教育費を「取り崩し口座」から払う設計|NISAと預金の引き出し順

教育費を「取り崩し口座」から払う設計|NISAと預金の引き出し順 投資・資産運用

こんにちは、シンパパ資産設計士です。

教育費を投資で準備する話は多いのですが、「貯めた後、どうやって取り崩すか」を具体的に書いたものは少ない印象です。積立フェーズの枠配分は積立フェーズの投資枠の配分で扱いましたが、実際に子どもの進学が近づいて、NISAで運用してきた教育費を現金化して払う段になると、「いつ・いくら・どの順番で引き出すか」という新しい問題が出てきます。4人の子を育てる我が家では、この「取り崩しの設計」を誤ると、相場の下がった年に無理な現金化をすることになり、せっかくの運用益を失います。この記事では、教育費専用の「取り崩し口座」を作り、NISAと預金をどの順番で引き出すか、現金クッションをどれだけ持つかを、具体的に整理します。毎月の積立額の考え方は毎月いくら投資すればいい?無理のない積立額の決め方、実際の教育費の内訳は4人家族のライフプラン表、実際の中身を特別公開で扱っています。

「積立フェーズ」と「取り崩しフェーズ」は別の設計が要る

教育費づくりには2つのフェーズがあります。積立フェーズは、子どもが小さいうちに、毎月一定額をNISAなどで積み立て、時間をかけて増やす段階です。ここでは、相場の上下は気にせず、淡々と積み立てるのが正解です。

取り崩しフェーズは、進学が数年先に見えてきて、貯めた教育費を実際に使う段階です。ここでの最大のリスクは「使う年に相場が下がっている」ことです。積立フェーズと同じ感覚で、進学の直前までNISAで運用したまま持ち続けると、いざ払う年に評価額が2割下がっていた、ということが起こりえます。そうなると、下がった価格で売って払うことになり、平準化どころか損失を確定させます。過去にも、株式市場が1年で3割以上下落した局面は何度もありました。そのタイミングが、たまたま子どもの進学の年に当たる可能性は、決して低くありません。

だから、取り崩しフェーズには「使う時期から逆算して、計画的に現金化していく」という、積立フェーズとは逆の設計が必要になります。

この切り替えのタイミングを見誤りやすいのは、積立フェーズの成功体験が邪魔をするからです。子どもが小さいうちにコツコツ積み立てて、順調に増えてきた。この「増える快感」を、進学の直前まで手放したくない、という心理が働きます。しかし、教育費は締め切りのあるお金です。老後資金なら、相場が下がっていれば取り崩しを数年待つこともできますが、進学の時期はずらせません。「待てないお金」を運用し続けるのは、リスクの取りすぎです。

老後資金の取り崩しと、教育費の取り崩しは、性質がまったく違います。老後資金は「長期にわたって、少しずつ、必要な分だけ」引き出すので、運用を続けながら取り崩せます。教育費は「特定の年に、まとまった額を、確実に」用意する必要があるので、その年に向けて事前に現金化しておく必要があります。同じ「取り崩し」でも、設計は分けて考えます。

教育費専用の「取り崩し口座」を作る

まず、教育費の支払いを生活費の口座から切り離し、専用の「取り崩し口座」を作ります。この口座には、その年に必要な教育費の全額を、年の初めまでに現金で用意しておきます。受験料、入学金、授業料、通学費、仕送りといった支払いが発生するたびに、この口座から払います。

教育費は、年間を通じて均等に発生するわけではありません。受験料は出願の時期に集中し、入学金は合格発表の直後に期限が来て、授業料は年に数回まとめて請求されます。特に「合格したら数日以内に入学金を振り込む」というケースでは、現金が手元にないと機会を逃します。だからこそ、その年に必要な額は「年の初めまでに」全額を取り崩し口座に用意しておく必要があります。「請求が来てから現金化する」では、相場のタイミングも選べず、振込期限にも間に合わないリスクがあります。

専用口座にするメリットは2つあります。1つは、生活費の口座と混ざらないので、教育費で残高が減っても「今月の生活が苦しい」という錯覚が起きないこと。もう1つは、家計簿アプリで「教育費」として支出が正確に集計され、その年に実際いくらかかったかが後から分かること。この実績が、下の子の見積もりの精度を上げます。

取り崩し口座は、子どもごとに分ける必要はありません。1つの口座を「今年の教育費の支払い箱」として使い、家計簿アプリのメモで「どの子の分か」を区別すれば十分です。ただし、進学期が複数の子で重なる年は、その年の初めに「上の子に◯万円、下の子に◯万円」と内訳をメモしておき、口座残高がどちらの分か分かるようにしておきます。

年の途中で「思ったより授業料が高かった」「追加の教材費が出た」といったずれが出たら、その都度、運用分か現金クッションから補充します。年末に、その年の教育費の実績を集計し、翌年の必要額の見積もりに反映させます。この「実績→見積もり更新」のサイクルを回すことで、子どもが4人いても、後半になるほど教育費の予測が正確になります。

現金化の3段階スケジュール

NISAで運用してきた教育費を、使う時期から逆算して現金化していきます。私は次の3段階で管理しています。

時期 教育費の置き場所 状態
使う年の7年以上前 NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)で運用 値動きあり。増加を狙う
使う年の3〜7年前 一部を売却し、預金・個人向け国債へ移し始める 値動きを縮小していく
使う年の3年前〜前年 必要額を全額現金化し、取り崩し口座へ 元本確定。動かさない
使う年 取り崩し口座から支払いのみ 年末に過不足を精算

ポイントは、「使う3年前になったら、その分は運用から外して現金にしていく」というルールを機械的に守ることです。相場が良くても悪くても、スケジュールどおりに現金化します。「もう少し運用を続ければ増えるかも」という判断を入れると、下落局面に巻き込まれます。教育費は「増やすお金」ではなく「必ず、その年に、その金額が必要なお金」なので、確実性を最優先します。

3年前から一気に全額を現金化するのではなく、3年かけて分割して現金化するのが安全です。たとえば必要額の3分の1ずつを、3年前・2年前・1年前に売却していく。こうすると、特定の1日の相場に結果が左右されにくくなります(時間分散)。積立フェーズで「毎月少しずつ買う」のと同じ考え方を、売るときにも適用します。

現金化した分は、取り崩し口座か、それに準じる普通預金・個人向け国債に移します。「まだ使わないから」と別の投資商品に入れ直すのは、現金化した意味がなくなるのでやりません。教育費として現金化したお金は、教育費に使うまで、値動きのない形で寝かせておきます。数年の利息を取り逃すことより、必要な年に確実にあることのほうが、はるかに重要です。

NISAと預金、どちらから引き出すか

教育費の原資が、NISAの運用資産と、預金の両方にある場合、どちらから使うかには順番があります。

基本は「預金(現金化済みの分)から先に使う」

3年前までに現金化して取り崩し口座に移した分から、まず払います。これは値動きしないお金なので、いつ使っても損得がありません。スケジュールどおりに現金化できていれば、その年の教育費はこの現金化済みの分だけで足りるはずです。ここで足りている限り、NISAの運用分にはその年は手をつけません。

NISAの運用分に手をつけるのは、下落していないときだけ

現金化のスケジュールが遅れて、まだNISAに教育費が残っている状態で支払いが来た場合。相場が高い、または平常なら、その分を売却して払います。相場が大きく下がっているなら、NISAを売るのは避け、後述する「現金クッション」から一時的に立て替え、相場が戻ってからNISAを現金化してクッションを補充します。

NISAの非課税メリットを踏まえる

NISA口座内の売却益は非課税です。教育費のために売るなら、課税口座より先にNISAを取り崩したほうが税制上は有利です。ただし、一度売却して空いたNISAの非課税枠は、翌年以降に復活します(生涯投資枠の管理内で)。教育費で使った枠は、下の子の教育費や自分の老後資金の積立で、後から埋め直せます。

ここで気をつけたいのが、NISAの枠を「一時的に教育費で空けて、後で埋め直す」ことの機会損失です。教育費で数年間、老後資金の積立を止めることになるなら、その分、老後資金づくりは後ろ倒しになります。だから、可能なら教育費は課税口座や預金で準備し、NISAの枠は老後資金の長期運用にできるだけ空けておく、という考え方もあります。どちらが良いかは、NISAの枠にどれだけ余裕があるか、教育費と老後資金のどちらの準備が急ぐかによります。我が家は、教育費の一部を課税口座で準備し、NISAは老後資金を優先しています。

現金クッションをどれだけ持つか

取り崩しフェーズの安全装置が「現金クッション」です。これは、教育費のうち、進学期の1〜2年分を、値動きのない預金で別枠で持っておくお金です。役割は、「NISAの現金化が相場の下落と重なったとき、NISAを売らずに教育費を払う」ための立て替え資金です。現金化のスケジュールを守っていればNISAの運用分に手を出す必要はないはずですが、想定より授業料が高かった、進路が変わって追加費用が出た、という「ずれ」は必ず起きます。そのずれを、下落局面でNISAを売って埋めることにならないよう、クッションを用意しておきます。

金額の目安は、その子の進学ピーク年に必要な額の1〜1.5倍。たとえばピーク年に150万円かかるなら、現金クッションは150万〜225万円を、生活防衛資金とも教育費の運用分とも別に持ちます。下落局面では、このクッションから教育費を払い、相場が回復してからNISAを現金化してクッションを元に戻します。回復に数年かかっても、クッションがあれば待てます。

現金クッションと、シリーズBで扱った生活防衛資金は、別のお金です。生活防衛資金は「収入が途絶えたとき」の備え、教育費の現金クッションは「教育費の現金化と相場の下落が重なったとき」の立て替え。目的が違うので、混ぜると片方が使えなくなったときにもう片方も足りなくなります。口座を分けて、それぞれ何のためのお金かを明確にしておきます。

クッションをどこに置くかは、普通預金か個人向け国債(変動10年)が基本です。個人向け国債は発行から1年経てば元本割れなしで中途換金でき、普通預金より金利がやや高い。進学まで数年あるなら、クッションの一部を個人向け国債にしておくと、寝かせているお金にも少し利息がつきます。ただし、進学の直前1年分は、すぐ引き出せる普通預金に置いておきます。

4人分をどう回すか

子どもが4人いると、この取り崩しの設計を4回繰り返すことになります。効率化のコツは3つあります。第1に、上の子の教育費の取り崩しが終わって余った現金クッションは、そのまま次の子のクッションに回します。第2に、上の子の進学で得た「実際にいくらかかったか」の記録で、下の子の必要額の精度を上げ、現金化のスケジュールを最適化します。第3に、進学期が重なる年は、複数の子のクッションが同時に必要になるので、その年を数年前から把握し、クッションを厚めに準備しておきます。ライフプラン表に各子の進学ピークを書き込んでおくのが基本です。

4人分をまとめて管理するときに便利なのが、1枚の表です。縦に子ども4人、横に「今後10年の各年」を並べ、それぞれの年にどの子でいくら教育費が発生するか、そのうちいくつが現金化済みか、いくつがまだNISAにあるかを書き込みます。この表を年1回更新すると、「来年、下の子の現金化を始める時期だ」「再来年、2人分の進学が重なるからクッションを増やそう」といった判断が一目でできます。

また、教育費の運用は、あくまで「使う時期が決まっているお金」なので、株式100%のような攻めた配分にはしません。使う時期が近づくほど、値動きの小さい資産(バランス型、債券、預金)の割合を増やしていきます。積立フェーズの序盤は株式中心でよいですが、使う7年前を切ったら、少しずつ守りに寄せる。この「グライドパス」の考え方は、老後資金より教育費のほうがシビアに効きます。

まとめ

  • 教育費づくりには「積立フェーズ」(淡々と積む)と「取り崩しフェーズ」(使う時期から逆算して現金化)があり、後者は逆の設計が必要
  • 教育費専用の「取り崩し口座」を作り、その年に必要な額を年初までに現金で用意する。生活費の口座と混ぜない
  • 現金化は3段階。使う7年以上前はNISAで運用、3〜7年前で一部を現金・国債へ、3年前〜前年に必要額を全額現金化。相場に関係なくスケジュールを守る
  • 引き出しは「現金化済みの預金」から先に。NISAの運用分は下落していないときだけ売る。下落時は「現金クッション」(進学ピーク年の1〜1.5倍)で立て替え、回復後にNISAを売って補充する

教育費は「必ず、その年に必要」なお金なので、取り崩しフェーズは確実性を最優先します。使う時期から逆算した現金化と、下落に備えた現金クッション。この2つがあれば、相場が悪い年に進学が来ても、慌てて運用資産を売らずに済みます。投資で教育費を準備するなら、「増やす」設計と同じくらい「安全に使う」設計に力を入れてください。これでシリーズC「家計のキャッシュレス最適化・お金の流れの設計」は一区切りです。次回からは、見えにくい子どもの支出と向き合うシリーズに入ります。

よくある質問

Q. 教育費は進学の直前までNISAで運用したほうが増えて得ではないですか?

A. 相場が上がり続ければそうですが、下がっていれば大きく損をします。教育費は「必ず、その年に、その金額が必要」なお金なので、増やす可能性より、確実に用意できることを優先します。使う3年前をめどに、相場に関係なく計画的に現金化していくのが安全です。

Q. NISAと課税口座、教育費のためにはどちらから売るべきですか?

A. 売却益が非課税になるNISAから先に取り崩すほうが、税制上は有利です。使って空いたNISAの非課税枠は翌年以降に復活するので、下の子の教育費や自分の老後資金の積立で埋め直せます。ただし、相場が大きく下がっているときは、どちらも売らずに現金クッションで立て替えます。

Q. 現金クッションはいくら持てばいいですか?

A. その子の進学ピーク年に必要な額の1〜1.5倍が目安です。ピーク年に150万円かかるなら150万〜225万円を、生活防衛資金とも教育費の運用分とも別枠で、値動きのない預金で持ちます。相場の下落とNISAの現金化が重なったときに、NISAを売らずに教育費を払うための立て替え資金です。

Q. 教育費は全額を投資ではなく預金で準備してもいいですか?

A. もちろん構いません。特に、使うまでの期間が短い(10年未満)場合や、相場の変動で眠れなくなるタイプの人は、預金と個人向け国債で堅く準備するのが安心です。投資で準備するメリットは、長い時間をかけたときの増加が期待できることですが、その分、使う時期に向けた現金化の設計という手間とリスクが増えます。自分の性格と、使うまでの期間で決めてください。

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シンパパ資産設計士
4児を育てるシングルファーザー/個人事業主20年/投資家20年/兼業大家20年


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この記事を書いた人:シンパパ資産設計士

シングルファーザー × 個人事業主 × 20年投資家。4人の子どもを育てながら、資産運用・節税・保険・不動産を自分で実践中。「等身大の失敗談」と「リアルな数字」を武器に、シンパパの家計設計を発信しています。

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