個人事業主の国保料、こんなに高いのかと愕然とした話
確定申告を終えて国民健康保険料の通知書を開いた瞬間、思わず二度見してしまった経験がある方は少なくないと思います。私自身、個人事業主として仕事を始めてから20年になりますが、独立した年の6月に届いた国保料の通知書を見て「所得税や住民税より重いのでは」と本気で焦った記憶があります。
会社員時代は給与から天引きされる社会保険料の額をあまり意識せずに済みますが、個人事業主になると国民健康保険料は自分で全額を負担することになり、しかも会社員が加入する健康保険のような労使折半がありません。さらに私の場合は兼業で不動産賃貸業もやっていて、家賃収入という不動産所得も合算されるため、何も対策をしないと国保料はあっという間に賦課限度額に張り付きます。
加えて私はシングルファーザーとして4人の子を育てています。子どもの人数が多いご家庭ほど、扶養控除や医療費、教育費の負担が重なる一方で、国保料は「世帯単位」で計算される仕組みのため、家族構成の工夫次第で負担が変わってくる部分もあります。この記事では、私が20年間の個人事業主生活と大家業、そしてシングルでの子育てを通じて実際に試してきた「合法的に国保料を下げる方法」を、できるだけ具体的な数字とともにまとめていきます。
なお、国保料の計算方法や料率は市区町村によって異なり、年度ごとに改定されます。この記事で挙げる金額や割合は2026年時点で一般的とされる制度・水準をもとにした目安であり、正確な金額は必ずお住まいの自治体の最新の料率表で確認してください。
国民健康保険料の仕組みをまず正しく理解する
対策を考える前に、国保料がどう計算されているかを押さえておく必要があります。国民健康保険料(自治体によっては国民健康保険税)は、大きく分けて次の3つの区分の合計で決まります。
- 医療分(基礎賦課額):加入者全員の医療給付に充てる部分
- 後期高齢者支援金分:後期高齢者医療制度を支える部分
- 介護分(40歳〜64歳のみ):介護保険の財源にあたる部分
そして各区分は、さらに次の3つの要素で構成されるのが一般的です。
- 所得割:前年の総所得金額等から住民税の基礎控除相当額(多くの自治体で43万円)を差し引いた「賦課基準額」に、一定の料率をかけたもの
- 均等割:加入者一人あたりに定額でかかるもの
- 平等割:一世帯あたりに定額でかかるもの(自治体によっては廃止されている)
ここで重要なのは、所得割の計算基礎になる「所得」には事業所得だけでなく、不動産所得、雑所得、譲渡所得なども合算されるという点です。私のように事業所得と不動産所得の両方がある場合、どちらも国保料の計算対象になります。逆に言えば、合法的に「課税所得」そのものを圧縮できれば、所得割部分をまるごと下げることができるわけです。
また、国保料には年間の上限である「賦課限度額」が設定されています。医療分・支援金分・介護分を合わせた上限は年々引き上げられる傾向にあり、2026年度時点ではおおむね100万円台後半という水準が一般的です。所得がある程度高い個人事業主は、対策をしないとこの上限近くに張り付いてしまうため、控除をうまく使って所得割の計算基礎そのものを下げることが最も効果の大きい対策になります。
所得控除を最大化して課税所得そのものを圧縮する
国保料を下げる王道は、所得税と同じく「合法的に使える所得控除を漏れなく使う」ことです。私が実際に20年間かけて組み合わせてきた主な方法を挙げます。
青色申告特別控除をフル活用する
複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に電子申告すれば、最大65万円の青色申告特別控除が使えます。この控除は事業所得の計算段階で差し引かれるため、国保料の所得割の基礎にもそのまま効いてきます。私は開業当初は簡易な記帳で10万円控除しか受けていませんでしたが、会計ソフトを導入して複式簿記に切り替えてからは、この差額だけで年間数万円単位の国保料が変わりました。
小規模企業共済で「掛金全額所得控除」を使う
個人事業主やフリーランス向けの退職金積立制度である小規模企業共済は、月額最大7万円(年間84万円)まで掛金を積み立てられ、その全額が所得控除の対象になります。将来の退職金代わりに資産を積み上げながら、同時に国保料の計算基礎になる所得も圧縮できるため、私は独立して数年経ってからずっと上限に近い金額で加入しています。掛金は増減や一時停止も可能なので、収入が不安定な時期に無理に上限まで入れる必要はありません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)を併用する
国民年金の第1号被保険者である個人事業主は、iDeCoに月額最大6万8000円(年間81万6000円)まで拠出でき、これも全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれます。小規模企業共済とiDeCoは別枠で併用できるため、両方をフルで使うと年間160万円以上を所得控除に回せる計算になります。もちろん老後資金の形成という本来の目的が大前提ですが、結果として国保料の抑制にもつながっているという実感があります。
経費計上の精度を上げる
事業に関連する支出を漏れなく経費計上することも基本ですが、地味に効果が大きいのが「家事按分」の見直しです。自宅の一部を事務所として使っている場合の家賃・光熱費・通信費の按分比率を、使用実態に合わせて根拠を持って設定し直すだけで、年間数十万円の経費計上漏れが見つかることがあります。私は税理士に依頼して按分比率を一度洗い直してもらい、それまで見落としていた車両関連費用や自宅兼事務所の按分を適正化した結果、課税所得が下がり翌年の国保料にも反映されました。
不動産所得(大家業)がある人が特に注意すべきポイント
私は兼業で大家業も20年続けていますが、不動産所得がある個人事業主は国保料の計算がより複雑になります。事業所得と不動産所得は損益通算できるため、たとえば大規模修繕や設備投資で不動産所得が赤字になった年は、事業所得と相殺されて課税所得全体が下がり、結果的に国保料も下がります。
ただし注意したいのは、青色申告特別控除は事業的規模(いわゆる5棟10室基準)を満たす不動産賃貸業でなければ65万円控除が使えないという点です。私は開業当初は規模が小さく、10万円控除しか使えなかった時期がありました。規模が拡大してきたタイミングで税理士に事業的規模の判定を確認し、要件を満たしていることを申告書上でも明確にしたことで、控除額が引き上げられました。
また、減価償却費は現金支出を伴わずに所得を圧縮できる合法的な手段です。中古の木造アパートなどは法定耐用年数が短く、減価償却費を大きく計上できるケースが多いため、物件選びの段階から「所得の平準化」を意識しておくと、後々の国保料対策にもつながります。ただし過度な節税目的の物件選びは投資判断としての合理性を欠くこともあるため、あくまで本業の収益性を優先した上での副次的なメリットとして捉えるべきだと考えています。
世帯構成・扶養の工夫でできること
国保料は世帯単位で計算される部分(平等割や、世帯主が世帯全員分をまとめて納付する仕組み)があるため、家族構成の工夫も無関係ではありません。私はシングルファーザーとして4人の子を扶養していますが、扶養控除は所得税・住民税だけでなく、結果的に世帯全体の税・社会保険負担の設計に影響します。
子どもがアルバイトなどで一定額を超える所得を得るようになると、扶養控除の対象から外れたり、子ども自身が国保に加入する場合に均等割が別途発生したりすることがあります。子どもの収入額と扶養控除・国保料への影響は、毎年の税制改正で基準額が変わることもあるため、我が家では子どもがアルバイトを始めるタイミングで必ず年間の収入見込みを確認し、扶養の範囲内に収めるかどうかを本人と相談するようにしています。
知人に聞いた話ですが、ひとり親家庭で所得が一定基準以下の場合、児童扶養手当などの支援制度や、自治体独自の国保料軽減・減免制度が用意されていることがあるそうです。こうした制度は所得水準や自治体によって対象範囲が大きく異なるため、該当する可能性がある方は、収入証明を持ってお住まいの自治体の窓口で個別に確認するのが確実です。
また、未就学児がいる世帯については、国の制度として未就学児にかかる均等割額を一律で軽減する仕組みが導入されています。子どもの人数が多い世帯ほどこの軽減の恩恵を受けやすいため、対象となるお子さんがいる場合は自治体からの通知や国保料の内訳をきちんと確認しておくとよいと思います。
法人化(法人成り)という選択肢との比較
個人事業主の所得が一定水準を超えてくると、法人化によって社会保険を協会けんぽ・厚生年金に切り替えるという選択肢も出てきます。法人の社会保険料は労使折半のため一見負担が軽くなるように見えますが、法人側負担分も結局は会社の利益から出ているお金であり、単純に「得か損か」を判断するのは簡単ではありません。私自身、税理士と何度も試算した結果、現時点では個人事業主のまま所得控除を最大化する方針を継続していますが、所得水準や事業の将来性によっては法人化のほうが有利になるケースも十分にあります。
ここで、私がこれまで検討・実践してきた主な国保料対策を、効果の目安とあわせて整理します。
| 対策 | 年間の上限・目安 | 国保料への効果 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 最大65万円 | 所得割の基礎を直接圧縮 | 複式簿記・電子申告が要件 |
| 小規模企業共済 | 年間84万円 | 掛金全額が所得控除 | 元本割れリスクがある解約時期がある |
| iDeCo | 年間81.6万円(第1号被保険者) | 掛金全額が所得控除 | 原則60歳まで引き出せない |
| 家事按分・経費見直し | 実態に応じる | 課税所得を継続的に圧縮 | 根拠資料の保存が必須 |
| 不動産所得との損益通算 | 投資規模による | 赤字年は課税所得全体を圧縮 | 意図的な赤字化は投資判断を歪めるリスク |
| 減価償却の活用 | 物件による | 現金支出なしで所得を圧縮 | 将来の売却益(譲渡所得)に影響 |
| 自治体の減免・軽減制度 | 自治体・所得水準による | 該当すれば直接的に保険料減額 | 要件・申請期限は自治体ごとに異なる |
| 法人化 | ― | 社会保険への切替で構造自体が変わる | 事務コスト・社会保険料の労使双方負担増の可能性 |
表を見てわかるとおり、多くの対策は「将来のための資産形成」や「事業運営上必要な処理」と表裏一体になっています。国保料を下げること自体を目的化するのではなく、事業や資産形成の合理的な判断の結果として保険料も下がる、という順序で考えるのが健全だと私は思っています。
実際にやってみて気づいた落とし穴
20年間試行錯誤してきた中で、失敗や反省もいくつかありました。ひとつは、小規模企業共済とiDeCoの掛金を無理に上限まで積み立てすぎて、手元の運転資金が薄くなってしまった時期があったことです。国保料や税金を下げることに集中しすぎて、事業のキャッシュフローを圧迫しては本末転倒です。掛金は増減が可能な制度も多いので、まずは無理のない金額から始めて、収入が安定してから引き上げるのが現実的だと感じています。
もうひとつは、家事按分や経費計上を積極的に行うほど、税務調査での説明責任が重くなるという点です。按分比率の根拠(使用面積、使用時間、走行距離など)を記録として残しておかないと、いざというときに合理的な説明ができません。私は按分の根拠になる資料をクラウドの会計ソフトと連携させて毎月更新するようにしてから、確定申告の時期の負担もかなり軽くなりました。
また、不動産所得の損益通算を狙って修繕や設備投資のタイミングを調整することは有効な手段ではありますが、あくまで「必要な修繕を計画的に行う」ことが先であり、「国保料を下げるために無理に支出を作る」という発想になってしまうと、資産形成という本来の目的から外れてしまいます。この優先順位を見失わないことが、長く事業と大家業を両立させる上で大事だと感じています。
よくある質問
国保料は前年の所得だけで決まりますか、今年の所得を下げてもすぐ反映されますか。
国保料は基本的に前年(1月〜12月)の所得をもとに、翌年度分(多くの自治体で6月〜翌年3月の納付分)が計算されます。そのため、今年の所得控除を増やして課税所得を下げても、国保料に反映されるのは翌年度からになります。対策は早め早めに行い、複数年で効果を積み上げていく発想が大切です。
小規模企業共済とiDeCoはどちらを優先すべきですか。
どちらも掛金全額が所得控除になる点は共通していますが、小規模企業共済は事業を廃業・法人成りする際などに受け取れる退職金的な位置づけで、貸付制度なども利用できます。iDeCoは老後資金専用で原則60歳まで引き出せません。私は資金の流動性を確保する目的も兼ねて、まず小規模企業共済から始め、余裕が出てからiDeCoを積み増しました。どちらが良いかは資金繰りの状況次第なので、税理士やファイナンシャルプランナーに相談しながら決めることをおすすめします。
子どもの人数が多いと国保料は高くなるのでしょうか。
国保料には加入者一人あたりにかかる均等割があるため、扶養している子どもが国保の被保険者として世帯に含まれる場合、人数が増えるほど均等割の合計額は増えます。一方で未就学児の均等割軽減など、子育て世帯向けの軽減制度も用意されているため、単純に「子どもが多い=高くなる一方」ではありません。世帯全体の内訳を毎年の通知書で確認する習慣をつけておくとよいと思います。
減免制度や軽減制度は自分から申請しないと使えませんか。
多くの自治体で、所得基準を満たす場合の均等割・平等割の軽減は前年所得の申告状況に応じて自動的に判定されますが、災害や失業、ひとり親家庭向けの独自減免など、申請が必要な制度も少なくありません。制度の有無や要件は自治体ごとに異なるため、通知書を受け取ったら内容をよく確認し、不明な点は国保の窓口に直接問い合わせるのが確実です。
国保料の負担は、個人事業主として働き続ける以上、完全にゼロにはできないものだと思います。ただ、青色申告特別控除や小規模企業共済、iDeCoといった合法的な所得控除の仕組みを地道に積み重ねていくことで、負担を大きく圧縮できるのも事実です。私自身、事業と大家業、そして4人の子どもたちとの暮らしを両立させながら、毎年少しずつ制度への理解を深め、無理のない範囲で対策を続けています。この記事が、同じように国保料の高さに悩む個人事業主の方にとって、何かひとつでも参考になれば嬉しく思います。


