「シングルパパでも税金の控除って受けられるの?」
妻を亡くしてひとり親になってから、こういった疑問を一人でぼんやり抱えていた時期がありました。悲しみの中で「税金の手続き」のことまで考える余裕がなかった、というのが正直なところです。
でも、ちゃんと調べてみると「ひとり親控除」という制度があり、申告することで年間で数十万円の節税になることが分かりました。「知らなかった」だけで損をするには、大きすぎる金額です。
僕はシングルファーザーとして4人の子どもを育てながら、個人事業主・不動産大家として20年以上やってきました。確定申告の経験も20年以上あり、ひとり親控除についても毎年申告しています。
この記事では、ひとり親控除の仕組み・対象者・申請方法、そして個人事業主としての申告の実際を詳しくお伝えします。
※ 本記事は個人の経験に基づく情報提供を目的としています。税制は変更される場合があります。具体的な申告は税理士にご確認ください。
1. ひとり親控除とは(2020年改正で大幅拡充)
ひとり親控除は、2020年(令和2年)の税制改正で新設された所得控除です。それ以前の「寡婦控除」「寡夫控除」を整理・拡充する形で導入されました。
改正前の問題点:
従来の制度では、シングルファーザーが受けられる「寡夫控除」は27万円で、しかも「死別または離別」の場合のみが対象でした。未婚の父親は対象外でした。また、シングルマザーと比べてシングルファーザーの控除額が低いという不公平もありました。
2020年の改正では、これらの不公平を解消するために「ひとり親控除」が新設されました。
ひとり親控除の主なポイント:
- 控除額:35万円(所得控除)——旧寡夫控除(27万円)から8万円増加
- 対象:「ひとり親」として認定された方(父・母・死別・離別・未婚を問わない)
- 節税効果:課税所得400万円(税率30%)の場合で年間約10万5,000円の税額軽減
2. 対象者の条件・控除額の詳細
ひとり親控除の対象になる条件を整理します(2026年時点)。
ひとり親控除の対象者(すべての条件を満たす必要あり):
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 生計を同じくする子がいる | その年の総所得金額等が48万円以下の子と生計を一にしていること(扶養控除の対象でなくてもよい) |
| 婚姻していない | 現在結婚していないこと(死別・離別・未婚を問わない) |
| 所得制限 | 本人の合計所得金額が500万円以下であること |
| 事実婚なし | 住民票の続柄に「未届の夫(妻)」などの記載がないこと(事実婚状態でないこと) |
旧制度との比較:
| 区分 | 旧制度(寡婦・寡夫控除) | 現行(ひとり親控除) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 死別・離別の父(子あり) | 27万円(寡夫控除) | 35万円 | +8万円 |
| 死別・離別の母(子あり) | 27万円(寡婦控除) | 35万円 | +8万円 |
| 未婚のひとり親(父) | 対象外 | 35万円 | 新規追加 |
| 未婚のひとり親(母) | 対象外 | 35万円 | 新規追加 |
父親・母親ともに同じ35万円の控除になり、「死別・離別・未婚」の区別もなくなりました。これはひとり親全体にとって大きな改善です。
3. 確定申告での申請方法(個人事業主版)
個人事業主がひとり親控除を申請する具体的な手順を説明します。
ステップ1:確定申告書を用意する
個人事業主は確定申告書B(第一表・第二表)を使います。e-Taxを使う場合は、青色申告決算書または白色の収支内訳書も一緒に作成します。
ステップ2:ひとり親控除の欄に記入する
確定申告書B 第一表の「所得控除の内訳」欄に「ひとり親控除」の項目があります。そこに「350,000円」と記入します。e-Taxの場合は画面の「ひとり親」にチェックを入れると自動入力されます。
ステップ3:第二表の記載
第二表の「雑損控除・医療費控除・寄付金控除等の内訳」とは別に、「ひとり親・勤労学生・障害者・寡婦に関する事項」欄があります。「ひとり親」にチェックを入れ、該当する子どもの情報を記入します。
ステップ4:扶養控除と合わせて申告
ひとり親控除は扶養控除と別の控除です。子どもを扶養している場合、扶養控除(16歳以上:38万円、19〜22歳:63万円)もあわせて申告できます。
住民票は通常不要だが手元に持っておく
確定申告時に住民票の提出は通常不要です。ただし、税務署から問い合わせがあった場合に備えて「世帯全員が記載された住民票」を手元に保管しておくと安心です。
4. 僕が実際に申請して変わったこと
妻を亡くした翌年の確定申告は、精神的に本当につらい時期でした。悲しみの中で帳簿をつけて申告書を作る。「なんでこんなことを一人でやらなければならないのか」と思いながら、でも4人の子どものためにやるしかない、と自分を奮い立たせていました。
そのとき、税理士に「ひとり親控除を忘れずに申告しましたか」と確認してもらいました。最初は何のことか分からなかったですが、説明を聞いて初めて「こんな制度があるのか」と知りました。
ひとり親控除(35万円)を申告したことで、翌年の確定申告の還付額と住民税が変わりました。控除35万円に課税所得の税率が乗るため、課税所得400万円(税率30%)で試算すると年間約10万5,000円の節税効果です。
さらに、4人の子ども全員の扶養控除(年齢に応じて38万円〜63万円)と合算すると、合計の所得控除がかなり大きくなります。扶養控除4人分(単純計算で152万〜252万円)+ひとり親控除35万円だけで、控除合計は200万円近く〜290万円程度になる計算です。
「申請するだけで手取りが増える」制度があるのに、使わないのはもったいないです。忙しくても、疲れていても、確定申告はきちんとやる価値があります。
5. 合わせて使える控除と支援制度
ひとり親控除と合わせて確認しておくべき制度があります。
扶養控除との組み合わせ(重要)
ひとり親控除35万円 + 扶養控除(子ども1人あたり38万円、高校生は63万円)を合わせて申告します。子どもが複数いれば合計控除額はさらに大きくなります。
医療費控除
子どもが多いと医療費もかさみます。家族全員分の医療費が年間10万円(または所得の5%)を超えた場合、医療費控除が申請できます。領収書・医療費通知書は必ず取っておきましょう。
社会保険料控除
国民健康保険・国民年金の保険料は全額控除されます。個人事業主として自分で支払っている保険料をもれなく計上することが大切です。
iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)
iDeCoの掛金も全額控除になります。ひとり親控除と組み合わせることで、控除の合計が非常に大きくなります。
児童扶養手当の所得との関係
児童扶養手当の所得制限計算では「確定申告の所得」を使いますが、個人事業主は経費控除後の所得が対象です。iDeCoの掛金は所得税・住民税では控除になりますが、児童扶養手当の所得計算では控除されない場合があります(自治体により異なる)。詳細は市区町村窓口にご確認ください。
6. よくある疑問Q&A
Q: ひとり親控除は住民税にも効きますか?
効きます。ひとり親控除は所得税だけでなく住民税の計算にも適用されます(住民税のひとり親控除額は30万円)。所得税の節税に加えて、翌年の住民税も下がります。確定申告で申告すれば、自動的に住民税にも反映されます(別途手続き不要)。
Q: 控除を申告するのを忘れていました。今から申告できますか?
できます。確定申告は5年以内なら更正の請求(申告内容の訂正)が可能です。過去にひとり親控除を申告し忘れていた場合、さかのぼって申告し直すことで還付を受けられる可能性があります。税務署または税理士に相談してみてください。
Q: 所得が500万円を超えるとひとり親控除を受けられないとは、具体的に何の所得ですか?
ここでいう所得は「合計所得金額」です。事業所得・不動産所得・給与所得・雑所得等の合計(損益通算後)になります。個人事業主の場合は「売上から経費を引いた事業所得」が基本ですが、不動産所得等がある場合はそれも含めた合計で判定します。iDeCoの控除を引く前の所得で判定される点に注意してください。
Q: 再婚するとひとり親控除はどうなりますか?
再婚した時点で「ひとり親」の状態ではなくなるため、その年の12月31日時点で婚姻関係にある場合はひとり親控除の対象外になります。ただし、事実婚(住民票の続柄が「内縁の夫・妻」等)も対象外です。
Q: 子どもがアルバイトをしている場合、扶養控除に影響はありますか?
子どもがアルバイト等で一定額以上の収入を得た場合、扶養控除の対象から外れることがあります。扶養控除の対象となる条件は「その年の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)」です。扶養から外れると扶養控除(38万円〜63万円)が使えなくなるため、家計への影響が大きくなります。子どもがアルバイトを始めた年は、収入額を確認して控除の適用可否を判断してください。
Q: ひとり親控除と寡婦控除(旧制度)は今も両方使える?
2020年の改正でひとり親控除が新設され、旧制度の寡婦控除は一部継続しています。ひとり親控除(35万円)の要件を満たさない方(所得500万円超・事実婚状態等)でも、旧来の「寡婦控除」(27万円)が使える場合があります。両方を重複して使うことはできませんが、自分がひとり親控除と寡婦控除のどちらの対象になるかを確認することが重要です。不明な場合は税務署または税理士に確認してください。
Q: 住民票に「未届の妻(夫)」と書いてあると控除が使えないと聞きましたが、どう対応すれば?
ひとり親控除の要件の一つとして「住民票に事実婚の記載がないこと」があります。「未届の妻(夫)」「内縁の妻(夫)」などの記載がある場合は、事実婚状態とみなされて控除が受けられません。事実婚状態にない場合は、市区町村の住民票担当窓口に記載の変更を申請することで、控除が適用できるようになる場合があります。実態に合わない記載がされている場合は、担当窓口に相談してみてください。
7. まとめ:申告しない理由はない、35万円の控除を使い切ろう
ひとり親控除は、ひとり親家庭への社会的なサポートとして設計された控除です。税金を少しでも減らして、その分を子どもたちのために使う——それが正しい活用の仕方だと思っています。
「申告するのが面倒」「書き方が分からない」という理由で使わないのは、本当にもったいないことです。e-Taxを使えば自宅のパソコンやスマートフォンから申告できますし、書き方が分からない部分は税務署の無料相談を使えば解決します。
ひとり親としての税負担を最小化することで、子どもたちの教育費・老後の自分の資産設計に回せるお金が増えます。ひとり親控除だけでなく、扶養控除・医療費控除・iDeCoの掛金控除も組み合わせて、できるだけ多くの控除を申告することが、長期的な家計設計の基礎になります。申告できる控除を全て使い切ることは、節税の基本であり、4人の子どもを育てる僕にとって毎年の重要な作業のひとつです。
📝 noteでも毎日発信中
投資20年の失敗談・シングルファーザーのリアルな日常・お金の本音——ブログでは書きにくいことをnoteに書いています。
※ 本記事は個人の経験に基づく情報提供を目的としています。税制・各種制度は変更される場合があります。申告内容の最終判断は税理士にご確認ください。


