる機能を持つものもあります(シリーズ第8回で紹介したアプリの活用方法もあわせて参考にしてください)。

この資産全体の推移こそが、「本当に資産形成が進んでいるかどうか」の最終的な答え合わせになります。貯蓄率という毎年の努力の指標と、資産残高という結果の指標、両方を継続的にチェックする習慣を持つことをおすすめします。

資産全体を確認する頻度

資産全体の残高は、貯蓄率のように年1回だけ確認するのではなく、四半期に1回、あるいは半年に1回程度の頻度で確認することをおすすめします。あまり頻繁に確認しすぎると、日々の相場の値動きに一喜一憂してしまい、精神的な負担になりかねません。逆に確認頻度が低すぎると、資産形成の実感が湧きにくくなります。「気になりすぎない程度に、忘れない程度の頻度」を、自分自身の性格に合わせて見つけることが大切です。

資産全体の記録方法

資産全体の推移は、シリーズ第8回で紹介した家計簿アプリの資産管理機能を使う方法のほか、シンプルにスプレッドシートで「年月・預金残高・投資評価額・不動産評価額・合計」という表を作り、確認するたびに1行ずつ追記していく方法でも十分です。数年分のデータが蓄積されると、グラフ化するだけで自分の資産形成の軌跡が一目で分かるようになり、家計管理を続けるモチベーションにもつながります。

貯蓄率を上げるための優先順位(シリーズの振り返り)

貯蓄率を上げる方法は、これまでのシリーズで紹介してきた内容そのものです。改めて優先順位を整理すると、次の通りです。

  1. 固定費の見直し(シリーズ第4回):一度の手続きで継続的な効果
  2. 特別費の見える化(シリーズ第6回):想定外の支出による貯蓄率の急落を防ぐ
  3. 変動費の無理のない工夫(シリーズ第5回):継続できる範囲での最適化
  4. 収入を増やす:支出側の見直しが一巡したら、収入側の強化も視野に入れる

支出側の見直しには限界があります。ある程度の水準まで最適化できたら、次のステップとして収入を増やす方向にも目を向けることで、貯蓄率をさらに引き上げることができます。

収入を増やす選択肢を複数持つ意味

個人事業主として20年やってきた経験から強く感じるのは、収入源が1つしかない状態は、貯蓄率の計算上も家計全体としてもリスクが高いということです。本業の収入だけに頼っていると、その収入が何らかの理由で減少した瞬間、貯蓄率は一気に悪化します。事業収入、不動産収入、投資からの配当・分配金というように、複数の収入源を持っておくことで、どれか1つが不調でも他でカバーできる構造を作ることができます。これは貯蓄率を「攻めて」引き上げるだけでなく、「守り」の観点からも重要な視点です。

支出削減と収入増加、どちらが優先か

「支出を削るのと収入を増やすの、どちらが先か」という質問をよく受けますが、僕の答えは明確です。まず支出側を整理してから収入側に取り組むべきです。理由は、支出管理ができていない状態でいくら収入を増やしても、増えた分がそのまま支出の拡大に吸収されてしまう「生活水準の肥大化」が起きやすいからです。これまでの8回のシリーズで紹介してきた家計管理の土台があって初めて、収入増加の効果を最大限に貯蓄率の向上へとつなげることができます。

まとめ|貯蓄率は家計管理の「成績表」

今回のポイントを整理します。

  • 貯蓄率=貯蓄額÷手取り収入×100で計算する
  • 貯蓄額には預金積立・投資・住宅ローンの元本返済を含めて考える
  • 一般的な目安は20〜30%だが、単年度ではなく数年単位の平均で見る
  • 貯蓄率(フロー)だけでなく、資産全体の残高(ストック)もあわせて確認する
  • 貯蓄率を上げる基本は、固定費→特別費→変動費の順に見直すこと

ここまでの9回で、家計を「把握し」「整理し」「数字で評価する」という一連の流れが完成しました。次回はいよいよシリーズ最終回、家計管理から資産形成へと進むための橋渡しについて解説します。

貯蓄率を家族と共有するかどうか

貯蓄率という数字は、子どもが成長してお金の話を理解できる年齢になったら、大まかな形で共有することも検討に値します。「今年は収入の◯割を将来のために取っておけた」という感覚を子ども自身が持てると、お金は使うだけのものではなく、将来のために計画的に配分するものだという価値観が自然と育まれていきます。もちろん、具体的な金額まで細かく開示する必要はなく、割合という抽象化された数字だからこそ、共有するハードルも比較的低いというメリットがあります。

貯蓄率という指標の限界も理解しておく

貯蓄率は便利な指標ですが、万能ではありません。例えば、同じ貯蓄率30%でも、生活防衛資金がまったくない状態で投資にすべて回している家庭と、十分な生活防衛資金を確保した上で投資にも回している家庭とでは、リスクの度合いがまったく異なります。貯蓄率という1つの数字だけを見るのではなく、「貯蓄額の内訳」まで含めて確認することで、より実態に即した家計の健全性を評価できます。数字は道具であって、それ自体が目的ではないということを、シリーズを通して改めて強調しておきたいと思います。数字に振り回されるのではなく、数字を味方につけるという意識を、これからも大切にしていってください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 貯蓄率が低い(10%以下)のですが、どうすればいいですか?

まずは焦らず、シリーズ第4回で紹介した固定費の見直しから着手することをおすすめします。固定費の見直しは即効性があり、貯蓄率の改善に直接つながります。同時に、そもそもの手取り収入が生活水準に対して不足していないかも、冷静に見つめ直す価値があります。焦らず1つずつ、無理のない範囲でできることから着手していきましょう。

Q2. 貯蓄率100%を目指すべきですか?

おすすめしません。極端な貯蓄率は、シリーズ第5回で触れた「変動費を削りすぎる」ことと同様の弊害を招き、生活の質を著しく下げてしまいます。適度な楽しみを確保しながら、無理なく続けられる貯蓄率を目指すことが大切です。極端な数字を追いかけるより、長く続けられる水準を探すほうが、結果的に資産形成への一番の近道になります。何十年という長いスパンで考えれば、無理のないペースを保つことの価値は本当に計り知れません。

Q3. 貯蓄率の計算は、月次と年次のどちらで行うべきですか?

基本的には年次での計算をおすすめします。月によって特別費の有無や収入の波があるため、月次の貯蓄率は大きく変動しやすく、参考程度にとどめるのが実践的です。年に1回、年間実績を集計して貯蓄率を算出する運用が、最も実態を正確に反映します。

Q4. 貯蓄率を家計簿アプリで自動計算することはできますか?

アプリによっては、収入・支出・投資額を連携させることで、貯蓄率に近い指標を自動算出できるものもあります。ただし、住宅ローンの元本部分の切り分けなど、細かい調整はアプリだけでは対応しきれないことも多いため、年に1回はスプレッドシート等で手動計算し、実態と照らし合わせることをおすすめします。

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シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年


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投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。

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この記事を書いた人:シンパパ資産設計士

シングルファーザー × 個人事業主 × 20年投資家。4人の子どもを育てながら、資産運用・節税・保険・不動産を自分で実践中。「等身大の失敗談」と「リアルな数字」を武器に、シンパパの家計設計を発信しています。

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