為替ヘッジあり・なしの投資信託、20年運用でどちらが有利だったか

投資・資産運用

為替ヘッジの「なし」を選んで20年、後悔しなかった話

投資信託を選ぶとき、必ず突き当たる分岐点がある。「為替ヘッジあり」にするか「為替ヘッジなし」にするか、という選択だ。私は個人事業主として働きながら投資を続けて20年になるが、この質問を最初に真剣に考えたのは、まだ子どもたちが生まれる前、外国株式インデックスファンドを初めて買ったときだった。当時の販売員には「ヘッジありのほうが値動きが安定して安心ですよ」と勧められた記憶がある。結果としては、ヘッジなしを選んで正解だったというのが、20年運用してきた今の実感だ。ただし「なぜ正解だったのか」を理解せずに選ぶと、相場が荒れたときに簡単に心が折れる。この記事では、シングルファーザーとして家計と資産形成を同時に回してきた立場から、為替ヘッジの有無が長期リターンとリスクにどう影響したか、実務的な視点で整理していく。

為替ヘッジあり・なしとは何が違うのか

まず基本を整理しておく。外国資産に投資する投資信託には、為替変動の影響を打ち消す「為替ヘッジあり」タイプと、為替変動の影響をそのまま受ける「為替ヘッジなし」タイプがある。ヘッジありは、円と投資先通貨の金利差に応じたヘッジコストを毎年支払う代わりに、為替変動リスクを抑える仕組みだ。ヘッジなしは、そのコストを払わない代わりに、円高になれば資産価値が目減りし、円安になれば資産価値が押し上げられる。

ここで見落とされがちなのが、ヘッジコストは固定費ではなく、内外金利差によって毎年変動するという点だ。米国の政策金利が日本より高い局面では、ヘッジコストは年率で数パーセントに達することもある。私が実際に保有していた米国株式ファンドのヘッジありクラスでは、ある時期のヘッジコストが年率4%を超えていたこともあり、これは信託報酬とは別にリターンを削る要因になる。つまり「ヘッジあり=安全」という単純な図式ではなく、「ヘッジあり=為替リスクをコストに変換している」と理解するほうが実態に近い。

20年間の値動きを振り返って見えたこと

個人事業主として収入が安定しない時期もあったからこそ、資産の値動きには人一倍敏感になった。振り返ってみると、この20年は円安局面と円高局面が入れ替わり立ち替わり訪れた期間だった。リーマンショック後の急激な円高局面では、ヘッジなしの外国株式ファンドは為替差損によって基準価額が大きく押し下げられた。あのときは正直、含み損の数字を見るたびに胃が痛くなった。一方で、その後の金融緩和と円安トレンドの局面では、為替差益が株価上昇に上乗せされる形で資産が加速度的に増えていった。

結果として、20年という長い時間軸で均してみると、為替の上下動はある程度打ち消し合いつつも、トレンドとして円安方向に振れた期間の恩恵のほうが大きかったというのが私の実感だ。もちろんこれは結果論であり、今後20年も同じ方向に動くとは限らない。ただ、ヘッジコストという確実なマイナスを毎年払い続けるより、不確実だが平均すればゼロに近づく為替変動を引き受けるほうが、長期では合理的だったという結論に至っている。

ヘッジあり・なしを比較表で整理する

言葉で説明するより、実務上の違いを整理した表を見たほうが判断しやすいと思う。私が20年の運用経験と個人事業主としてのキャッシュフロー管理の視点から整理した比較が以下だ。

比較項目 為替ヘッジあり 為替ヘッジなし
短期の値動き 比較的安定しやすい 為替次第で振れ幅が大きい
コスト構造 信託報酬+変動するヘッジコスト 信託報酬のみ
円安局面 為替差益を享受しにくい 為替差益が上乗せされる
円高局面 為替差損を回避しやすい 為替差損を直接受ける
長期の資産分散効果 通貨分散効果は限定的 円資産と異なる値動きで分散効果あり
向いている人 数年以内に使う資金・値動きに敏感な人 20年以上の長期資金・値動きに耐えられる人

この表を見て私が特に重視しているのは「通貨分散効果」の項目だ。円建て資産だけを持っていると、日本経済が停滞したり円の実質価値が下がったりしたときに、資産全体が同じ方向に沈んでしまうリスクがある。ヘッジなしの外国資産は、円安局面でクッションになってくれる存在でもある。個人事業主として本業の収入が円建て一本足打法である以上、資産の一部は違う通貨で持っておきたいというのが、私が長年ヘッジなしを選んできた理由の一つだ。

兼業大家としての視点から見た為替リスク

私はもう20年近く、本業の傍らで賃貸経営も続けている。不動産という資産は基本的に円建てで、しかも流動性が低い。家賃収入も円建てで入ってくるし、ローンの返済も円建てだ。この「円に偏った資産構成」を自覚したとき、金融資産のほうでは意識的に為替リスクを取りにいく判断をした。

具体的には、不動産と個人事業の売上という「円に固定された収入源」を土台にしながら、投資信託のポートフォリオでは為替ヘッジなしの外国株式・外国債券を一定割合組み込む形にしている。こうすることで、円が弱くなる局面では不動産や事業の実質価値が目減りする一方、外国資産のヘッジなし部分がそれを相殺してくれる。逆に円が強くなる局面では外国資産は目減りするが、円建て資産である不動産や事業の相対的な購買力は保たれる。資産全体で見たときのバランスを取るという発想だ。

この考え方に至ったのは、決して最初から戦略的だったわけではない。むしろ最初は何となくヘッジなしを選び、後になって「これは結果的に良い分散になっていた」と気づいたというのが正直なところだ。20年という時間の中で、事業・不動産・金融資産のそれぞれの値動きの癖を体感して初めて、通貨の分散という発想の重要性に気づいたと言っていい。

シングルファーザーとして子どもたちの教育資金をどう考えたか

4人の子どもを育てる中で、教育資金の準備は避けて通れないテーマだった。4人の子どもたちそれぞれの進路や必要な時期は異なるが、共通して言えるのは「使う時期が近づいた資金ほど、為替変動のリスクを取りにくくなる」という原則だ。

私が実践してきたのは、資金を使う時期までの残り年数に応じてヘッジの有無を使い分けるという方法だ。使うまで10年以上ある資金は、ヘッジなしの外国株式ファンドを中心に長期の成長を狙う。一方で、数年以内に使う予定が具体的に見えている教育資金は、値動きの振れ幅を抑えたいので、ヘッジありのファンドや、そもそも為替リスクのない円建ての商品にシフトしていく。この「時間軸で為替リスクの取り方を変える」という考え方は、子育て世帯にとって特に重要だと思う。なぜなら、教育資金は「相場が悪いから来年に先送りする」ということができない、期日の決まった支出だからだ。

妻を亡くしてから、資産形成の意思決定を一人で背負うようになった。だからこそ、感覚や勢いで為替リスクを取るのではなく、資金の使用時期という客観的な軸で機械的に判断するルールを作った。これは今も家計管理の基本方針として続けている。

ヘッジコストが家計にじわじわ効いてくる理由

個人事業主として毎月のキャッシュフローを細かく管理する習慣があるからこそ気づいたことがある。ヘッジコストは、一見小さな数字に見えても、複利で20年運用すると無視できない差になるということだ。

  • ヘッジコストが年率1%の場合、20年間の複利効果でおよそ2割近いリターンの差になり得る
  • ヘッジコストが年率3〜4%になる局面が数年続くと、その期間だけでリターンの差がさらに拡大する
  • 信託報酬とヘッジコストは別枠で発生するため、目論見書の「実質コスト」欄を必ず確認する必要がある
  • ヘッジコストは内外金利差に連動するため、将来にわたって一定ではなく、金利環境が変わればコストの水準も変わる

この積み重ねを実際の運用資産で試算してみたことがある。同じ指数に連動するヘッジありクラスとヘッジなしクラスを長期で比較すると、金利差が大きく開いた年ほど両者の基準価額の差が広がっていくのが分かる。もちろん為替が円高に振れればヘッジなしのほうが不利になる年もあるので、単純に「ヘッジなしが常に有利」とは言えない。ただ、20年という長期のスパンで見たとき、コストという確実なマイナス要因を払い続けるヘッジありよりも、期待値としてはヘッジなしのほうに分があったというのが、私自身の資産推移を振り返っての結論だ。

それでもヘッジありを選ぶべき場面はある

ここまでヘッジなしを推す内容が続いたが、公平のためにヘッジありが向いている場面にも触れておきたい。長期投資が絶対的に正しいわけではなく、資金の性質によって最適解は変わる。

例えば、数年以内に住宅購入や大きな支出を予定していて、その原資として外国資産を保有している場合は、為替変動による目減りリスクを避けたいので、ヘッジありのほうが理にかなっている。また、精神的に大きな値動きに耐えられないタイプの人にとっては、ヘッジなしの為替変動込みの値動きは想像以上にストレスになる。相場が悪いときに慌てて売却してしまっては、長期投資の恩恵を得る前に離脱することになりかねない。自分がどれだけの値動きに耐えられるかという「リスク許容度」を無視して、理屈だけでヘッジなしを選ぶのは危険だと思う。

私自身、20年の運用の中で何度も大きな含み損を経験してきたからこそ言えるのは、リターンの期待値だけでなく「その値動きを見ても投資を続けられるかどうか」を基準に商品を選ぶべきだということだ。理屈の上でヘッジなしが有利だとしても、途中で怖くなって売ってしまえば、期待値通りのリターンは絶対に得られない。

実務上、私が意識している3つの判断基準

20年の運用経験を踏まえて、ヘッジの有無を選ぶ際に私が実際に使っている判断基準を整理しておく。

1つ目は「資金を使う時期までの年数」だ。前述の通り、10年以上先に使う資金はヘッジなし中心、数年以内に使う資金は円建てまたはヘッジあり中心という原則を崩さないようにしている。

2つ目は「保有資産全体における円建て資産の比率」だ。私の場合、不動産という流動性の低い円建て資産を多く持っているため、金融資産のほうでは意識的に外国通貨建ての資産を積み増す方向に舵を切っている。逆に、円建て資産が少ない人であれば、無理にヘッジなしを増やす必要はないかもしれない。

3つ目は「精神的な値動き耐性」だ。事業のキャッシュフローが不安定な月には、投資信託の評価額まで大きく動くと精神的な負担が二重になる。そういう時期は、あえてヘッジありや円建て資産の比率を高めに調整することもある。資産形成は数字だけの話ではなく、続けられるかどうかという継続性の問題でもあると、20年やってきて痛感している。

よくある質問

Q1. 為替ヘッジありとなしはどちらか一方だけ選ぶべきですか

必ずしもどちらか一方に統一する必要はない。私自身、資金の使用時期や目的に応じてヘッジありとなしを併用している。教育資金のように使用時期が近い資金はヘッジありや円建て中心、老後資金のように使用時期が遠い資金はヘッジなし中心という具合に、目的別にポートフォリオを分けて考えるほうが実務上は扱いやすい。

Q2. ヘッジコストは誰が負担しているのですか

ヘッジコストは投資信託の運用の中で発生し、基準価額を通じて間接的に受益者が負担する形になる。信託報酬のように明示的に率が固定されているわけではなく、内外の金利差によって毎年変動するため、目論見書や運用報告書の「実質的な負担」に関する記載を確認する習慣をつけておくとよい。

Q3. 円安が今後も続く保証がないのにヘッジなしを選んで大丈夫ですか

その通りで、為替の方向性を予測することは誰にもできない。私がヘッジなしを選ぶ理由は「円安を予想しているから」ではなく、「円建て資産に偏った家計・事業構成を、金融資産の通貨分散で補うため」という位置づけだ。方向性を当てにいく発想ではなく、資産全体のバランスを取るための手段として為替リスクを引き受けている、という点を誤解しないようにしてほしい。

Q4. 子どもがいる家庭では為替ヘッジをどう考えればよいですか

子どもの人数や進路によって支出のタイミングは家庭ごとに異なるが、共通して言えるのは「支出時期が具体的に見えてきた資金から順に為替リスクを減らしていく」という考え方が実務的だということだ。教育資金は先送りできない支出であることが多いため、値動きの大きいヘッジなし資産に偏らせすぎないよう、時間軸に応じて配分を見直すことをおすすめする。

まとめ 20年の運用で得た実感

為替ヘッジあり・なしのどちらが正解かという問いに、唯一絶対の答えはない。ただし個人事業主として20年、兼業大家として20年、そしてシングルファーザーとして4人の子どもたちを育てながら資産形成を続けてきた私の実感としては、長期の資金についてはヘッジなしを選び、コストという確実なマイナスを避けたほうが、結果的に資産の伸びは大きかった。一方で、使用時期が近づいた資金や、値動きに耐えられない性質の資金については、ヘッジありや円建て資産に切り替えるという柔軟さも同時に必要だった。

資産形成は、正解を一つに固定するものではなく、自分の資産構成、収入の性質、そして家族のライフイベントに合わせて、その都度最適な配分を見直し続ける営みなのだと思う。この記事が、同じように長期の資産形成に向き合う読者の判断材料の一つになれば幸いだ。

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